国を割る姫  避けていた宿命が向こうから飛び込んで来るなんて想定外!

枝豆

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国師フキ

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奥宮大夫が去った後、程なくして部屋を訪れる者があった。

戸1枚で区切った部屋で、逃げようがない。
「失礼致します。」
こちらの返事も待たずに戸を開いて入ってきたのは、奥宮では少し浮くだろう、緋色袴姿の品の良い老婆だった。耳から垂れ下がる金の輪がシャラシャラと音を立てる。

「国師フキにございます、姫、おかえりなさいませ。」
老婆は歳に合わず透き通った声で、意味不明の言葉を紡いだ。

…この人が…。
私を「手折れ!」と言った占い師だ。

「おかえりとは?」
「16年ぶりに都へ戻ったのでしょう?おかえりですわ。」
と笑った。

「そんなに睨まなくても。」
どうやら無意識で睨みつけていた様だ。
「それは…当たり前です。」
コロコロっとフキはまた笑った。
「姫さまは私を恨んでおられるようだが、それはお門違いです。わたくしはペテンではなかった、何一つ間違ってはいない。」

そうでしょう?と視線で訴えられた。
リーエンは黙り込んだ。

…確かに。
「国を割る不吉な姫」一言も間違ってはいない事を、今の身には染みてよくわかる。

「赤子の先読みは無限に広がる道の一番太い筋道を口に出します。そこに繋がる道を選ぶ者もいれば、選ばない者もおります。
どう選んでもそこへ至る道もあればひとつ選び間違えれば至らない道もあります。

あなた様の道はどれを選んでも至るところはひとつの道でした。避けるとするならば手折るしかなかった。
帝が手折るなと思し召したとき、既にあなた様の道は決まってしまったのです。」

サキの表情には怒りも憂いも、ましてや悦びもない。
ただ見えたものを淡々と口にしただけだった、と言っている。

「御用は?」
「聞きたいことがあればお答えしようかと思いました。」

しばらく考えた。国師に聞くとしたら先読みしか無い。

「国はどうなりますか?」
「既に割れました。」
「私のせいだ、と?」
「あなた様の道ではありません。あなた様を選んだ者の道です。」
「ジンシ様…の、ですか?」
「違います、龍の皇子ではなく郭公カッコウの皇子の道です。」

龍でなければあとは1人しかいない。
「郭公?鳳ではなく?」
「はい、郭公です。
帝にも郭公だと言うたのに、鳳を与えてしまわれました。手折れと言いましたのに…。」

「私を選んだ?ジンシではなく…フェイが?」
「ええ、あなた様は破滅への道標でした。選ばれた以上、道はひとつでございます。
後は憂う必要も悩む必要もないし、抗っても無駄でございます。ただ生きて願えば与えられる、割れるのも一時の迷い、と申しておきましょう。」

ずずっとフキの手が伸ばされてリーエンの腹を摩った。
ゾワっと身体に身震いが走る。
「少し喋り過ぎました。御身を大切になさいませ。
では1年後に、また。」

それだけ言うとフキは部屋を出た。

与えられた言葉に押し潰されそうになって、リーエンは見送るどころかしばらく動くことさえ出来ないでいた。

「リン…。」
コトっ。
「どうしたらいいかしら。」
口に出してから気付いた。二択でなければリンは答えられない。
「何かすべき?」
コトっ…コト。
「…そう、わかった。」

なるようになる、なるようにしかならない、きっとそう言う事だ。
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