国を割る姫  避けていた宿命が向こうから飛び込んで来るなんて想定外!

枝豆

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奥宮大夫

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ひと月はあっという間だった。月の道は未だ来ない。しかし懐妊を確かめる事も出来てはいない。
元々ひと月では無理だったのかもしれない。
父は「孕んだリーエン」を奥の宮に入れることを決めた。
今度はジンシも反対はしなかった。


私が奥の宮に入った時、出迎えたのは総役だという奥宮大夫という婦人だった。
口元は和かに、しかし氷った冷たい視線で値踏みする様な視線が怖い。

案内されたのは、最奥の中庭を囲む廊下に面した一室。
調度品は少なくガランとした部屋だった。
持ち込んだ長持が一番手の込んだ品に見える。
側女の部屋とはこんなものなのか?と思ったが違った。
「不服そうですね。」
「いえ、そういう訳では…。」
「フーシン殿をどのように丸め込んだかはわかりませんが、将軍の娘とはいえ、手順は踏んで頂きます。」

この部屋は小姓の為の部屋だそうだ。
皇太子のお手付きとなれば、側女の棟に部屋を与えられ、懐妊したら宮が与えられる、そう説明された。
もちろん冒頭に、
「要らない説明かとは思いますが、」
としっかり付いた。

「明日、一応の医師の診察を受けて頂きます。それまでは部屋から出ない事。
夕餉はこちらにお持ちします。その後湯浴みなさいませ。」

ごゆっくり、大夫はそう言い残して部屋から去った。
ごゆっくりと言われなくても出来ることはない。
話し相手さえいない。

セイを連れて奥入りするはずが、門前でセイは払われた。
共に来てくれたフーシンが、
「フェイ殿下のお召しだ。」
とまで間に入って取りなしてくれたけれど、奥宮大夫には認めさせることは出来なかった。

チッ、女の虐めは既に始まっている様だ。

「ここで争ってもムダです。」
とりあえず私の方が折れた。
セイには父の屋敷に戻ってもらう事になった。

フーシンは奥宮大夫に
「殿下の不興は覚悟せよ。」
と捨て台詞を吐いたが、
「新参者には関係ない。」
と相手にもして貰えない。
どうやらこの宮でフーシンは軽めに扱われているらしい。

部屋に1人になると、どこからかリンが姿を現した。
「明日にはセイが入れるようになります。しばらくご辛抱下さい。」
「…ありがとう。」

わざわざ姿を現してくれたのは私の不安を感じてくれたからに違いない。

「これを、ハルから預かりました。」
渡されたのは小さな箱。綺麗な飴がぎっしり詰められている。
ハルではなく、ジンシからの物だろう。

「大切に食べるわ。」
と言いながら、リンに差し出した。
「お裾分け。おひとついかが?」

リンは驚いて、だけど嬉しそうに一粒摘んで口に入れた。
「…美味しいです。」
ホント美味しいわね、とリンと見つめあって笑う。

「いつもお側におりますから。」
と言ってくれるリンの言葉に涙が出そうだ。

「…ありがとう。頼りにしてる。」
心からリンにそう告げた。
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