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王太子の怒り
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王子宮のアイリーンの部屋に暴漢が入ったという知らせは即刻就寝中の王太子の元へも届けられた。
「アリは何をしていたのだ!」
寝間着にローブを羽織っただけの王太子は目の前にあった机に思いっきり拳を打ち下ろした。
しかし王太子の怒りは収まらない。
同じく就寝中に起こされたはずの宰相は
キッチリと衣服を整えて普段通りの無表情で、しかし少しばかり息を切らして駆けつけた。
(この宰相でも慌てる事があるのだな。)
初めて見た宰相のほんの僅かな隙を見つけて、僅かばかりの優越感に浸り、瞬時にそれだけの有事である事を思い出した。
「ペルーの報告によると、手引きか実行したのはカレンのようです。」
カレンは母上の子飼いの者であった。だからアイリーンに付けたのだ。そのカレンが母上をも裏切った。
「王妃様の差し金という可能性…」
「ない!それはない!」
宰相の疑念を王太子は即座に切り捨てた。
母上は今のニルスの状況を一番ご存知だ。アイリーンの身に何かが起こる事がどんな結果を産むかわからないはずはない。
「カレンを探せ!特に叔母上がいる離宮は徹底的に隈なく探せ!」
問題はどのアイリーンを狙ったのか?
バーン織の製作者としてのアイリーンではないだろう。
レインの娘、第二王子の婚約者としてなら叔母上、いや父上か?まさか双方で合意したとか?
ふとウッドバーン絡みかとも考えたが、即座に否定した。
コンラン家の血の直系を害したとなれば、エリールだけではなくウッドバーンも黙っていない。
ウッドバーンは首長連合国である、数いる首長のうちのひとつの系譜が途絶えたとて体制は揺るがないし、ザイモックにおいてコンラン家の影響力が変わるわけではない。今代の帰還を阻止したとして、次代以降に延ばすのがせいぜい。
そしてウッドバーンとニルスの関係は大きく変わるだろう。
自分たちで婚約を押し付けたのに、尚、害そうとするのか。
愚かとしか言い様がない。
「この事、コンラン伯爵には…?」
「伝えるより他にはないだろう。いいや、レインではなくモーリウスに伝えろ。
それから王子宮の者ではアイリーンを守れない。モーリウスから申請されている侍女を王子宮に入れろ。」
「では…。」
「やむを得ん。王子宮にいる者全ての身元を洗い直せ。少しでもフランに縁がありそうな者は王子宮から出す。
それからエリールまでの道に第一陸軍を、第一海軍をヴァネッサ港に。すぐモーリウスに使いを。」
「御意。」
補佐官達が出て行く。
王太子は机に突っ伏した。しばらくそうしていて、徐に立ち上がる。
「母上の元へ行く。」
とうとうこの日が来てしまった。
頑張っているアリを思うと申し訳ないが、もう待ってやれない。
切り捨てるもの、守り抜くもの、慎重に選び取らなければ。
ひとつでも間違えたらもうニルスの崩壊は免れない。
アイリーンはレインに返さなければならない。
「アリは何をしていたのだ!」
寝間着にローブを羽織っただけの王太子は目の前にあった机に思いっきり拳を打ち下ろした。
しかし王太子の怒りは収まらない。
同じく就寝中に起こされたはずの宰相は
キッチリと衣服を整えて普段通りの無表情で、しかし少しばかり息を切らして駆けつけた。
(この宰相でも慌てる事があるのだな。)
初めて見た宰相のほんの僅かな隙を見つけて、僅かばかりの優越感に浸り、瞬時にそれだけの有事である事を思い出した。
「ペルーの報告によると、手引きか実行したのはカレンのようです。」
カレンは母上の子飼いの者であった。だからアイリーンに付けたのだ。そのカレンが母上をも裏切った。
「王妃様の差し金という可能性…」
「ない!それはない!」
宰相の疑念を王太子は即座に切り捨てた。
母上は今のニルスの状況を一番ご存知だ。アイリーンの身に何かが起こる事がどんな結果を産むかわからないはずはない。
「カレンを探せ!特に叔母上がいる離宮は徹底的に隈なく探せ!」
問題はどのアイリーンを狙ったのか?
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レインの娘、第二王子の婚約者としてなら叔母上、いや父上か?まさか双方で合意したとか?
ふとウッドバーン絡みかとも考えたが、即座に否定した。
コンラン家の血の直系を害したとなれば、エリールだけではなくウッドバーンも黙っていない。
ウッドバーンは首長連合国である、数いる首長のうちのひとつの系譜が途絶えたとて体制は揺るがないし、ザイモックにおいてコンラン家の影響力が変わるわけではない。今代の帰還を阻止したとして、次代以降に延ばすのがせいぜい。
そしてウッドバーンとニルスの関係は大きく変わるだろう。
自分たちで婚約を押し付けたのに、尚、害そうとするのか。
愚かとしか言い様がない。
「この事、コンラン伯爵には…?」
「伝えるより他にはないだろう。いいや、レインではなくモーリウスに伝えろ。
それから王子宮の者ではアイリーンを守れない。モーリウスから申請されている侍女を王子宮に入れろ。」
「では…。」
「やむを得ん。王子宮にいる者全ての身元を洗い直せ。少しでもフランに縁がありそうな者は王子宮から出す。
それからエリールまでの道に第一陸軍を、第一海軍をヴァネッサ港に。すぐモーリウスに使いを。」
「御意。」
補佐官達が出て行く。
王太子は机に突っ伏した。しばらくそうしていて、徐に立ち上がる。
「母上の元へ行く。」
とうとうこの日が来てしまった。
頑張っているアリを思うと申し訳ないが、もう待ってやれない。
切り捨てるもの、守り抜くもの、慎重に選び取らなければ。
ひとつでも間違えたらもうニルスの崩壊は免れない。
アイリーンはレインに返さなければならない。
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