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8話 ※微
しおりを挟む転移魔法を幾度か繰り返し、国境沿いの街まであっという間にたどり着いた。
そこで夜になりエルの魔力も尽きそうになったので、僕たちは手頃な宿屋に転がり込んだ。
「今更だがお前、金持ってきてたんだな。俺なんか手ぶらだぞ?」
「まあね。僕、所持品のほとんどを収納魔法に入れてたし。服、着替えよう。学園の制服は悪目立ちしちゃうよ」
そう言って宿屋に入る前に買っておいた服を取り出し彼に差し出した。
彼はタイピンだけ丁寧に外すと、ばさっと豪快に上着とシャツを脱ぎ、僕の目の前で半裸になった。
ダメだよエル、逃亡劇で興奮している状態の僕の前でそんな無防備な姿を見せちゃ…。
彼に近づきそっとその割れた腹筋に手を這わす。
はっ!ダメだダメだ落ち着け。
良くないぞ、こんななあなあな感じで関係を持っては…!
僕のそんな葛藤を知ってから知らずか、エルは僕の手にその手を重ねた。
どきどきして僕はその手をじっと見てしまう。
「その…お前は、さ…」
「なに?」
「お、夫になりたいんだろう?妻にしたいのは…やっぱり華奢なやつか?」
「ううん、全然。まったく。ちっとも。むしろ逆」
「逆?」
「うん。ガタイがよくて大きい人が好き」
「…………俺、みたいな?」
そこではっと顔を上げると、エルは真っ赤な顔で僕を見つめていた。
うそ、うそうそ…本当に?
「うん、僕はエルみたいな人が好き。…違うな。エルが好きだよ。エルだけが好き」
「…っ!俺も…好きだ。お前…ルイのことが。初めて会った時からずっと」
「え?」
「一目惚れだった。かわいいと思った。最初は正直、妻になってくれたらなって…」
「……」
「でも、お前は夫になりたいって知って。それでも…好きなのは変わらなかった。お前がそっちが良いなら俺は…………妻になるよ」
段々と声が小さくなったけどはっきりと聞こえた彼の決意。
僕はたまらなくなって彼を強く抱きしめて、そのままベッドに押し倒した。
「エル、エル、エリオット。大好きだ。ありがとう。愛してる」
ちゅっちゅっと彼の顔中にキスをする。
するりと彼の胸筋を撫ぜると、彼はぴくりと体を震わせた。
「…言っとくけど、経験なんざねえからな」
「大丈夫。僕が全部するから。エルはただ気持ちよくなってて」
「……随分と慣れた口ぶりだな」
「そりゃもう何度も抱いたからね。エルのこと、妄想で」
「ばっ…!妄想かよ!すけべ!変態!エロ神子!」
「何言ってるの。男はみんなすけべだよ」
緊張からかいつもより饒舌になった彼の口にキスを落とす。
触れるだけの軽いものを幾度かした後、は…と彼が吐息を漏らした瞬間に舌を割り入れた。
逃げる彼の舌を追いかけて絡め、引っ張っり出して吸い、先端を甘噛みする。
「…ッ…ふ……んんっ…」
漏れ出る彼の声がエロい。
興奮しすぎてキスだけでイキそうだ。
仕上げに彼の歯の裏から上顎をくすぐって、僕は口を離した。
「はっ…はっ……やっぱり経験豊富なんじゃねえか…」
息を荒げて彼は僕を下から睨みつける。
その瞳にうっすらと涙を溜めて。
やめてよ、これ以上煽らないで。
「経験なんて無いよ、本当に。妄想の賜物。あと薄い本のおかげかな」
「ウスイホン?」
「………指南書みたいなものだよ」
訝しげに見る彼を誤魔化すように、僕は彼の首筋に吸い付いた。
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