自衛隊のロボット乗りは大変です。~頑張れ若年陸曹~

ハの字

文字の大きさ
312 / 344
第四十三話「迫る終末について」

米国の動向

しおりを挟む
 その頃、アメリカの研究機関では、軍からの依頼で引き渡されたテロリストのAMWの分析を行っていた。米軍での呼称を「キャンサー」と言う、それらの残骸が数機分。施設に運び込まれていた。

 トレーラーから降ろされた残骸に、技術者たちが群がる蟻のように取り付いて、調べ始めた。検査機器を手に、装甲やら内部に文字通り手を入れて、何かを見つける度に議論を始める。

「相転移装甲の規格は、日本の自衛隊の物とは異なるのか……?」

「同盟を解いてから情報共有がされてないからな、それすらわからん」

「くそっ、こいつが日本由来の技術で造られたとわかれば、色々と口実になるのにな」

「妙な陰謀論はやめとけよ、上にどやされるぞ」

 軽口を言い合いながら、残骸をバラしたり、動きそうな機材を慎重に取り外したりと、作業を進めていく。しかし、数時間かけても、わかったことはあまり多くなかった。

 この機体は、先進国でやっと実用化されたフォトンバッテリーを搭載していること。そして、相転移装甲のメカニズムは複雑怪奇で解析不能と言わざるを得ないということ。それ以外は、アメリカの技術力を総動員すれば再現可能な程度の物しか使われていないことしかわからなかった。

 一つはっきりしたのは、もし自衛隊が持つ相転移装甲が同じ原理だったら、日本の技術力はアメリカの数年先を行っていることになる。つまり、この機体の開発に日本が関わっている可能性は、極めて低いということだった。

「既存の技術で再現できないのは、相転移装甲くらいだな。装甲に用いられている金属内の分子を変換することで、効果を発揮する仕組みは同じはずだが……」

「その方法がわからないな、単純に電圧をかけるだけで、戦闘で報告されていた強度を発揮できるとは思えん」

 何名かの技術者が残骸から離れ、ブラックボックスである装甲について話し合っている時。そこから離れていた一人が脚部の残骸を見ていると、装甲と装甲の隙間、間接の裏側に付着している物を発見した。

「これは……?」

 その技術者の男性は、ポケットからビニール袋を取り出し、手袋をはめる。そして、その隙間にあった物、こびり付いた砂を掻き出して、袋に入れた。袋を持ち上げて、照明に晒すようにしてその砂を観察する。

(戦闘中に、こんなところに砂が入るか……?)

 見る限り、運び込まれる前に付着して、固まった物らしい。軍が調査したときに着いた可能性は、ほぼない。こんな部分に砂が入り込むのは、戦闘中に砂地を転がったりしないとあり得ない。
 だが、ハワイ島で戦闘が行われたのは滑走路の上。つまり、アスファルトの上だ。砂がここまで残るほど間接の隙間に入るとは考えにくい。

 そうなると、この砂の出所は――

「これは……大発見かもしれないぞ」

 呟いた彼は、大急ぎでそのビニール袋を分析すべく、解析室に持ち込んだ。

 また数時間後、その呟きが真実となった。その砂は、南太平洋にある。小さい無人島固有の成分を含む砂であることが判明したのだ。過去に調査で人が立ち入ったのは数十年前。それ以来、詳しい調査は行われていなかった。何故か、様々な利権団体の圧力を受けて、中止させられていたからだ。

 この意味を理解できない程、技術者たちは呆けてはいなかった。
 直ちに大統領政府へと、結果の報告が行われた。

 ***

 ホワイトハウスの執務室。テロリストらの本拠地が発覚したという報告を受け、急遽集められたエリートたちが、大統領の前で終わりのない口論を続けていた。

「だから、敵の本拠地は発覚したのだから、弾道ミサイルを叩き込めばいいだろう! それで片が付く!」

 血の気の多い、スーツに身を包んだ白人が叫ぶ。普段から強硬的な発言が目立つ男だったが、今回もそれは変わらずだった。
 それに対して、同じ服装をした同じ人種の、しかしこちらは対照的に冷静さが窺える眼鏡の男が言い返す。

「衛星写真を確認しなかったのか? 奴らの拠点は島の地下深くにあることは間違いない。核を撃ち込んでも効果があるのかわからないんだぞ」

「それがどうした! ならば効果が出るまで撃てばいいだろう! そうすれば、これ以上我が国の優秀な兵士たちを摩耗させなくて済む、予算もかけないで良くなるだろうが!」 

 血の気が多い方が言う通り、数ヶ月前にハワイ奪還戦で負った損失もあって、米軍はまだ完全に軍備を整えられていなかった。その上、今は南アメリカのテロ組織の拠点を一つ一つ潰している最中である。
 敵の本拠地の候補である太平洋のど真ん中に、それを攻略するだけの戦力を送る余裕など無い。というのが、彼の意見だった。

「それはわかる。わかるが、効果の薄い攻撃を仕掛けて、その間に敵の頭が逃げ出したらどうする。手掛かりは研究機関が発見した砂が数グラムしかないんだぞ。隠れられたら、奴らが尻尾を出すのはいつになるか」

 冷静な男はそれに反対していた。敵の拠点らしき影は、衛星写真では全く発見できなかった。つまり、基地施設は地下にあることになる。相手がどれだの規模の拠点を持っているかはわからないが、それが大規模だった場合、弾道ミサイルだけでは決定打には成り得ないのだ。

「故に、私は南大陸戦線から戦力を抽出して、少数精鋭で戦力を送り込むことを提案します」

「馬鹿な! 戦力の逐次投入など、愚の骨頂だろうが!」

 それからも、二人の言い合いは平行線を辿る。それを黙って聞いていた大統領は、薄くなった自身の金髪を一撫でしてから、静かに口を挟んだ。

「……つまりだ。弾道ミサイルで敵を倒し切るには威力が足りず。確実に倒すための歩兵などの通常戦力は、用意する余裕がない。ということだな?」

「……その通りであります。大統領」

 確認するように告げた大統領は、肯定の言葉を聞くと、プライベート用の電話を取り出した。

「今から私的な電話をする。少しの間、静かにしていてくれ」

 突然の宣言に、部下の二人が「は?」と戸惑いの声をあげたのを無視して、大統領は目的の番号へと連絡する。スリーコールで出た相手に、親しげな口調で話し始めた。

「ああ、久しぶりだな。選挙前以来か……何、ちょっと困りごとだ……ん? 話したいこと? …………なんだと、わかった……こちらで掴んだ情報だが――」

 そこから、先ほど報告された情報を、ぺらぺらと話す大統領に、部下二人は思わず身を乗り出すが、それを手で制して、大統領は話を続ける。

「というわけだ……まぁ、そうだな。それしかないだろうな……そうしてくれるか、助かる。今度、上質なワインでも送ろう……ではまたな」

 通話を終えて電話を置いた大統領に、二人は詰め寄った。

「大統領! どこの誰かには知りませんが、情報を容易く漏らすなど! どういうおつもりなのですか!」

「そうです。相手はそれほどまでに信用がおける相手なのですか?」

 片方は顔色を真っ赤に、もう片方は眼鏡の縁を指で揺らしながら問う。しかし、大統領はすまし顔を崩さない。

「そうだな。私の古い友人にして、世界で一番、友達が多い奴だよ。同時に、味方にいて、これほど役に立つ奴は他にいない」

「そこまで言う相手なのですか、それで、その男はなんと?」

 部下の問いに、大統領は答えと同時に、決定を下した。

「そいつから重大な情報が入った。我々にもはや時間的猶予はない。これより、非公式にだが、各国に連合軍への参加協力を取り付ける。国連を通す時間もないからな。何、反対はされるだろうが、あいつが手を回せば、問題は無い」

 この国の長が決めた想定外の決定に、部下二人は呆然と顔を見合わせた。この後、大統領に思い直すように説得を試みたが、決定が覆ることはなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

強制ハーレムな世界で元囚人の彼は今日もマイペースです。

きゅりおす
SF
ハーレム主人公は元囚人?!ハーレム風SFアクション開幕! 突如として男性の殆どが消滅する事件が発生。 そんな人口ピラミッド崩壊な世界で女子生徒が待ち望んでいる中、現れる男子生徒、ハーレムの予感(?) 異色すぎる主人公が周りを巻き込みこの世界を駆ける!

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

蒼穹の裏方

Flight_kj
SF
日本海軍のエンジンを中心とする航空技術開発のやり直し 未来の知識を有する主人公が、海軍機の開発のメッカ、空技廠でエンジンを中心として、武装や防弾にも口出しして航空機の開発をやり直す。性能の良いエンジンができれば、必然的に航空機も優れた機体となる。加えて、日本が遅れていた電子機器も知識を生かして開発を加速してゆく。それらを利用して如何に海軍は戦ってゆくのか?未来の知識を基にして、どのような戦いが可能になるのか?航空機に関連する開発を中心とした物語。カクヨムにも投稿しています。

異世界宇宙SFの建艦記 ――最強の宇宙戦艦を建造せよ――

黒鯛の刺身♪
SF
主人公の飯富晴信(16)はしがない高校生。 ある朝目覚めると、そこは見たことのない工場の中だった。 この工場は宇宙船を作るための設備であり、材料さえあれば巨大な宇宙船を造ることもできた。 未知の世界を開拓しながら、主人公は現地の生物達とも交流。 そして時には、戦乱にも巻き込まれ……。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

モブ高校生と愉快なカード達〜主人公は無自覚脱モブ&チート持ちだった!カードから美少女を召喚します!強いカード程1癖2癖もあり一筋縄ではない〜

KeyBow
ファンタジー
 1999年世界各地に隕石が落ち、その数年後に隕石が落ちた場所がラビリンス(迷宮)となり魔物が町に湧き出した。  各国の軍隊、日本も自衛隊によりラビリンスより外に出た魔物を駆逐した。  ラビリンスの中で魔物を倒すと稀にその個体の姿が写ったカードが落ちた。  その後、そのカードに血を掛けるとその魔物が召喚され使役できる事が判明した。  彼らは通称カーヴァント。  カーヴァントを使役する者は探索者と呼ばれた。  カーヴァントには1から10までのランクがあり、1は最弱、6で強者、7や8は最大戦力で鬼神とも呼ばれる強さだ。  しかし9と10は報告された事がない伝説級だ。  また、カードのランクはそのカードにいるカーヴァントを召喚するのに必要なコストに比例する。  探索者は各自そのラビリンスが持っているカーヴァントの召喚コスト内分しか召喚出来ない。  つまり沢山のカーヴァントを召喚したくてもコスト制限があり、強力なカーヴァントはコストが高い為に少数精鋭となる。  数を選ぶか質を選ぶかになるのだ。  月日が流れ、最初にラビリンスに入った者達の子供達が高校生〜大学生に。  彼らは二世と呼ばれ、例外なく特別な力を持っていた。  そんな中、ラビリンスに入った自衛隊員の息子である斗枡も高校生になり探索者となる。  勿論二世だ。  斗枡が持っている最大の能力はカード合成。  それは例えばゴブリンを10体合成すると10体分の力になるもカードのランクとコストは共に変わらない。  彼はその程度の認識だった。  実際は合成結果は最大でランク10の強さになるのだ。  単純な話ではないが、経験を積むとそのカーヴァントはより強力になるが、特筆すべきは合成元の生き残るカーヴァントのコストがそのままになる事だ。  つまりランク1(コスト1)の最弱扱いにも関わらず、実は伝説級であるランク10の強力な実力を持つカーヴァントを作れるチートだった。  また、探索者ギルドよりアドバイザーとして姉のような女性があてがわれる。  斗枡は平凡な容姿の為に己をモブだと思うも、周りはそうは見ず、クラスの底辺だと思っていたらトップとして周りを巻き込む事になる?  女子が自然と彼の取り巻きに!  彼はモブとしてモブではない高校生として生活を始める所から物語はスタートする。

処理中です...