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不甲斐ない男
駆け引き
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奥の宮の全ての権限は、奥宮大夫シェンが握っている。
だからティバルの娘を宮に入れるにはこの大夫を陥さなくてはいけなかった。
「新参者がなんの用だ。」
警戒心を隠さない大夫にフーシンは直球を投げた。
「ティバルの娘を皇太子が所望されました。」
「要らぬ!」
「何故?」
「スーチーが先だ。」
「私情を挟むと?」
「違う。物事には順序がある。」
「ならばソニア様でもチェン様でも良いのでは?」
「ダメだ。スーチーが先だ。」
「順序と申すのならば、ティバルを囲い込む方が先なのではないですか?」
「はっ!?何を言い出す。政は奥の宮に関わりはない!」
「本当にそう思われますか?」
悔しそうに大夫は歯を食い縛る。
…珍しい。無表情の鉄面皮の大夫の感情が面に出てきている。
追い詰められ始めているのを実感しているのだろう。
…おそらくジンシが隠されたことで計画が綻び始めている。
「まずは足元を固めて、憂いなく子作りに努めさせれば宜しいのでは?」
あえてフェイを下げた言い方をし、話を固めていった。
きっとコイツも同じだ。
娘に次帝を産ませ、国母の母となり口を出したいのだろう。
フェイを通して好き勝手にしている男達の様に、孫を通して好きにするつもりに違いない。
「新参者が偉そうに!」
「ええ、新参者です。新参者だからこそ見えるものもやれることもあります。
フェイに貸しを与えてはいかがか?フェイの些細な望みひとつ叶えることで、足元を固められるならばお安い。
どうせティバルの娘が入ってもしばらくは蟄居の身。ひと月とは言わず、半年でも1年でも蟄居させれば良いではないか。
スーチー様が身籠られるまで、それを解く任はあなたにある、違いますか?」
大夫の目が光った。
きっと素早く計算してしているのだろう。
そうだ、ティバルの娘が輿入れするのは随分先、しかも月の物が来るまでは蟄居、その間にスーチーに手がつけばそれでいい。
宮に入ってしまえば、その身はティバルには人質、大夫にとっては手駒のひとつだろう。
…どうか騙されてくれ。焦れば焦るほどに愚を犯すのだ。
「このフーシンが近習としてフェイに取りなそう。
お約束する、必ずスーチー様に宮を与えてみせましょう、と。」
「…お前にそんな力はない。」
「いえ、ありますよ。私はフェイの「近習」ですから。」
あえて「近習」と言う言葉を強調した。
男色のフェイと関わりがあることを匂わせろ、シンエンが与えてくれた策。
「元々私はその様な気はございません。女子を交えて楽しくフェイと夜を過ごせれば…と。」
男女の睦事は大夫にとっては神聖なものではない、これもシンエンからの言葉。
どうせ血なんて些細な事だとアイツらは考えている。
大切なのは「舞台」が整う事。
フェイの手がついたという舞台さえ整えば構わない、大夫はそう考える、と。
まさか、そんな事があるわけがない。
そう思っていた。
娘を皇子に嫁がせておきながら、皇子の血じゃなくても構わないなんて考える母はいないと思っていた。
しかし大夫はこの話に乗った。
目の前にいるのは母でも忠実な女官でもない。
権力に取り憑かれた物怪だった。
だからティバルの娘を宮に入れるにはこの大夫を陥さなくてはいけなかった。
「新参者がなんの用だ。」
警戒心を隠さない大夫にフーシンは直球を投げた。
「ティバルの娘を皇太子が所望されました。」
「要らぬ!」
「何故?」
「スーチーが先だ。」
「私情を挟むと?」
「違う。物事には順序がある。」
「ならばソニア様でもチェン様でも良いのでは?」
「ダメだ。スーチーが先だ。」
「順序と申すのならば、ティバルを囲い込む方が先なのではないですか?」
「はっ!?何を言い出す。政は奥の宮に関わりはない!」
「本当にそう思われますか?」
悔しそうに大夫は歯を食い縛る。
…珍しい。無表情の鉄面皮の大夫の感情が面に出てきている。
追い詰められ始めているのを実感しているのだろう。
…おそらくジンシが隠されたことで計画が綻び始めている。
「まずは足元を固めて、憂いなく子作りに努めさせれば宜しいのでは?」
あえてフェイを下げた言い方をし、話を固めていった。
きっとコイツも同じだ。
娘に次帝を産ませ、国母の母となり口を出したいのだろう。
フェイを通して好き勝手にしている男達の様に、孫を通して好きにするつもりに違いない。
「新参者が偉そうに!」
「ええ、新参者です。新参者だからこそ見えるものもやれることもあります。
フェイに貸しを与えてはいかがか?フェイの些細な望みひとつ叶えることで、足元を固められるならばお安い。
どうせティバルの娘が入ってもしばらくは蟄居の身。ひと月とは言わず、半年でも1年でも蟄居させれば良いではないか。
スーチー様が身籠られるまで、それを解く任はあなたにある、違いますか?」
大夫の目が光った。
きっと素早く計算してしているのだろう。
そうだ、ティバルの娘が輿入れするのは随分先、しかも月の物が来るまでは蟄居、その間にスーチーに手がつけばそれでいい。
宮に入ってしまえば、その身はティバルには人質、大夫にとっては手駒のひとつだろう。
…どうか騙されてくれ。焦れば焦るほどに愚を犯すのだ。
「このフーシンが近習としてフェイに取りなそう。
お約束する、必ずスーチー様に宮を与えてみせましょう、と。」
「…お前にそんな力はない。」
「いえ、ありますよ。私はフェイの「近習」ですから。」
あえて「近習」と言う言葉を強調した。
男色のフェイと関わりがあることを匂わせろ、シンエンが与えてくれた策。
「元々私はその様な気はございません。女子を交えて楽しくフェイと夜を過ごせれば…と。」
男女の睦事は大夫にとっては神聖なものではない、これもシンエンからの言葉。
どうせ血なんて些細な事だとアイツらは考えている。
大切なのは「舞台」が整う事。
フェイの手がついたという舞台さえ整えば構わない、大夫はそう考える、と。
まさか、そんな事があるわけがない。
そう思っていた。
娘を皇子に嫁がせておきながら、皇子の血じゃなくても構わないなんて考える母はいないと思っていた。
しかし大夫はこの話に乗った。
目の前にいるのは母でも忠実な女官でもない。
権力に取り憑かれた物怪だった。
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