国を割る姫  避けていた宿命が向こうから飛び込んで来るなんて想定外!

枝豆

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バイセンシャンの山荘

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将軍となったディバルには城内に1つの屋敷と少し離れたバイセンシャンにある山とそこにある山荘が下賜された。

ディバルは城に常駐し、山荘には家族が住む事になった。
家族と言っても戦火で妻を喪っているディバルには娘しかいない。
あの「国を割る」と言われたリーエンだ。

元々その山は皇族用の狩場で、そこに一宿する為の山荘であった。
リーエンはその山荘でほぼ軟禁に近い生活をする事になった。



「うーん、よく寝た。」
朝の日差しを浴びてリーエンは大きく伸びをした。
乾燥地帯のサルザックに比べて、緑豊かなこのバイセンシャンは特に朝の空気がしっとりと爽やかで心地が良い。

「お目覚めですか?リーエン様」
側小姓のセイが手桶を持って部屋に入ってきた。
「おはよう、セイ。今日は何をして過ごそうかしら。」

濡らした布巾で顔を拭きながらリーエンはセイに気安く話し掛ける。

この山荘に篭って約ひと月が経つ。それなりに暮らし振りが落ち着くと、ひたひたとリーエンを襲ったのは、紛れも無い「退屈な日々」だった。

サルザックでは戦況にもよるが比較的自由にあちこちへと出掛けて過ごしてきたリーエンにとって、この山荘に閉じ込められる暮らしは退屈でしか無かった。

「…街には出られませんよ。」
「…わかってるわよ。」

自分の立場はわかっている。
「国を割る不吉な姫」と占われてしまったが為に、父の処遇にまで影響が出たことを知らないわけでは無い。
ようやく皇帝陛下のお膝元で、殿上人になった父の出世の足を引っ張るわけにはいかない。

成人まであと僅か。それまでここで大人しく過ごし、その後どこかに嫁に行くか、どこかに居を構えるか、落髪さえしても良いかとさえ思った事もある。
父と縁を切れさえすれば、もう憂う事もなく父も私も自由になれる。

もっと早く見限ってくれていても良かったのに…。
そう思う気持ちが半分。
それでも父子の縁を文字通りに命懸けで守り抜いた父への感謝が半分。

だからこそ、大人しくこの山荘で長い1日を過ごしている。

昨日は書を書いた。一昨日は琴を弾いた。
天気も良いし、外に出たい。

「…馬くらい乗っても良いかしら?」
「…良いと思いますよ。」

ここは元々狩場と聞いている。つまりは人里離れた場所で、敷地は山ひとつ。住んでいるのは獣か妖怪の類くらいに違いない。
「誰かに会わなければ大丈夫よね、きっと。」
身勝手にそう思い込む事にリーエンは決めた。

山荘をぐるりと取り囲む柵がようやく完成したばかりだ。
ここにいるのはリーエンとセイ、後は警備にと父が置いて行った兵士が数人だけ。
もし柵を乗り越えて入ってきた人がいても、まさかそれに文句を言われることもないだろう。

「…門を閉じて、とリュウに伝えておいて。今日はエンと野駆けをするわ。」

リーエンはセイにそう告げた。
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