詰んだ悪役令嬢は断罪後、滅ぼされた推し種族にこの身を捧げます。

宇治ノ宮レルフィ

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プロローグ 処刑台

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意識が朦朧もうろうとした中、死刑執行人に腕を拘束した縄で引かれながら、私は静かに処刑台に向かう。



チラリと横目で処刑台の下を見れば、沢山の民衆が集まり、こちらに罵声や野次を飛ばしている。



台に上がると、10日も牢に入れられほとんど食事も与えられず衰弱しきった私には抗う力も既に無く、容易に膝まづかされた。



執行人がギロリとこちらに睨みをきかせ、帝国の紋章印が押された書状をつらつらと読み出した。



「ルヴィローズ・フォン・トワイライト。この者を妹君刺殺未遂とし、公爵位を剥奪。そして、これより打首の刑を執行する。

またトワイライト公爵家については、多額の賠償金の支払いと、ルヴィローズ廃嫡により、公爵家への責任は今後一切不問とする。」







ルヴィローズわたくしはこの乙女ゲームの強制イベントによって、今から断罪される。




元々の私は日本人だったがこの世界に転生した。


幼少期に記憶を取り戻してから、私は必死に断罪、処刑されないように手を尽くしてきた。


もちろん妹に対しても虐めるどころか優しく接していたつもりだし、妹の婚約者の王子との関係も邪魔なんてした記憶もない。





なのに何故…








「…ふっ。」



ゲームの強制力に適わなかった絶望と、これから自分の身に起こることを想像し、恐怖を通り越し思わず笑いがこぼれた。





「まあ!あんな状態でも笑ってるわ!」

「なんと恐ろしい。」

「悪魔のような女ね!」



私の態度に、尚又民衆は沸き立つ。




ああ、今から私は死ぬのか…



ふと前世と今世の両親を思い出す。



…どっちも最悪だったな。


お母さんもお母様も生きてさえいてくれたら…



上がった口角とは裏腹に、涙がつっと頬を流れた。




ぼんやり霞んだ視界のまま、少し顔を上げ民衆に目を向ける。




………




…え?!!





「どうしてここにいるの…?」



私の視界に、民衆に紛れ哀れみの目でこちらを見つめる友人の姿が映った。



見間違いかと思い、一度強く瞼を閉じて深呼吸をする。

重い瞼を開き、もう一度目を凝らしてみた。



平民特有の暗い紺色の髪。そして茶色の瞳をしているのに、平民には見えない程整った顔立ちをした同じ歳くらいの青年が立っている。


間違いなく私の大切な友人、アルだ。


平民は茶色の目。髪色は基本的に茶系や黒色が多いが、稀に紺色もいる。

この町には紺色は少ないので、暗い髪ながらこの群衆の中でもひどく目立つ。




いつも簡素なクリーム色のシャツを着ているのに、今日の彼は黒色のマントに身を包んでいた。


前世の記憶がある私には、彼が喪服姿で弔いに来たかのように見える。






家族と上手くいっていなかった私にとって、アルはこの世界に来て唯一心許せる存在で、何よりも大切な人だった。


きっとアルにとって私はただの話し相手の1人だったのだろうけど…



「アル…」




民衆の群がりを避けるように後方に立つアルをしばらく見つめ、変わらない彼の表情に私は肩を落とした。





「最期なんだから、いつもみたいに笑ってよ…。」



ポツリと呟いた自分の言葉にハッとする。





最期…



こんな、ボロボロで傷だらけで、酷い格好をしている私がアルにとって最後の姿…


なんて、情けないのだろう。




どうせ死ぬのなら、抵抗し騒ぎ立てたりせず、可憐に散りたい。






私は力を振り絞りしっかりと前を見据え全てを諦め死を受け入れた。



執行人に髪を捕まれ四つん這いにされると、後ろ首に冷たく鋭利な物が当たる感触が分かった。


酷く錆びた匂いが届く。


どうやら簡単には死なせて貰えないらしい。



斧が振り上げられ、思わず歯を食いしばった。










キィィィンーーーーー






首を切られたはずだが、何故か痛みはなく金属音が響き渡った。


恐る恐る頭を上げる。




「…あなたは…っ!!」




次の瞬間、執行人の斧は軽々と遠くに吹き飛ばされ、私は暖かで清潔な布に包まれた。




そこからは記憶が曖昧だ…




目の前の人物が私を抱き抱え何かを訴えている。





もうダメだ…


張り詰めた緊張の糸が切れ、私は深い眠りについた。






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