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番外編 小話・裏話
発売記念&御礼SS -1
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レオンとシロウの結婚後の話 シロウ視点
発売記念&御礼(になったらいいな)小話です
タイトルに※がついてるのはお察しの通りのあれ
ーーーーーー
日本でサラリーマンをやっていた頃は、休みの前夜には酒を飲んでいた。本当は毎日飲みたいくらいストレスが溜まっていたけど、夜遅く朝早いサイクルでは、睡眠時間の方が大切だった。だから、週末に一週間分の酒を飲むのだ。俺は強い方らしく、たらふく飲まないと酔えなかった、というのもある。
こちらの世界に来てからは、ほとんど飲んでいない。時々小隊長や先輩に誘われたくらい。体を動かすこと自体がストレス発散になっていたし、基地の外に行かなきゃいけないっていう面倒さもあったから。
今はどうかと言うと、自宅があり、生活サイクルも健康的。毎日飲んだって支障はない。なのに、すっかり酒を飲む習慣が自分の中で消えてしまったせいか、結婚式以来飲んでいない。
めちゃくちゃ酒が好きなのかと聞かれれば、違う。だけど、不意に飲みたくなる時ってあるだろ? 結婚したのだから、夫夫で晩酌ってのをやってみたいし。それで、ふと気になった。
「レオンってさ、お酒弱いの?」
レオンが飲酒しているのを見たのは、それこそ結婚式の時だけだ。プライベートでは一切飲まない。単に好きじゃないのか、弱いのか。俺的には、後者であると嬉しい。
レオンはトーストにかぶりつこうとして大口を開けたまま静止している。ごめんね、朝食中にする話じゃなかったね。彼はそのまま食うか、やめるかを一瞬迷って、トーストを下ろした。本当にごめん。
「弱いかどうかは知らんな。人並みじゃないか?」
「頭ぐわんぐわんになるほど飲んだことない?」
「んー……ああ、一度だけある。ソロンとやけ酒をしたことがあって。ふふっ」
出たな、ソロン・ニュイ。長らく友達としてレオンを支えてくれていたことには感謝しているけど、どうしても嫉妬してしまう。俺はレオンのことに関しては心が狭いんだ。なんだよ、そのかわいい思い出し笑いは。
「なかよしさんで羨ましいこった」
「いやな、あれは革命……というか、例の祝賀パーティーの二日前のことだ。お前にふられたと思って」
「その節は誠に申し訳ございませんでした」
机にぶつける勢いで頭を下げる。あの時の罪悪感は、なかなか消えてくれない。もっといいやり方があったのではないか、と今でも考える時がある。
レオンにとっては、もうただの思い出になっているらしい。こんな風にネタにして、俺を揶揄ってくるくらいには。
「悲しくてなあ、瓶のままの酒を浴びるように飲んだんだ。飲んでも飲んでも、酔いよりつらさが勝って。だから、強いんじゃないか?」
「うう……意地悪な言い方しないでよ」
「お前に似てきたのかもな」
レオンはそう言って、弧を描いたままの口でトーストに噛みついた。乗せていた目玉焼きから黄身がとろりと流れ、慌てて大きくもう一口。それから、照れくさそうに笑う。
もうこれ以上ないってほど彼を好きな状態で結婚したのに、些細な一挙一動に気持ちがまだ膨れ上がる。好きに限りはないのかと、怖くなる時すらあるんだ。それでも、もっともっと、見たことない姿を見てみたいと思うんだから、欲深くて困るよな。
「次の休みの前夜にさ、一緒に飲もうよ。二人で」
「いいぞ。どっちが強いか、勝負だな」
「勝負だったら、負けらんねえな」
「負けず嫌いめ」
そのままくすくす笑い合っていたら仕事に向かう時間になって、慌てて朝食を胃に放り込んだ。
◇◇◇
楽しみにしていたからか、あっという間に時は過ぎ……休み前になった。仕事帰りに酒とつまみを買い込んで帰宅する。レオンが目移りした物全部を買ったら、結構な量になった。
結果から言おう。俺たちは二人でビールの大瓶を三本、ワインを一本、ウイスキーを一本飲んでも、互いに顔色一つ変わらなかった。テキーラを半分飲んだ辺りで恐ろしくなって、お開きにしようと俺から申し出た。レオンは名残惜しそうな顔をして、本当にしぶしぶ承諾した。俺は結構ふわふわし始めていたので、悔しいが彼の方が強い。へべれけレオンが見たかったのに、残念だ。
先に風呂は済ませていたので、歯磨きだけして寝室に入った。床に就く寸前でレオンは、トイレ、と短く言って部屋を出ていった。
──異変はここから始まった。
発売記念&御礼(になったらいいな)小話です
タイトルに※がついてるのはお察しの通りのあれ
ーーーーーー
日本でサラリーマンをやっていた頃は、休みの前夜には酒を飲んでいた。本当は毎日飲みたいくらいストレスが溜まっていたけど、夜遅く朝早いサイクルでは、睡眠時間の方が大切だった。だから、週末に一週間分の酒を飲むのだ。俺は強い方らしく、たらふく飲まないと酔えなかった、というのもある。
こちらの世界に来てからは、ほとんど飲んでいない。時々小隊長や先輩に誘われたくらい。体を動かすこと自体がストレス発散になっていたし、基地の外に行かなきゃいけないっていう面倒さもあったから。
今はどうかと言うと、自宅があり、生活サイクルも健康的。毎日飲んだって支障はない。なのに、すっかり酒を飲む習慣が自分の中で消えてしまったせいか、結婚式以来飲んでいない。
めちゃくちゃ酒が好きなのかと聞かれれば、違う。だけど、不意に飲みたくなる時ってあるだろ? 結婚したのだから、夫夫で晩酌ってのをやってみたいし。それで、ふと気になった。
「レオンってさ、お酒弱いの?」
レオンが飲酒しているのを見たのは、それこそ結婚式の時だけだ。プライベートでは一切飲まない。単に好きじゃないのか、弱いのか。俺的には、後者であると嬉しい。
レオンはトーストにかぶりつこうとして大口を開けたまま静止している。ごめんね、朝食中にする話じゃなかったね。彼はそのまま食うか、やめるかを一瞬迷って、トーストを下ろした。本当にごめん。
「弱いかどうかは知らんな。人並みじゃないか?」
「頭ぐわんぐわんになるほど飲んだことない?」
「んー……ああ、一度だけある。ソロンとやけ酒をしたことがあって。ふふっ」
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「なかよしさんで羨ましいこった」
「いやな、あれは革命……というか、例の祝賀パーティーの二日前のことだ。お前にふられたと思って」
「その節は誠に申し訳ございませんでした」
机にぶつける勢いで頭を下げる。あの時の罪悪感は、なかなか消えてくれない。もっといいやり方があったのではないか、と今でも考える時がある。
レオンにとっては、もうただの思い出になっているらしい。こんな風にネタにして、俺を揶揄ってくるくらいには。
「悲しくてなあ、瓶のままの酒を浴びるように飲んだんだ。飲んでも飲んでも、酔いよりつらさが勝って。だから、強いんじゃないか?」
「うう……意地悪な言い方しないでよ」
「お前に似てきたのかもな」
レオンはそう言って、弧を描いたままの口でトーストに噛みついた。乗せていた目玉焼きから黄身がとろりと流れ、慌てて大きくもう一口。それから、照れくさそうに笑う。
もうこれ以上ないってほど彼を好きな状態で結婚したのに、些細な一挙一動に気持ちがまだ膨れ上がる。好きに限りはないのかと、怖くなる時すらあるんだ。それでも、もっともっと、見たことない姿を見てみたいと思うんだから、欲深くて困るよな。
「次の休みの前夜にさ、一緒に飲もうよ。二人で」
「いいぞ。どっちが強いか、勝負だな」
「勝負だったら、負けらんねえな」
「負けず嫌いめ」
そのままくすくす笑い合っていたら仕事に向かう時間になって、慌てて朝食を胃に放り込んだ。
◇◇◇
楽しみにしていたからか、あっという間に時は過ぎ……休み前になった。仕事帰りに酒とつまみを買い込んで帰宅する。レオンが目移りした物全部を買ったら、結構な量になった。
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先に風呂は済ませていたので、歯磨きだけして寝室に入った。床に就く寸前でレオンは、トイレ、と短く言って部屋を出ていった。
──異変はここから始まった。
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