運命のひと。ー暗転ー

破落戸

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私は喜んで林檎を齧る

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 夢で見た龍が私を絞め殺そうとしている。喉の奥に何か詰まったような、吐き出したくても吐き出せないと息苦しさ。汚い喩えだけど、嘔吐物が引っ掛かって取れない、そんな感じ。たらりと口の端から唾液が垂れる。

 目の前が真っ白になる。何も見えなくなって霞んできた。虹色の火花がチカチカと光り、呑気にも綺麗だなぁなんて思った。

 先程よりも体重をかけて、強く喉が潰される。もう、抵抗したところで無駄かなぁ。私の言葉は、太刀川さんには届かないのか。悲しいな。これで太刀川さんは本当に満足なんだろうか。このひとの私に対する情の重さは、私の予想を遥かに凌駕していて、計り知れない。

 きっと、悶え苦しんでいる今の私の顔は、とてつもなく見られたものではないだろう。今まで散々情けない姿を見せてきたから今更だろうが、最期の瞬間まで苦しみに顔を歪ませている私の顔を、太刀川さんに見て欲しくない。

 太刀川さんの両手に、のろのろと自分の手を添える。首に絡み付く大きな両手は、私のぬくもりが伝わって温くなっていた。変なの。これじゃまるで、太刀川さんの手助けしてるみたいだ。

 一瞬だけ微かに反応した太刀川さんの手に己のものを重ね、目を閉じる。色々な思い出が駆け巡る。走馬灯かな。友達と京都を巡って、天龍寺でのんびりしてたら、いつの間にか誰も居なくて。歩き回ってたら、ひとが殺される瞬間を初めて目の当たりにして、そして、歓喜に打ち震える青い瞳が私を見つけた。このひととの接し方や近すぎる距離に戸惑って、働きたいと言って逃げ出して、慣れない環境に身体を崩した。初めて働くといった行為の大変さと難しさを知った。あのときほど、何十年と今も働き続けている父を尊敬したし、凄さを痛感したことはない。

 あの日見た桜の木は、今はもう満開なのかな。木の根っこで座り込んでいたお喋りな男性の赤い瞳が、強烈な印象を私に残した。遠慮もデリカシーが無くて、いい意味でも悪い意味でも大人げない、今まで触れあったことのないタイプの男性。私が心の底から幸せになってほしいと今も願う、大切なひと。

 出会ってからの出来事が、たくさん頭のなかを巡り巡る。何から何まで、初めてだらけだったなぁ。積み上げてきたものがガラガラ崩れていく。死んだら全部、終わりなのか。こんなに積み重ねても、経験値リセットされちゃうのか。冒険の書は消えてしまう。


「(お祖父ちゃん)」


 川が見えたら、その向こうで待っててくれていたらいいのに。まさか、お祖母ちゃんよりも早くこっちに来るなんて、この馬鹿孫。甘ったれ! って絶対怒られると思うけど。お祖母ちゃんも、もしかしたら一緒なのかな。それはそれで悲しいな。出来れば、まだ居ないでほしい。生きて、もう一度会いたかった。でも、そちらに行くのなら、ごめんなさいを繰り返すだろう私の頭を、もう一度あのしわくちゃの手で撫でて、抱き締めてほしい。でも、お父さんが寂しくなっちゃうからなぁ、という気持ちもあって複雑だ。まだお母さんとも仲直りしてない。


『志紀。優しく、気高く、聡明に、他人に馬鹿にされても、自分自身に恥じないひとになりなさい』


 結果的には、少しぐらい近付けただろうか。

 つ、と熱い液体が頬を濡らした。痛苦から生理的に流れたものかと思ったが、違う。明らかに、上から降ってきたものだ。気付いたときには、私の首を絞める力は消えていて、ただ、添えられるだけとなっていた。久々に酸素を肺に取り込んだことで何回か噎せてしまったけれど、目線だけは外せなかった。

 太刀川さんが呆然とした顔で、私を見下ろしていた。本当に、心から驚いた顔をしていた。ここまで感情を露にした太刀川さんは、そう滅多に見られるものではない。真ん丸にさせた青い目はぐらつき、動揺を見せている。顔は真っ白を通り越して青く、その顔色を、より悪くさせている。ありえない、嘘だ、認めない、と太刀川さんの心の声が聞こえてくる様だった。たちかわさん、と掛けた声は掠れ、空気中に消える。声帯が上手く機能していない。

 太刀川さんの右手が、私の首からそっと離れる。大きく開かれた手は尋常でなく震えていた。掌は、きつく握られた拳となっても怯えていた。
 
 太刀川さんは、揺れる瞳を己の手に向けたまま暫くそうしている。その間に、喉の調子も万全ではないものの、落ち着きを取り戻しつつあった。まだ万全とは言えないけれど、小さく、一定の呼吸を繰り出す。


「たち……」


 聞こえるか聞こえないか、僅かに音を乗せることが出来た声を絞り出して、太刀川さんの名前を呼び掛けた瞬間、私の顔の横の畳に、拳が力強く叩き付けられる。

 びっ……くりした。鼓膜が割れるかと思った。衝撃による風で、ふわりと髪も若干揺れた。みしみし、と横から聞こえてくるのは、畳が破壊された音だろう。バクバクと鳴る心臓は、勿論驚愕からだ。

 もっと驚いたのは、太刀川さんの表情の変化。私の顔の横に未だ拳をめり込ませている張本人の目元は、長く伸びた前髪に隠れて見えない。けれど歯を食い縛り、手負いの獣の様にフーフーと息を漏らし、怒りに震える拳を伸ばす、刺青を纏う腕に、筋を浮き立たせている姿だけで、十分に太刀川さんの心境を把握出来る。何よりも、その頬に一筋ついた痕が、一番このひとの感情を物語っていた。

 それからも何度か、太刀川さんは私の首に両手を添え直して、握力を加えた。繰り返し、何度も、何度も。自分の意思を叩き起こすためなのか、悔しさと苛立ちを隠さない顔で舌打ちをし、右手だけでなく、左手も痛め付けて始めて、私が横たわる畳は木っ端微塵になって、どんどんと殴り続けた太刀川さんの両手も傷ついて血みどろだ。砕かれたイグサが、太刀川さんの手の傷口に張りつき刺さっている。数回は苦しいな、と思う程度の力が籠められていたけれど、それも回数を重ねるにつれて、添えられるだけに近くなった。

 私を殺したいのに、殺せない。それを認めたくなくて、こうして足掻き続けている。あと一歩なのに、その先に踏み込めない。あと少しなのに、掴もうと思えば掴める筈なのに。それどころか、どんどん私は遠ざかって、追いかけて追いかけて、追い縋って、捕まえようと必死で、憐れなひと。


「生きること、諦めないでください」


 返事はない。血みどろの手を取る。簡単に首から剥がれた手は、大人しく私の手に包まれてくれた。


「地獄の果てに行っても、俺のものだって言ってたじゃないですか。私が欲しいなら、生きて、私を追いかけて、今度こそ逃げないように雁字搦めにして、甘さも優しさも見せずに、縛り付けるしかない」

「……」

「私、移ろいやすいから。長い間ほっとかれてたら、また太刀川さんのこと本当に忘れちゃうかも。冗談なんかじゃないですよ。捕まえてくれないと、本当に誰かのものになっちゃいますよ。いいんですか」


 追い討ちが、太刀川さんの手を強張らせる。


「太刀川さん。生きて生きて、いっぱい生きて、死に物狂いで探して、浚ってください。私を全部、太刀川さんのものにしたいなら。諦められないなら」


 鋭い眼差しが私を貫く。青い瞳はぎらつき、瞳孔は完全に開ききっている。いつ、何が起こってもおかしくない緊張感が、肌をぴりぴりと刺した。

 くつくつと笑い声が落ちてくる。デジャヴだ。館長さんの腕に抱かれた壊れた人形。制御を失い、ずっと歪な笑い声をあげて、正常に動作しなくなったあの子の姿が、目の前の太刀川さんに重なった。

 事実、嗤っている太刀川さんの瞳からは、光が完全に喪われていた。

 私の手をゆっくり解いた太刀川さんの左手が畳の上を探り、目的のものを手に取る。からん、と乾いた音を鳴らして、和風の花飾りが揺れる、ジェイさんが遺した刃物を、ゆっくりと私の上に翳した。光に反射した切っ先は、先端恐怖症の人ならば絶叫ものだろうな、とぼんやりと考えた。

 
「認められる訳が、無ェだろうが。もう、誰にも譲りゃしねぇ。貸しもしねぇ。これは、これだけは、俺のものだ」

「太刀川さん」

「未来永劫、誰にも渡しゃしねぇ」


 小刀を握るその手がカタカタと震えていることに、このひとはきっと気付いていない。私の命を摘む為の十分な力が入っていないことも。


「道連れだ」


 振り下ろされようとした小刀の動きが遅く感じる。汗が額から落ちる。唇を噛むことで恐怖を砕いた。青い目を真っ直ぐに見つめたまま、その刃が私の喉を貫くかもしれない、その瞬間まで。


「シキティ!!」


 障子を開け放つ音と、よく通る聴き心地の良いソプラノが、冷えきった空間を絶ちきった。

 俊敏に私の上から退いた太刀川さんが距離を取るのと同時に、銃声が何発か重く響く。放たれた弾丸は太刀川さんが居た位置を的確に狙ったが、後ろの壁に埋め込まれる。何が起こったのか確かめたいのに、身体が重くて、さっとは起き上がれない。なんとか上半身を起こしたときには、弾丸を避けた太刀川さんが、ジェイさんから拝借した小刀を私の後ろに居る人物に投げたところだった。


「ぐっ……!」


 痛みに耐える苦渋の悲鳴と、何か落ちる音。思うように回ってくれない、痛みのある首には頼らず、身体ごと振り返る。脱力した上半身は、すぐに畳の上に転がることとなり痛みを覚えたが、そんなことはどうでもよかった。

 ゆっくりと立ち上がる太刀川さんに対面する女性。身を起こせない私を守ろうとしてくれているのか、立ち塞がった。銃を握った手で、太刀川さんには見えない様に私を隠し、凛と立つ軍服を着た女性を、今起きていることは現実なのかという心持ちで見上げる。


「し……」

「……」

「シラユキ、さん」


 一瞥をくれたシラユキさんは、すぐに女性の死体の山の上で佇む太刀川さんに視線を戻し、構えた。シラユキさんの手の陰から見える太刀川さんは、この場に踏み込んだシラユキさんをつまらないものを見る目で見つめている。ふ、とシラユキさんに隠された私にも、冷たい青を寄越した。

 くん、と部屋の匂いを嗅いでいるシラユキさんが顔を顔を顰め、足元に居る私に注意を促した。


「深く吸っちゃ駄目よ」

「え?」

「もう遅いだろうけど」


 シラユキさんの銃が、太刀川さんに構え直される。


「鬱陶しいんだよ」

「……」

「いい加減にしつけェ」

「お互い様でしょ。執念の塊の貴方にだけは、誰も言われたくないと思うわ」

「今回は隠れねぇのか」


 太刀川さんを見据えたまま、シラユキさんが黙りこむ。


「あの時みてェに、ガタガタ震え、怯えて、棚の中に引籠もって、大人しく泣いてりゃ良かったんだ」

「……」

「せっかく、そのタマは拾ってやったってのにな。自分だけは助かって良かった、そう考えて、何処かで呑気に暮らしてりゃあ、ただの女としても生きられた。なのに、わざわざこの俺にチャカ向けに来るたァな。恩知らずな女だ」

「貴方は私の家族を殺した」

「嗤わせるな。オメェの家族とやらは聖人か何かだったのか」

「五月蝿い」

「俺達は、誰も彼も、どこの馬の骨ともわからねぇ連中の足を掬って、地獄に叩き落として、食扶持にしてんだ。殺されて当然だ。文句なんざ言える訳もねぇ」

「……」

「その立場に就いて、それがまだわからねぇってんなら、御粗末な脳味噌としか言えねぇな」

「それでも」

「……」

「私は、根源を根絶やす。もうこれ以上、繰り返させはしない」


 シラユキさんが銃をホルダーに戻し、代わりに、懐から小型の装置を取り出した。太刀川さんは無言で見つめている。シラユキさんは目の前にそれを翳すが、装置のボタンを押そうとするその手は、指は躊躇に震えていた。


「志紀」


 太刀川さんが、シラユキさんを尻目に私を呼ぶ。ごく、と生唾を飲み込んだ。


「こっちに来い」

「……」

「忘れたのか。お前を庇っちゃあいるが、その女は、鏡花を殺した女だ」


 その言い方は、狡いんじゃないか。両腕を落とされた、女将さんの痛々しい断末魔がエコーで甦る。泣き叫ぶ悲鳴は、今でも私の夢に現れ、私を叩き起こす。決して忘れるなと警告するみたいに。

 シラユキさんを見上げる。軍帽を被っていないシラユキさんの表情は、今はよく見える。無を徹しながらも、その唇は小刻みに震え、下唇を噛むことで必死に耐えている。

 私の前に立っているこのひとが、優美に美しく笑う、優しい女性を虐げ、無惨な死へと貶めた。どろりと黒いものが私の中を侵食する。目前にある足に固定された銀の銃が、さぁどうぞ、お取りなさい、と私を誘っていた。作った拳が、今こそ女将さんの無念を晴らせと、私を鼓舞してくる。

 天使か悪魔かが私に囁いた。やられた分は同等か、それ以上にしてやり返せ。今こそ、女将さんから受けた恩を返すときだ、と。

 
「どこかで、断ち切らないといけないんです」


 悔しさを押し殺して、弱々しくかぶりを振り、否定した私を、太刀川さんとシラユキさんが両者共に見下ろした。

 小さい頃に流行った、受け取った者は次の人に回さなければ、自分が呪われてしまうチェーンメール。友達もそれほど居なかった為、連絡先も多く把握している訳じゃあなく、回ってきたのはごく僅かだけれど。小心者の私は、それはまぁ真に受けて、呪われてしまう、と顔を真っ青にしたものだ。そして、自分が助かるべく、誰か誰か、と登録の少ない電話帳を検索して、メール作成画面を開いて、そして閉じた。

 嫌だった。これを送った相手に恨まれるのが、嫌われるのが。何よりも、呪いとやらを、自ら進んで他者に押し付けることが。私には出来なかった。ちょっとした出来事といえど、保身と献身が複雑に入り交じった情は、幼い私を混乱させた。本当は怖いのに、我慢をして、でも、これであの子は私を嫌いにならない。友達のままで居てくれるとホッとしたり、でも、三日後に死んじゃうのかなと涙目になった。けれど、少なくとも、あの子がこうして怯え、恐怖をすることはなくなったのだと、満足もしていた。

 気付きはしなかったけれど、たぶん、私はあのときにとっくに学んでいた。利己的に考えられた行動でも、それが誰かへの助けにも繋がるのだと。


「辛くても、悔しくても、惨めでも、我慢しなくちゃいけないんです。じゃないと、一生終わらない。ずっと、誰かが苦しむことになる」


 悲しいことだ。理不尽だとも思う。だけど、世の中は、その連鎖が続くから戦争なんてものは無くなることはないし、悲しみをぐっと堪えて耐え忍ぶ人達が居たからこそ、お祖父ちゃんは戦火から救われた。私は孫として、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんの腕に飛び込むことが出来た。誰かから何かを奪い、報復する為の手を、苦渋な決断ながらも下ろしてくれた人達が居たからこそ、私は。

 緊張の残る長い静寂の後、大きく緩慢に、辛苦にまみれた息を吐き出し、手を下ろしたひとが居た。

 だらん、と垂れ下がった片腕は力無く、無念に溢れていた。顔を俯かせたシラユキさんから離れることはせず、じっと様子を見守る。俯いた顔に汗をかき、深く眉を寄せ、ぎゅっと目を瞑り、ぎりぎりと悔しそうに奥歯を噛み締めている。

 そして、ゆっくりと開かれた黒の瞳には、決意の秘められた強い光が灯っていた。

 素早く装置を戻したシラユキさんは、代わりに銃を取って、太刀川さんに一歩二歩の距離を詰め、早撃ちで太刀川さんの顔面に放ち続けた。太刀川さんが同時に抜いた日本刀で、飛んできたそれらを斬り捨て、シラユキさんに真正面から斬りかかったところを、彼女は腰を下げ屈むことで避けた。驚くことに、シラユキさんは自身の得物である銃をも仕舞い、代わりに手榴弾に似た形のものについたリングを、歯で外し、空中に投げた。


「目と耳を閉じて! 伏せて!」


 その声に、爆弾! と思った私が、頭を抱えて屈むと、耳で塞いでもなお聞こえる爆発音と、閉じた瞼の向こうで放たれた強い光、焦げ臭い匂いが鼻に届く。

 そろそろと目を開けようとしたタイミングで、腕を何者かに引かれる。真っ白な煙幕が視界を覆っていた。そのまま部屋を出る道を引き摺られていく。

 火薬量が多いのか、どこまでも白い靄に包まれた道が続く。私の手首をしっかりと握るこの手だけが、今は頼りだった。

 しかし、上手く身体を動かすことが出来ず、すぐに足が絡まり、何度も転んでは起こしてもらってを繰り返していた私が後ろを確認しようとするのを、この手の人物、シラユキさんが強くそれを叱咤した。


「振り向くんじゃない! 腹を決めたのなら、情けをかけちゃ駄目よ!!」

「っ」

「さぁ早く、私の肩をしっかり掴んで。急いで」

「でも」


 逃げるにしても、私のこの身体じゃ。せめてシラユキさんだけでも、と続けても構うことなく、力の抜けた私の身体を支えて歩くため、私の腕を自身の肩に回させ、手を握り、しっかりと固定させた。片腕が無いから腰を引っ張るまではしてあげられない、踏ん張って、と私に鼓舞して。

 太刀川さんの居た部屋から、ある程度離れると、白煙も薄まっていく。階段を二人転げる様に下り、小さなスペースが隠れた階段下へ、身を潜むように背を押される。二人潜り込んで外の様子を確認し、警戒していると、シラユキさんが壁に凭れ、大きくため息をついて、腹部を抑えた。様子がおかしい。目を凝らしてみると、シラユキさんの顔には、脂汗が大量に浮かんでいた。


「これを飲んで」


 詳しく様態を見ようとしたところを、眼前に差し出された小袋に遮られる。大人しく受け取り、中を確認すると、赤と青の二色の錠剤が入っていた。赤色のものを一粒飲めと言われ、取り出しはしたものの、何の薬か分からず、掌に乗せたまま困惑する私に、シラユキさんは苦し気に口角を上げて説明してくれた。


「解毒剤の様なものよ。倦怠感が取れる筈」

「解毒剤……」

「太刀川があの部屋に充満させていたのは、葉っぱよ。かなりキツめのね」

「葉っぱ……って。まさか」

「そのまさかよ。煙管の中に仕込んでる。あの匂い、この種類のクサはある程度身体に馴染ませてないと、あそこまでは動けない。たぶん常習してるわね」

「……」

「もともとブッ飛んだ男だから。今更、大麻位で驚きはしないけど。……っ」

「シラユキさん?」


 横腹を抑え、痛みに顔を歪ませる様子を見て、すぐさま薬を口に含む。水なんてものは無いので噛み砕き、苦味を我慢して飲み込んだ。

 息を荒くするシラユキさんが手で覆う腹部は、赤黒い血がじわりと衣服を染め上げ、侵食している。血は流れ続けていた。そんな。太刀川さんが投げた小刀は、シラユキさんの身体を確実に刺していた。私を庇ったせいで。

 シラユキさんの手を退けさせ、急いで着物の袖を使い、血を止めるべく強く押さえ込む。小さくくぐもった声をあげるシラユキさんを見て、涙が滲む。いかん、本当に泣いちゃう。メソメソしてる場合じゃないのに。


「情けをかけるな、ですって。よく言えたものだわ」


 息荒く、自嘲気味に、シラユキさんが言葉を紡ぐ。いやだ。喋らないで。楽にして。そう言いたいのに、喉に詰まって出てこない。この間にも、私の着物の袖は赤く染まっていく。その際に、否が応でも気付いてしまう。シラユキさんの腰に巻き付けられたもの。コートの上からは分からなかった。先ほど、シラユキさんが太刀川さんに向けて掲げていた装置が、その存在を主張し、用途を知らしめる。嫌な予感が止まらない。まさか。だって、これじゃ、まるで。


「何、ですか。これ」

「……」

「シラユキさん。どういうことですか。は、はは……ほ、本気じゃないですよね」

「私は」

「駄目です。こんなもの捨てましょう。ね、ほら。早く取らなきゃ。お願いだから」

「私は、天龍に、太刀川アイツに家族を殺された」

「……」

「仲間も、親代わりも全員。やられた分やり返して、奪われた分奪ってやると誓った。例え白鷹を……家族を、私の命を犠牲にしてでも。あの男の大切なものが、ここにある。やり返せる。最も完璧な形で、報いを受けさせられる」

「……」

「私、貴女が羨ましかった」


 私の顔を見上げ、諦めて、何もかも降参して、自白する罪人を彷彿とさせる緩い笑みを浮かべて、そう言われた。


「私と同じ世界に居るのに。親や兄弟に大切に育てられて、愛されて、お友達とも仲が良くて、純真で、普通の女の子として生きられることが羨ましくて、妬ましかった。憎いとすら思ったこともある」

「……」

「そんな貴女だからこそ、巻き込む形になっても悔いなんて残らない。むしろ精々する。そう思うのに、わかってたのに」

「シラユキさん」

「出来ない。わたしには出来なかったのよ」


 ぶわりと、溢れる涙が熱い。思わず、シラユキさんの胸元にしがみついてしまう。ぐすぐすと泣く私の頭を抱えて、ぎゅうと抱き締めてくれるシラユキさんから、熱い吐息が漏れる。


「シラユキ! 志紀!」


 どこだ、と私達を呼ぶ声がする。安心させてくれる声に、より涙が零れて、シラユキさんにしがみつく腕に力が入る。シラユキさんも、それに応えてくれた。


「徹也。こっち」

 
 大急ぎで私達の元に駆け寄ってくれたひと、岡崎さんが、階段下に隠れる私達を見つけて覗き込む。お前ら大丈夫か、と尋ねられ、振り返った瞬間ぎょっとしたのだが、岡崎さんも私を見て、同じ反応を返した。


「おか、岡崎さん! そ、その怪我」

「志紀、一緒だったか。良かった。無事……え、おま、真っ赤、泣いて……っど、どっか怪我、びょびょびょ病院。ままま待ってろ、今病院呼んでやるから! もしもし、ポリスメン!?」

「いや、それこっちの台詞です!  私は大丈夫です、私よりもシラユキさんが、それに岡崎さんだって」

「俺は大丈……」

「ぶな訳ないでしょう! 目が、目が!」

「ム●カ? っぶ!」


 冗談を言ってはぐらかそうとする岡崎さんの血に濡れた顔をひっ掴んで、顔を近付ける。いきなり私に顔を固定されて、まんまるになる目は一つしかない。眼窩にある筈のものが、右だけ無かった。痛そうに、ぎゅっときつく閉じられた右目の奥には質量が感じられない。だらだらと、閉じた右目から、涙の様に血が流れ続けている。まるで、私の大好きな赤い瞳が溶けてしまったかの様に。

 目だけじゃない。頭からの流血やら鼻血やらで、その顔は、あなたダース●ールですか? そういう特殊メイクなのかって聞きたくなる位に酷い。全身のあちこちに、生々しい刀傷と殴打の痕。抉られた傷口は、どこも見ても深手だ。救急隊員がやって来たら、今この場に居る三人の中で見た目で判断するなら、ぶっちぎり優勝の岡崎さんが、間違いなくまず搬送される。出血量を見ても、よく途中で倒れずに立って、歩いて走って、暴れて、を繰り返して、ここまで来られたなと思う。ここまで痛め付けられて尚も動けるのが、岡崎さんらしいといえばらしいが。


「ほんとに平気だって。んな泣きそうな顔すんな。別に両目取られた訳じゃねぇんだから。だから、そんな見ないで」

「……なに、頬染めてんですか。照れてる場合ですか!」

「う、ううううるせー! こう見えても純情なんだよ! ぴゅあっぴゅあなの! 意識しちゃうの! っい」

「お、岡崎さ……」

「いや、ちょっと、ほんと大丈夫。今のはちがう。ちょっと立ち眩んだだけだから。お前こそ、その首……」

「私より、シラユキさんと岡崎さんです。早く、早く手当てしなきゃ」


 とにかく止血の為に、何か巻くもの、巻くものを。しかし、こちらもシラユキさんの止血で手一杯だ。なんせ、私はこの身ひとつしかない。どどどどうしよう、どうしよう、と涙目のピ●レットと化した私に、シラユキさんが小さく吹き出す。岡崎さんは肩口の傷口を手で押さえながら、シラユキさんに、ひとつになった赤い目を向けた。


「……よぉ、シラユキ。派手にやられてんな」

「お互い様でしょ。ひとつめ小僧」

「誰が小僧だ、年増」

「フェミニスト集団に袋叩きにされてしまえ。……瀧島にやられたの? それ」

「あぁ」

「目玉は」

「丸ごとくり貫かれた」

「瀧島は?」


 シラユキさんの問いに、岡崎さんが沈黙する。決まり悪そうな反応で、岡崎さんは小さくため息をつき、シラユキさんと目を合わせてから伏せた。


「悪ィ」

「……」

「逃がした」


 驚愕したのは私だけだった。てっきり私は、岡崎さんが此処に居るものだから。

 報告を受けたシラユキさんは、岡崎さんから顔を背け、「そう」とだけ静かに答え、虚空をぼんやりと見つめている。


「じゃあ、私達の敗けね」


 何もかも終わった、と発言したシラユキさんに、諦念はあれど悲壮感は感じられない。それどころか、憑き物が落ちた様な雰囲気だ。

 傷口を片手で再び抑えたシラユキさんが、苦しそうに血を吐き出しながら、渇いた咳を繰り出す。急いで背中を擦り、どうしようと案を求め、岡崎さんに縋るしか結局は出来なかった。早く此処から離れないと太刀川さんが追ってくる。見つかってしまう。

 私の焦燥から全てを察し、シラユキさんの傍に腰を下ろし、刺し傷の状態と出血量を確認して、シラユキさんの身体を抱え上げようとするも、岡崎さんもまた自分の傷口が開き、苦痛を伴った表情を浮かべ、上手く力が入らない様だった。いつもと様子がおかしい。痛い痛いと言いつつも、何やかんやで、まさか重傷を負っていると思わせない、人離れした動きで、ぴょんぴょんとあちこち跳ね回っていた岡崎さんだ。

 岡崎さんの腕から、ドクドクと流れる血を見つめる。目に見えてわかる、尋常じゃないスピードの回復力、それが岡崎さんの身体の特徴だった。けれど、今だけは、それが見られなかった。なぜ、どうして。

 そうだ、まるで、今は、岡崎さんが普通の人間に見えた。無尽蔵の力を持ち、どれだけ傷つけられようとも、打ち倒されることなど有り得はしないと立ち上がってきた、頑丈を体現した男性。私のようなちっぽけな人間とは違うところに居る、そんな感覚すらあったこのひとが、今、ある意味では初めて、肉と血で動く、生身の肉体に近しく見えた。


「岡崎さん……?」

「あー、瀧島オッサンにちょっと苦戦して、調子悪ィだけ。ホラ、シラユキ。行くぞ」

「馬鹿言わないで」

「二人ぐらい、お茶のこさいさいですー。舐めんなよ」

「嘘おっしゃい。あんた、フラフラじゃないの」

「……」

「平衡感覚も麻痺してる。足元おぼつかない癖に。そんな奴に身体預けらんないわよ。共倒れがオチ」

「……ふざけんな」

「ふざけてないわよ。わかってるでしょ」


 シラユキさんが、岡崎さんの厚い胸板を押して距離を取る。負けじともう一度、シラユキさんに手を伸ばした岡崎さんの腕を、今度は強く振り払い、壁に凭れかかり、深く息を吸って、吐いてを繰り返す。

 懐から取り出した、リゼさんから預けられた岡崎さんの命を握る小型の端末。手にしたそれと岡崎さんを、いや、岡崎さんの首に掛けられた輪っかを見比べ、シラユキさんは自嘲した。

 ホルダーに取り付けられた銃を手に取り、私達の後ろに放り投げた端末を、素早く的確に撃ち抜く。何発も、弾が無くなり、引き金を引いても何も出てこず、カチカチと音だけが鳴るまで。木っ端微塵に撃ち砕かれたものは、原型を留めていない。岡崎さんの首から機械音がジリジリと鳴ったが、やがて、それは息を引き取る様に静かになった。

 岡崎さんが戸惑った様子で、首輪に触れていた。見るからに、困惑していた。

 残弾が無くなった銀銃を未練なく放り投げたシラユキさんは、顔を上げ、ゆっくりと呼吸する。


「今の音を聞き付けて、太刀川が此処に来る。血の痕を辿ってるだろうから、すぐよ。早く行きなさない」

「け、けど、シラユキさんが」

「私はもう動けない。徹也も、人一人を抱えて、ましてや庇いながら闘えるだけの余力は殆ど無い」

「でも、だからって、そんな。岡崎さん!」

「徹也。貴方が何を迷ってるのか、戸惑ってるのか、わかってる」

「……」

「いい? 徹也。貴方はもう、白鷹の人間でもなければ、誰かの命令に従うだけの奴隷じゃないのよ」


 シラユキさんは口許に笑みを浮かべ、強気な目で、岡崎さんの胸に拳を付けた。


「あんたの人生よ。これからは全部、あんたが自分で決めなさい」


 赤目が、これでもかというほど見開かれる。右往左往し始めた左目は、まるで迷子だ。小さく開閉する口は動揺を示し、与えられた自由を、どう受け止めれば良いのか、岡崎さんは困っていた。

 そんな岡崎さんを置いてけぼりにして、シラユキさんは太刀川さんに向けていた装置を新たに取り出した。

 駄目だ。それだけは。シラユキさん曰く、私を巻き込む形になってでも成し遂げようとしていたこと。それだけは、この女性ひとにさせちゃいけない。


「だめ」


 恐ろしいものを手中に収めたシラユキさんの手を包む。取り出そうとしても、シラユキさんの手は固く握りしめられ、両手を使っても、ビクともしない。


「私も、報いは受けなければならない」


 芯の通った声が、鼓膜を刺激する。


「全てを精算しなきゃいけない。私の場合、それが、きっと今なのよ。生きて償うには、もう、私の身体は限界だしね」

「やだ、やめて」

「ごめんね、シキティ」

「無理ですよ。置いてけない」

「ひとつだけでいい。信じてほしい」

「……」

「これだけは本当なの。本当に、心の底から、貴女のこと、妹みたいに思ってた」


 綺麗に微笑みながら、私にとって残酷なことを言って、シラユキさんが、愕然とし項垂れた私の手から自分の手をそっと離す。壁に背を預け、ゆっくりと大きく息を吐き、冷静に「行きなさい」と促してくる。

 無理だよ、そんなの。私だって、このひとがお姉ちゃんだったらって想像して、でも烏滸がましいことだって掻き消していたのに、掘り起こされちゃったら。ぽたぽたと、床に丸い水の痕が刻まれていく。このままではいけない。わかってはいる。けれど感情が追い付かない。


「行きなさい!」


 顔は上げないまま、いやいやと首を振り続ける私ではなく、シラユキさんは黙って私達のことを窺っていた男性に発破をかけた。

 後ろから腕を引かれ、ぐいぐいと身体が容赦なく持っていかれる。振りほどこうとしても、いくら手負いとはいえ、岡崎さんの力に私が敵う訳もない。無情にも引き摺られる様にして、シラユキさんとの間に距離が開いていく。


「い、いやだ、やめて、岡崎さん! お願い、置いていかないで! 見捨てるなんてやめて! やだ、やだぁ!!」


 岡崎さんは、もう何も言わない。こちらから見えるのは、灰色の頭と大きな背中だけだった。シラユキさんから顔を背け、私のことも振り返らない。ただただ、手を引いて、この場から離れようとしている。


「シラユキさん、シラユキさん!!」


 抵抗して、後ろに手を伸ばす。限界まで開いた掌に力が入った為、傷がよりパックリと開き、皮膚を裂く痛みを感じる。踠いてもどうにもならず、岡崎さんは強制的に私の腕を掴んで、振り返ることなく前へと足を進めていく。


「シキティ」


 欲しいものを買ってもらえず、親に駄々を捏ねる子供の様に、汚い泣き顔を晒してでも、暴れて、抗い、シラユキさんに手を伸ばし、名前を呼び続ける私を、彼女が見つめる。細長い人差し指を私に向けた。いつも会う度に、綺麗だなぁ、こんな風になれたら、と憧れた綺麗な笑みを向けて。


「よく似合ってるわ、着物それ。私よりも、よっぽど。思ってた通りね」


 絶句する私に、シラユキさんは先程とは打って変わって、無垢な少女を彷彿とさせる、解き放たれたかの様な無邪気な笑みを寄越し、告げた。


「さよなら」


 シラユキさんと私の間に隔てていた壁が崩れ落ちていく。せっかく障壁が無くなったのに、その意味を為さなくなってしまう。声が枯れ果てる声量で、シラユキさんを呼び、泣き叫ぶ私の腕を引くひとが導く先はどこなのだろう。

 痛かった。太い腕はビキビキと筋を立たせ、私の腕を捕らえる大きな手は、拷問に堪える様に震えている。此方に見せようとしない顔が、赤い目が、本当はどれだけの情を堪えているのか、どんな気持ちで私の身体を引き、彼女から離れようとしているのか、言わずと知れたことなのに。

 馬鹿だ、私。本当は一番、岡崎さんがシラユキさんを連れていきたいとわかっている。私なんかよりもずっと、岡崎さんは大事にしていた女性を、心を通わせていたひとを、好きで置き去りにする訳がないのに。

 差し迫る脅威を目の前に、立ち上がろうとしているシラユキさんの姿が完全に見えなくなるまで、一度も岡崎さんが後ろを、シラユキさんを見ることはなかった。血を吐く思いで誰かを打ち捨て、足を動かさなければならなかった岡崎さんの強さが、哀しくてならなかった。








「待ちなさいよ。太刀川」

「……触るな。その手を放せ」

「怪我を負ったレディーを無視して素通りなんて、紳士的とは言えないわね」

「死に損ないに構ってやれる程、俺ァ暇じゃねぇ」

「タダじゃあ通さないわよ。通行料、払ってもらわなきゃ」

「聞くと思うか」

「いいえ」

「放しな。わざわざ刀を錆びさせて、斬り捨てるまでもねぇ」

「お優しいのねぇ。でも、そうは問屋が卸さないでしょ。あんたにくれてやったものが、数えきれない位たくさんある。全部とは言わない。でも、その中のひとつは返してもらう」

「……」

「慣れれば、別に、これといって支障はないんだけど。やっぱり、ねぇ? あるに越したことはないもの」

「……大人しく、納戸の中に隠れときゃあいいものを」

「いつまでも、殻に閉じ籠ってるなんてことはないのよ。私も。……シキティもね」

「……」

「冥土には、親指咥えて、あんたを待ってる連中が五万といる。さっさと」

「もう堕ちてる」

「……」

「とうの昔にな」

「ほんと、反吐の出るドヤ顔。……死に損ないめ」








 逃げ惑う人々に紛れ、建物を抜け出した直後。ドン、とあちこちから聞こえていた爆音が、今度はかなり近く、真後ろから響いた。軽い地震が起きて、あちこちからパニックに陥った悲鳴が上がる。


「志紀!」


 振り返ろうとした身体は、赤い布に頭からすっぽりと完全に覆われ、目の前が真っ赤になる。私の腕を引いていた人に地面へと押し倒される。大きな身体が上から覆い被さり、きつく抱き締められる。囲いみたいだ。目の前にあるだろう肩口に、顔を強く押し付けられ、呼吸がし辛い。

 私を保護する赤い布、おそらく岡崎さんのコートに、パラパラと何かが降り注いでくる。私を抱く腕に、更に力が込められる。守るための意味合いが強いのだろうが、私には、やりきれない思いをどうしたらよいのかわからなくて、目の前にあるものに縋らずにはいられない故の行動に思えてならなかった。


「大丈夫か」


 身を起こした岡崎さんに支えられ、贈り物を開くように、やけに慎重にコートを開かれる。ただでさえ怪我人なのに、人の盾になった分、砂塵やら何やらで細かい新たな傷を作っていた。岡崎さんの方が大変だと言っているのに、一切頓着せず、それよりも、と私の身体をくまなく確認してくる。岡崎さんが庇ってくれたお蔭で、私はほんの少しの砂埃で済んだ。なのに、多少の怪我すらも許せないらしく、痛ましい表情で、私の頬についた汚れを拭ってくる。

 あちこちからあがる悲鳴に、縦横無尽に散り散りになって逃げる人々。私たちがさっきまで居た建物を振り返ると、そこにはもう、静謐とした和の風情など跡形も残っておらず、木造ということもあって、爆発の影響で轟々と燃え盛り、あちこちが崩れてしまっている。肺に良くないだろう砂塵が吹き荒れていた。


「行くぞ。まだ崩れる」


 パキパキと怪しい音が鳴り続けている。赤い炎の揺らめきと黒煙が立ち上る様から、まだまだ燃え盛ることは見てとれる。火はどんどん広がり、最後には恐らく全焼する。


「志紀」


 全てを燃やし尽くさんとする光景を、言葉なく、呆然と見つめていた私の正面に立った岡崎さんが、目線を合わせる為に少しだけ屈み、両肩に手を添えた。


「此処は危ねぇから。な」


 小さい子供を諭す、優しい声色。安心させようと同じ目線に立って、一緒に歩こうと促す。

 どっと襲ってきた喪失感から、勝手に出てきた涙を岡崎さんが指で拭う。シラユキさんの着物を太股辺りでぎゅうと握り、顔をくしゃくしゃにし、嗚咽して、ぐすぐすと鼻を啜る私を抱き寄せたのは岡崎さんしか居なかった。筋肉質な胸板に顔が強く押し付けられ、ちょっと息苦しい。後頭部をしっかりと大きな手で包まれ、顔を上げることはおろか、身動きひとつ出来ない程きつく抱擁、いや拘束されている。

 でも本当は、自分が今どんな顔してるか、見られたくないんだろうな。意地っ張りで、強がりで、内にある弱さを見せることに臆病になってしまうひとだから。

 シラユキさんまで喪って、こんなにも寂しくなったひとを置いていこうとしている私は、なんて酷い奴なんだろう。それを口に出したら「本当だよ」とここぞとばかりに引き留められそうだ。

 だからこそ、シラユキさんに、岡崎さんの隣に立っていて欲しかった。どんな形だって構わないから。大事な人たちが寄り添って、今までの分を、ずっと、幸せにとは赦されないまでも、せめて支えにして、穏やかに生きてほしかった。

 ゆっくりと身体が離され、未だにボロボロと涙を流す私の頬を、岡崎さんが慰める為に撫でる。悲鳴の渦の中を、岡崎さんが私の手を引いて歩いていく。道標は自分だと言わんばかりに。

 こんなところで俯いて、立ち止まっちゃいけない。シラユキさんに背中を押された気がした。

 渡月橋の向こうにある嵐山は、もはや戦場、紛争地と成り果てていた。先程から立て続けに鳴っていた爆発音と地鳴りは、抗争によるものだった。古い歴史が受け継がれる建造物からあがる黒煙と火花、聞こえてくる罵声と銃撃、刀がぶつかる音でわかる。

 橋の向こうは特に激戦区だ。けれども、此処を渡らなければ、目的地である天龍寺には辿り着けない。そのまま羽織っていろと言われた岡崎さんのコートを握り締める。

 急がなければ、と何かに追われている心持ちなのは岡崎さんも同じだった。何か、というよりは、誰かさんと言った方が正しい。岡崎さんも私も、口にはしないけれど、確信があった。

 妙な話だけれど、彼の執念に対しては、確たる信頼があった。あのひとは、きっと追いかけてくる。どれだけの修羅であろうと、形振り構わず、道無き獣道を知ったことかと、無理にでも突き進んでくる。これで終わるとは思えなかった。だからこそ、少しでも急ごうと、それでも私の足を考慮して、岡崎さんは小走りに留めている。


「辛くなったら、すぐ言えよ。おんぶしてやるから」

「そ、そんな余裕無い癖に。岡崎さんこそ、そんなに息切らして」

「バッカ、お前、これあれだよ。アップでちょっと張り切りすぎたんだよ。本番前に気合い入れすぎてバテた小学生みたいなもんよ。いや、イケるイケる。どうってことねーし。だって、俺頑丈だし」

「フラフラしてる。真っ直ぐ歩けてない。やっぱり、目が」

「慣れてねぇだけだって」

「岡崎さん。傷の治り、いつもより遅くないですか」

「気のせいだって。お前の岡崎さんは、いつもガッチガチよ。鋼鉄の身体よ。何回も俺の修羅場バン●シャしてるだろが。パパラッチしてるだろうが」

「何回も見てるからこそですよ」

「い、いやいや、マジで。大丈夫だって。ほんと」

「お願い、岡崎さん。誤魔化そうとしないで。ここまでで大丈夫だから」

「どの口がもの言ってんだ。現実問題、無理に決まってんだろ。俺が居ないと、お前」

「貴方のこれからは始まったばかりなんです」

「……」

「今までとは違う。自分のことを蔑ろにしないであげて」


 岡崎さんは、やはり頑固だ。ちっとも振り向かない。聞こえない振りをして、私を見ることもなく、だんまりを決め込んだ。今の今までお話ししてたのに、どこぞの主人公よろしく、都合のいいときにだけ難聴になる訳無いでしょ。私、貴方がとんでもない地獄耳だってこと、よく知ってるんですけど。それでも、橋を渡り切る前に言っておかなければならない。岡崎さんにとって、耳を塞ぎたくる内容であっても。


「橋を渡ったら、私は真っ直ぐ天龍寺に向かいます。岡崎さんはまだ動ける今のうちに、京都を出てください。病院行って、ちゃんと治療してくださいね。貴方なら、どこかしらに診てくれるツテがあるでしょう? 心配しないで。ドンパチしてるところは避けて通ります」

「……」

「大丈夫。私、元来モブ気質だから、存在感消すのは得意なんですよ。そりゃあ、志紀センサーついてる人には難しいかもだけど、私のこと知らないひと相手なら、きっと」

「やだ」

「やだ……って、そんな」


 子供みたいな言い方、幼児返り? と思っても口には出さない。


「なんで、そんな簡単に割り切れんだよ。あり得ないんですけど。薄情過ぎねぇ? 普段のマイナス志向のメンヘラ志紀ちゃんはどこ行っちゃったの。そろそろ恋しくなってきちゃったんだけど。あのメソメソ感、意外にクセになんだよね。お留守なの?」

「……実家に帰ってます」

「……アッソ」

「……」

「もっと惜しんでくんねーかな」

「惜しんでます」

「は~、よく言うわ。だったら、離れたくないです~って、いつもみたいに鼻水と涙汚くドバドバ流してすがれよ。そしたら、俺、遠慮なく浚ってくのに。全然そんな気ありませんって面して、ベラベラベラベラ……道徳の教科書かよ。そんな逞しくならなくていいんだよ、志紀は」

「……」

「ほんとさ、なんか、岡崎さんと刺青野郎への対応に差有りすぎじゃない? 毎度毎度、お前わかってないみたいだから、しつっこく言うけど、俺のこと好きって言う割には、全然贔屓してくんないしさ。なに? キャップ制でも採用してんの? 岡崎さんへの想いには上限ついてんの? こっちにはレベルマさせといて」

「……」

「本当のギリギリまで一緒に居たいって、思ってんの俺だけかよ」


 つらつらと私に投げられる言葉には、怒気が含まれていた。どうして? という疑問も。このひとは、あまりにも連続して、何をしてでも守りたかった人達を一気に無くしすぎた。

 怯えている。ひとりぼっちになってしまうことを。置いていかないでって、身体だけは逞しくて大きい立派な男性が、強がりな言葉で覆った言葉ひとつひとつに虚勢を張りつつも、なんとか私を引き留められないかと足掻いてみせている。岡崎さんは私から、「貴方とずっと一緒に居たい」と言質を取りたいのだろう。どこかの誰かさんと、手法が同じ。


「やっぱり、似た者同士……」

「あ?」

「いえ」

「……」

「私も、岡崎さんと同じ気持ちか、それ以上ですよ。というか、ぶっちゃけちゃうと、私の方が重いんじゃないかな。あ、今、嘘こけって顔したでしょ。見なくってもわかります」

「ししししてねーもん。つか、お前の方がクソデカ感情とか、そんな訳ないわ。それだけは絶対ない。中盤辺りから、もう一回読み返してみろよ。天地ひっくり返っても、あり得ねぇわ。読者全員満場一致で、それはねーわって突っ込んでくるわ」

「それは私のことを侮りすぎです。私だって」

「いーや。俺の方がでかいし、深いね。タイ●ニックよりも海底にあるもん。沈んでるもん」

「いえいえ、絶対私です。私なんか、海底をも越えて、ブラジル突っ切ってますから。コンニチワしてますから」

「あぁ!? だったら俺は宇宙だよ、スター●ォーズだよ! いつだってダークサイドに堕ちる覚悟は出来てますけど!? おたくが好きなジェ●イより、俺はシ●の考え方の方がめったくそ共感するし!? 俺達の障害になるモンは全部薙ぎ払うから、俺と一緒に銀河を支配しませんか!」

「スケールが多すぎる。無理ですよ。流石に宇宙は背負えない。チョ●レート工場経営で手を打ちましょうよ。ね、チャー●ー」

「誰がチ●ーリーだ。世界観違いすぎるだろ」

「散々殺伐とした世界を生きてきたんです。今後は、甘いチョコに囲まれて溶かされる位の生活が岡崎さんには丁度いいですよ」

「……チョコは志紀?」

「……だったら、嬉しかったんですけど」

「……」

「ねぇ、岡崎さん。私、岡崎さんのこと」


 頑なにこちらを振り返ろうとしない背中に語りかけようとしたが、目の前の岡崎さんが急ブレーキをかけたお蔭で、大きな背中にごっつんこし阻まれる。鼻が潰れた。いたいなぁ、と低い鼻をさすると、痛々しい怪我(どころではない)を負った岡崎さんが、眉間にこれでもかと皺を集中させ、下唇を噛んだ状態で私を見下ろした。

 欲しいものがあるのに駄目と言われて、なんで、どうして、とガマンを強いられる幼子の顔。泣きそうだ。

 灰色の髪は血に濡れてしまっている。深みのある赤い瞳は、1つになっても、その眼光は鋭く、印象的だった。外は強固で頑丈に見えるのは、その中身を強がりで隠そうとしているだけ。一度開くと、ふわふわに柔らかくて、壊れ物注意の張り紙を貼っておいてあげないといけない危うさ。

 何が善くて、何が悪いのか、その判別も、実のところは、周りを見て真似て、ひとつずつ覚え始めているだけなんだと思う。ありとあらゆる大人の男性の嗜みは網羅しているのに、赤ちゃんみたいなところがある。シラユキさんがくれた自由に戸惑い、どうして生きていけばいいのか、途方にくれている。私の手を引いているけど、本当は引っ張ってほしいんだろう。


「カッコ悪い、往生際が悪い、未練がましい。何て言われても、もう知ったこっちゃねーわ」

「……」

「俺が諦め悪ィってのは、お前もよく知ってるだろ」

「うん、知ってます」

「……」

「そんな貴方を、貴方達を傍で見てきたから、何度も自分が情けなくなって、私も前を見なきゃって思えたんですよ」


 極端なやり方は駄目ですけどね、と付け加える。自分の足で進む勇気を、貴方が一番に私に教えてくれたと言えば、岡崎さんは苦虫を潰した様な顔をする。いつもみたいに「そうかそうか、もっと俺に感謝し奉れ」とか言って、胸を張ればいいのに。

 岡崎さんは一人ぼっちじゃない。この人の真髄を知ってても、知らなくても、暖かく迎え入れてくれる場所はいくらでもある。岡崎さんは気付いてないかもしれないけど、紛れもなく、それを築き上げてきたのは岡崎さん本人だ。取り繕った紛い物の自分だからと辟易しているけど、それでも岡崎さんは居場所を造り出した。それってすごいことなんだよ。少なくとも、私には難易度が高くて、皆に囲まれて歩く岡崎さんに、羨望や嫉妬を抱いたことがある。私も、あんな風になれたらって。

 ポタポタと、滴が頬に当たる。見上げると、夕暮れの空が泣いていた。春驟雨はるしゅううだ。鮮やかな暖色からポタポタと、始めは控えめに、徐々に水量が増していく。橋の先で燃え盛る嵐山を濡らしていく。夕陽に照らされていた渡月橋が、雨によって本来の煌めきを取り戻していく。

 ギャア、と誰かの断末魔が後ろから聞こえた。私を切なげに見下ろしていた岡崎さんの表情が、一瞬で警戒の色に変わる。私の背後を残る赤の瞳で睨み付け、私の手を引いて、自身の後ろにつけて左手で庇う。岡崎さんの背中から来た道を振り返ると、息が一瞬止まった。

 橋の三分の一を渡ったところまで、彼は迫り寄っていた。今しがた斬られたばかりの、通りすがりなのか、それとも私達を追ってきた天龍組あるいは白鷹組の使いか、名も知らない誰かの首無しの身体がゆっくりと倒れる。その後ろから、首を落としたばかりの赤い血液が滴る刀を携えた人物が、ゆらりと姿を見せた。

 上半身の着物は爆発の影響で焼け落ち、鍛え抜かれた体を取り巻くように刻まれた蒼い刺青を、惜しみ無く晒している。焼かれた龍が、その肉体に収まらない怒りを滲ませ、隠すことなく、私達を憎々しげに睨み付けている。

 無意識に、口を手で覆う。駆け寄りたくなる衝動を、必死に堪えることが出来た自分を誉めたい。

 何度も、私を苦しくなるほど囲い、きつく抱いた腕がひとつ足りない。止血も為されず、断面と言える傷口からはボタボタと大量の血が流れている。肩口から先の右腕を喪った身体は、不安定ながらも歩みは進めている。

 その姿に、シラユキさんが重なる。彼女は彼女なりのやり方で、太刀川さんに一矢報いたのか。

 傷を負った頭部から血を流し、煤や破片などで傷付き、汚れた顔についた鋭い青の瞳の強さは変わることなく、寧ろ闘志を燃え滾らせていた。瞳孔は開き切っており、正気とはとても思えない色をした目は血走り、完全に据わっている。

 残る左手に、血を被ってもなお、妖しげな美しさのある青の刀身を携え、岡崎さんの背後に隠された私の姿を捉えた。一歩一歩を確実に踏みしめて近付いてくる。彼の背後では火の海が広がり続け、耳を塞ぎたくなる悲鳴があちこちから響き渡る。あのひとが通ってきた道は地獄を造り出し、阿鼻叫喚を遺していくのだと、可視化されていた。


「太刀川」


 静かに、岡崎さんが彼の名を呼ぶ。けれどシラユキさんの自身を犠牲にした爆発による影響で聴覚が麻痺しているのか、理由はなんであれど、岡崎さんの声は太刀川さんの耳には届いていない。

 彼は、身体の火傷による痛みも、片腕を失った喪失感に苛まれることなく、ただただ歩みを進めていた。延々と同じことを、ひとり呟きながら。私の姿を自身の背中でより隠し、岡崎さんが韓紅の鞘に収まる刀の柄を握り、ゆっくりと歩いてくる太刀川さんを身構えた。


「オイオイ、ガワもやべぇけどよ。すげぇ顔色だぞ、お前。死人が歩いてるたいだ。ウォーキング●ッドのコスプレ? ハロウィンにゃ、まだはえーんじゃねぇの」

「かえせ」

「つか、メッチャ目ェやべぇけど、お前、草キメたか?」

「返せ」

「太刀川。聞こえてんだろ。なぁ」

「返せ」

「信じたくねぇけど、お前は普通の人間なんだろ。そのまま放っとくと、マジで死ぬぞ」

「俺のものだ」 

「……」 

「返せ」


 深海の如く、暗く青く濁った瞳は、もはや狂気的だ。この人が一番、私たちのなかで沈みきっていた。

 常人ならばとっくに倒れ、命尽きている様な重傷ぶりなのに、散々岡崎さんのことを化け物だなんだと罵っていたけれど、正直、太刀川さんだって、人のことを言える口ですかって突っ込んでみたくなる。歩んできた途に赤黒い血痕を遺し、今にも倒れそうな身体を揺らし、苦しいだろうに、息を荒くしてでも、目的のものを掴み取らんとしている。


「返せ」


 話が、通じない。

 岡崎さんは「あーもー、クソッ」と毒づき、大きく溜め息をついて、私の前から一歩二歩踏み出した。ぎゅうと刀の柄を握りしめる岡崎さんの手は、震えを誤魔化す為か筋張っていた。岡崎さんの後ろ姿を見つめる。


「結局、同類なんだよな」


 吐き捨てる様に呟いた岡崎さんもまた、太刀川さんを目の前にして、内に溜まりに溜まった怒りを隠しもせず、太刀川さんから目を離さないでいる。今にも太刀川さんを斬る為に懐に飛び込もうとする自分を必死で戒めていた。牙を剥き出しにして唸る獣だ。

 岡崎さんも太刀川さんも、互いの存在が引き金となって、摘み取られた命が多すぎた。

 もうこれ以上は、奪われてなるものかという思いも。

 夕焼け色に染まる空から降り注ぐ雨粒が、私達を打つ。轟々と燃え上がる嵐山を、そして、怒りと憎しみに駆られ、互いの首を噛み千切らんと対峙する狼と龍を、慰めるみたいに。



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