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鳳の羽を纏う龍
籠る
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今一度、奥の宮に戻ったリーエンは、ただただ部屋に篭っていた。
セイは山荘に行ったっきりだ。
山荘には今はホンとなって生きるかどうかを問われているフェイがいる。
目覚めた時にいた女官はシーレンという、ジンシが幼い頃に身の回りの世話をしていた子守だったご婦人だという。
ずっと龍の宮で女官長をしていたが、先の朱病騒動で一旦閑職に追いやられていた。
ハンジュ様がお亡くなりになってから、ジンシをずっと母のように見守っていらした方。
ジンシが信頼を置いている人をそのまま私に預けてくれた、それだけでも嬉しかった。
しかし、それはそれ、これはこれだ。
不安で押しつぶされそうだ。
「琴でもお弾きになりますか?」
「珍しいお菓子が手に入りました。」
甲斐甲斐しく世話をしてくれるが、その全てに首を横に振った。
次々に知らされる訃報にリーエンの気はどんどんと滅入るばかり。
帝がご崩御となり、たくさんの臣下や兵が後追いをした…事になっている。
正真正銘、正殿の火災で死んだ者も含めると、とてつもない数になる。
その数が増える度にリーエンは唇を噛んだ。
事がハッキリするまで奥の宮の者達は下働きさえも宮に留まるように言われている。
どこに誰がいて、誰がいないのかをしらみつぶしに調べるためだ。
まだ、行方がわからない者も幾人もいる。
騒動に紛れて出奔してしまった人もいる。
その中でリーエンが知る人は3人。
奥宮太夫、その娘側女のスーチー様、そして国師フキ。
帝の葬儀を行われねばならないのに、祭司となる国師が行方知れずなのである。
「フキ様まで…。」
フキ様は「郭公は見る価値がない。」
と言い切ったという。
この先フェイとなるジンシもまた見る価値が無いと言われてしまったら…?
姿がない事が良いのか悪いのか、それすらもわからなくなる。
そして同時に今、ジンシは他の奥の宮を回っている。
ソニア様とチェン様…。
蔑ろにされていたとはいえ、まがいなりにもフェイの近くにおられた方々である。
もし暴露されてしまえば…。
ジンシはもう誰にも死は与えない、と約束してくれてはいる。
しかしそれも悪戯にフェイの本性を騒ぎ立てなければの話。
鳳の宮にいたフェイの近習や小姓はフーシンが、それこそ踏み絵を踏ませるように寄り分けている。
納得して出来ないものはさらに寄り分けられる。
郷に帰されるものは、口を噤む者だ。
口外してしまいそうな人はそのまま据え置かれる。
二度と帝に侍る事はない。
…飼い殺しだ。
どうか…どうかわかって欲しい。
皆を謀るつもりは微塵もない事を、ただ平和なリュウジュであるための、苦肉の策である事を、わかって欲しい。
夜になり、フェイ様の寝室に向かう。
厳重に閉じられた窓や戸。
幾重にも帷の掛けられた寝台で、フェイ様は座って待っていた。
「お待たせしてしまいました、申し訳ないありません。」
「…いや、構わない。」
こちらを見て、手を広げられる。
スポッとその腕の中に座り込んだ。
変わらない人の温もりにホッとしてしまう…。
「…辛い。」
ポロッとこぼした愚痴…。
…だろうと思う。
漏れ聞くだけの私でさえ、辛いのだから。
「何かございました?」
「ソニア様はここに残る、と。」
「…そうですか。」
「フェイと約束を交わしていたそうだ。後3年半ここで暮らす。そうすれば国の者達も諦めるだろうから、子ができない女として、どこぞに放免してくれと。」
フェイ様はアナン様の宮にいた者の子は抱けない、と言った。
血の繋がりを懸念されたのだろう。
兄妹かもしれない…そう考えただけで抱けないのだ。
ただソニア様だけは外国から嫁がれた方だったからそれに当てはまらない。
もしかしたら…ソニア様は別だったかもしれないと淡く思っていたけれど、やはりそうではなかった。
「ソニア様を独りであの宮で過ごさせる事になる。子が出来ない女となれば、誰かに下賜してやる事も出来ない。」
3年半だけじゃない。
この先皇妃として、孤独な生涯になる。
「私が参りますよ。女同士分かり合えることもあるかと思いますから。」
「…すまない。」
「謝らないで。」
私達は共にそのまま罪を背負う、その覚悟はある。
「ありがとう、の方が嬉しいわ。」
ニッコリと笑ってみせた。
「それにね、私だってお友達欲しいもの。」
…これは正直な気持ち。
私だってこの宮で暮らしていかなくてはならないのだ。
セイは山荘に行ったっきりだ。
山荘には今はホンとなって生きるかどうかを問われているフェイがいる。
目覚めた時にいた女官はシーレンという、ジンシが幼い頃に身の回りの世話をしていた子守だったご婦人だという。
ずっと龍の宮で女官長をしていたが、先の朱病騒動で一旦閑職に追いやられていた。
ハンジュ様がお亡くなりになってから、ジンシをずっと母のように見守っていらした方。
ジンシが信頼を置いている人をそのまま私に預けてくれた、それだけでも嬉しかった。
しかし、それはそれ、これはこれだ。
不安で押しつぶされそうだ。
「琴でもお弾きになりますか?」
「珍しいお菓子が手に入りました。」
甲斐甲斐しく世話をしてくれるが、その全てに首を横に振った。
次々に知らされる訃報にリーエンの気はどんどんと滅入るばかり。
帝がご崩御となり、たくさんの臣下や兵が後追いをした…事になっている。
正真正銘、正殿の火災で死んだ者も含めると、とてつもない数になる。
その数が増える度にリーエンは唇を噛んだ。
事がハッキリするまで奥の宮の者達は下働きさえも宮に留まるように言われている。
どこに誰がいて、誰がいないのかをしらみつぶしに調べるためだ。
まだ、行方がわからない者も幾人もいる。
騒動に紛れて出奔してしまった人もいる。
その中でリーエンが知る人は3人。
奥宮太夫、その娘側女のスーチー様、そして国師フキ。
帝の葬儀を行われねばならないのに、祭司となる国師が行方知れずなのである。
「フキ様まで…。」
フキ様は「郭公は見る価値がない。」
と言い切ったという。
この先フェイとなるジンシもまた見る価値が無いと言われてしまったら…?
姿がない事が良いのか悪いのか、それすらもわからなくなる。
そして同時に今、ジンシは他の奥の宮を回っている。
ソニア様とチェン様…。
蔑ろにされていたとはいえ、まがいなりにもフェイの近くにおられた方々である。
もし暴露されてしまえば…。
ジンシはもう誰にも死は与えない、と約束してくれてはいる。
しかしそれも悪戯にフェイの本性を騒ぎ立てなければの話。
鳳の宮にいたフェイの近習や小姓はフーシンが、それこそ踏み絵を踏ませるように寄り分けている。
納得して出来ないものはさらに寄り分けられる。
郷に帰されるものは、口を噤む者だ。
口外してしまいそうな人はそのまま据え置かれる。
二度と帝に侍る事はない。
…飼い殺しだ。
どうか…どうかわかって欲しい。
皆を謀るつもりは微塵もない事を、ただ平和なリュウジュであるための、苦肉の策である事を、わかって欲しい。
夜になり、フェイ様の寝室に向かう。
厳重に閉じられた窓や戸。
幾重にも帷の掛けられた寝台で、フェイ様は座って待っていた。
「お待たせしてしまいました、申し訳ないありません。」
「…いや、構わない。」
こちらを見て、手を広げられる。
スポッとその腕の中に座り込んだ。
変わらない人の温もりにホッとしてしまう…。
「…辛い。」
ポロッとこぼした愚痴…。
…だろうと思う。
漏れ聞くだけの私でさえ、辛いのだから。
「何かございました?」
「ソニア様はここに残る、と。」
「…そうですか。」
「フェイと約束を交わしていたそうだ。後3年半ここで暮らす。そうすれば国の者達も諦めるだろうから、子ができない女として、どこぞに放免してくれと。」
フェイ様はアナン様の宮にいた者の子は抱けない、と言った。
血の繋がりを懸念されたのだろう。
兄妹かもしれない…そう考えただけで抱けないのだ。
ただソニア様だけは外国から嫁がれた方だったからそれに当てはまらない。
もしかしたら…ソニア様は別だったかもしれないと淡く思っていたけれど、やはりそうではなかった。
「ソニア様を独りであの宮で過ごさせる事になる。子が出来ない女となれば、誰かに下賜してやる事も出来ない。」
3年半だけじゃない。
この先皇妃として、孤独な生涯になる。
「私が参りますよ。女同士分かり合えることもあるかと思いますから。」
「…すまない。」
「謝らないで。」
私達は共にそのまま罪を背負う、その覚悟はある。
「ありがとう、の方が嬉しいわ。」
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「それにね、私だってお友達欲しいもの。」
…これは正直な気持ち。
私だってこの宮で暮らしていかなくてはならないのだ。
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