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7話
しおりを挟む「ははははははは!!」
突然笑い出した僕を攻略対象者だけでなく会場中の人間が奇怪なものを見る目で見ている。
「ど、どうしたんだ?何がおかしい?」
「何がおかしいって…全部に決まってるでしょう。
はあーあ。僕はね、面倒だから犯人探しなんてしなかったんです。だって犯人を見つけたらその後謝罪だとかなんだとか色々あるでしょう?そんなのに時間を取られるのが嫌で」
「…何が言いたい?」
「だからぁ、見つけようと思えば犯人なんてすぐ見つけられたんですよ。僕は誰かさんと違ってちゃーんと証拠を取っておきましたから」
そう言って収納魔法で瓶をいくつか取り出した。
中には水や泥、紙片。
「魔法って便利ですよね。どこでも水を出せるし、紙だって破けちゃう。でも残りますよね。魔力っていう証拠が」
「な…!」
「僕、直すの得意なんですよ。だからこの魔力も持ち主の所に直しますね」
僕が魔力を込めるとそれは忽ち持ち主たちに戻っていった。
ふふん、グレートでしょう?
4部は何度も読み返したからね。
「今、魔力が戻っていった人が真犯人です。何か反論は?」
僕の言葉に一瞬固まった真犯人たちだったが、直後一斉に喚き始めた。
「わ、私は!殿下に脅されて仕方なく…!」
「僕もです!理由は知りませんが神子様を虐めろ、と…!」
「俺も!」
「私もです!!」
「へえ。だそうですよ、殿下?」
結局お前が黒幕かい。
王子様は顔を真っ赤にして怒っている。
「ざ、戯言を言うな!私はそのようなこと…」
「そんな…!」
言い逃れするつもりか。
王族の罪を告白するなんて真実じゃない限りそうそう出来ないと思うんだけどな。
ま、どうでもいいんだけど。
「誰が黒幕だとかはこの際別にいいです。問題は、碌な調査もせずに僕の大切な人を冤罪にかけようとしたことだ」
僕の言葉にびくりと体を震わせ、王子様は今度は顔を真っ青にしている。
忙しい人だな、血圧大丈夫?
「それは…だって!そいつが神子に気に入られているからって調子に乗ったのが…」
「はあ?いつエルが調子に乗ったの?」
「たかが伯爵家の三男のくせに君に馴れ馴れしく…!」
「アホらし…。つまりただの嫉妬でエルを貶めたわけだ」
ため息が出る。
こんなアホどもとこれ以上付き合ってらんないね。
「エルが僕のお気に入りっていうのは分かってたんでしょ?分かってて君たちはこんなことしたんだね。はあ、つらいなー悲しいなー傷ついちゃったなーー」
棒読みだった僕のセリフでも効果は抜群だったみたいで、会場中が焦った声で一杯になる。
『神子様』の機嫌、損ねちゃったね。
「つらすぎて、この国にはもういたくないなー」
「え…?は…!?ちょ、ちょっと待ってくれ!謝罪する!謝罪するから!」
「もう遅いよ。ばいばーい!みんな、元気でねっ」
そう言って僕は走り出した。
強引にエルの左手を掴んで引っ張って。
「行こうエル!冒険者になるんでしょ?」
「!!…ははっ!そうだな、行こうルイ!」
僕たちはそのまま振り返りもせずに、エルの転移魔法で学園を後にした。
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