玄関フードの『たま』

ながい としゆき

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第三話 対の魂

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 急に周りが静かになった。
僕は何が起きたのかはわからなかった。玄関フードの中に手が入ってきて捕まれると思ったけど何も起きていない・・・と思う。何の傷みを感じないってことは、もしかしたら僕は死んでしまったのかもしれない。そんなことを考えながら僕は恐る恐る目を開けて周りを見た。
 僕のすぐ上ではご先祖さんが突き出した銃剣が光を放ちながら真っ直ぐにお兄さんの眉間を貫いていた。お兄さんの腕は玄関フードの結界を大きくゆがませているけれど、まだ破ることはできていない。海老蔵も身体中総毛立たせながら威嚇の姿勢でいる。まるで時間が止まってしまったみたいに全てが動かない。
 それからどのくらい経ったのか今でも僕にはわからない。とても長い時間そうしているようだったけど、呼吸をしていなくても大丈夫なくらいだったから、たぶんそんなに長い時間じゃなかったのかもしれない。やがて、ご先祖さんが貫いた眉間から顔に向けてヒビが入り、そこから白い光を放ちながら蜘蛛の巣状に全身に広がっていく。そして、ガラスが砕け散るようにお兄さんの身体が崩れて、中から放たれていた光がだんだんと人の形になっていった。
「ち、千恵子さん?・・・」
確かに千恵子さんだ。たぶん気を失っているんだろう。ぐったりとして動かないお兄さんを抱きかかえている。お兄さんの姿はもうバケモノではなくて、生きていた時の姿に戻っていた。千恵子さんはお兄さんを地面に降ろし、ご先祖さんに深々とお辞儀をして
「ありがとうございました」
と言うと、僕の方を見てニッコリと微笑んだ。懐かしい笑顔だ。思わず涙腺が緩んできてしまう。
「怖い思いをさせちゃってごめんね。それにさびしい思いも・・・」
「僕は今とっても幸せだから大丈夫だよ。それより、何で千恵子さんがここにいるの?」
「話せば長くなるかもしれないけど良いかしら?」
 ご祖さんも構えを説いて優しい表情で頷きながら僕たちを見守っている。海老蔵も緊張を解いて猫座りをして千恵子さんが話し始めるのを待っている。
 千恵子さんは、僕たち一人ひとりに視線を送った後、透き通る声でゆっくりとした口調で話し出した。
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