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七
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「そんなに何悩んでるんっすか?町長の要望どおり記事にすると、何か問題でもあるんすか?イイ写真も撮れたし、記事にすればOKじゃないっすか」
旅館の食堂で、奈々也くんのお母さんに淹れてもらったコーヒーをすすりながら、思考を巡らせている私に、皓太が話しかけてきた。
「ちょっと黙っててよ。考えがまとまらないと、書くにしても納得のいく記事にならないんだから」
「先輩が納得するしないじゃなくて、町の人達が書いてほしいって望んでいるんだからイイじゃないっすか」
「そこも引っかかるんだよねぇ。本当に町の人達みんなが望んでいることなんだろうかって」
私はメモ帳を取り出し、ペンを口に咥えたまま取材したページを何度も何度も読み返した。
皓太は、デジカメで撮影したデータをパソコンに入力し、その中にあった光恵さんの写真をアップにしてウットリと見とれている。どうやらお気に入りの一枚を壁紙にしたらしい。
「いやぁ~、マジでドストライクだぁ~。帰るまでにモデルになってもらっちゃおうかな♪」
なんて、ブツブツ独り言を呟いている。
そんな皓太を見て、私は少し考えてから厨房に向かって話しかけた。
「光恵さんのお母さん、光恵さんって彼氏とかいるんですか?」
「な、な、何なんっすか急に」
皓太は顔を真っ赤にして、私を黙らせようと必死になっている。
「いるって話は聞いたことがないですよ。あの子も、もう良い年なんで早く見つけてほしいと思ってるんですがねぇ」
皓太の気持ちを知ってか知らずか、光恵さんのお母さんは厨房から私達の方に満面の笑みを向けている。
「お、お母さん、本当っすか?に、人間の彼でもイイっすか?」
お母さんは少し頭を傾けて、
「その人の人柄でしょうね。光恵のことを大事にしてくれれば、タヌキでも人間でも私は構いませんけどねぇ。後は光恵の気持ちでしょうねぇ」
と答えると、厨房の奥に戻って行った。
厨房からは良い匂いが漂ってきている。そろそろ夕食を食べにみんなが戻ってくる頃だ。
皓太に目をやると、彼の目が幸福そうに輝いている。光恵さんとのデートでも想像しているのだろう。口元がニヤついている。
「コクる?」
私がニヤニヤしながら顔を覗き込むと、
「からかわないでくださいって!」
とこれ以上ないっていうくらい顔面が紅潮した。
「あ~ぁ、私にも春来ないかなぁ。この際、変身できなくてもイイんだけどなぁ」
「先輩、そんなに切羽詰ってるんっすか?」
お腹がよじれるほどの笑いも落ち着いてきた頃、仕事を終えた動物達(もちろん人間の姿で)が次々に食堂に顔を出し始めた。
光恵さんの姿を見つけた皓太は、早速傍に行って話しかけていた。
「ファイトぉ!」
ちょっぴり羨ましく思いながらも、皓太の緊張している背中に、
『キミの恋が成就しますように』
と心から願った。
旅館の食堂で、奈々也くんのお母さんに淹れてもらったコーヒーをすすりながら、思考を巡らせている私に、皓太が話しかけてきた。
「ちょっと黙っててよ。考えがまとまらないと、書くにしても納得のいく記事にならないんだから」
「先輩が納得するしないじゃなくて、町の人達が書いてほしいって望んでいるんだからイイじゃないっすか」
「そこも引っかかるんだよねぇ。本当に町の人達みんなが望んでいることなんだろうかって」
私はメモ帳を取り出し、ペンを口に咥えたまま取材したページを何度も何度も読み返した。
皓太は、デジカメで撮影したデータをパソコンに入力し、その中にあった光恵さんの写真をアップにしてウットリと見とれている。どうやらお気に入りの一枚を壁紙にしたらしい。
「いやぁ~、マジでドストライクだぁ~。帰るまでにモデルになってもらっちゃおうかな♪」
なんて、ブツブツ独り言を呟いている。
そんな皓太を見て、私は少し考えてから厨房に向かって話しかけた。
「光恵さんのお母さん、光恵さんって彼氏とかいるんですか?」
「な、な、何なんっすか急に」
皓太は顔を真っ赤にして、私を黙らせようと必死になっている。
「いるって話は聞いたことがないですよ。あの子も、もう良い年なんで早く見つけてほしいと思ってるんですがねぇ」
皓太の気持ちを知ってか知らずか、光恵さんのお母さんは厨房から私達の方に満面の笑みを向けている。
「お、お母さん、本当っすか?に、人間の彼でもイイっすか?」
お母さんは少し頭を傾けて、
「その人の人柄でしょうね。光恵のことを大事にしてくれれば、タヌキでも人間でも私は構いませんけどねぇ。後は光恵の気持ちでしょうねぇ」
と答えると、厨房の奥に戻って行った。
厨房からは良い匂いが漂ってきている。そろそろ夕食を食べにみんなが戻ってくる頃だ。
皓太に目をやると、彼の目が幸福そうに輝いている。光恵さんとのデートでも想像しているのだろう。口元がニヤついている。
「コクる?」
私がニヤニヤしながら顔を覗き込むと、
「からかわないでくださいって!」
とこれ以上ないっていうくらい顔面が紅潮した。
「あ~ぁ、私にも春来ないかなぁ。この際、変身できなくてもイイんだけどなぁ」
「先輩、そんなに切羽詰ってるんっすか?」
お腹がよじれるほどの笑いも落ち着いてきた頃、仕事を終えた動物達(もちろん人間の姿で)が次々に食堂に顔を出し始めた。
光恵さんの姿を見つけた皓太は、早速傍に行って話しかけていた。
「ファイトぉ!」
ちょっぴり羨ましく思いながらも、皓太の緊張している背中に、
『キミの恋が成就しますように』
と心から願った。
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