政略結婚は不幸の種 知らない間に織物職人は第二王子の婚約者になっていました

枝豆

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変わった日々

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あの夜以来、アリ殿下は少しづつ公務に復帰されるようになって、私はローラ様とクリスと過ごす時間が長くなっていった。

そして。
私に出される水の味が変わった事に気付いた。甘くなくなったのである。
「おそらく子流れの薬が混ぜられていたのだと思います。」
とローラ様が教えてくれた。

「お茶には混ぜられていなかったようですね。モーリが渡したエリールの茶葉でしたから、気付かれるかもと控えたのでしょう。」

私は初日からあの甘ったるい水は飲んでいたから、怖くなった。
そういうこと込みで私はここに入れられたのかと思うとゾッとする。
青ざめたのを察したのか、ローラ様が、
「飲み続けなければ大丈夫ですよ。それに害そうとしたとも言い切れません。婚約中に身籠ってしまえばそれはそれで違う問題になりますから。」
と慰めてくれる。

こんな時に側に殿下がいない…。
それを寂しく思う気持ちがなかったわけではないけれど、ローラ様は織り機を一緒に持ち込んでくれていて、私は久しぶりに布織りに専念する事で、いろんなことを忘れようと努めた。

何を織ろうか迷ったけれど、模様が浮かび上がるタペストリーに決めた。
おそらく時間が足りない。だから1日の大半を織物をして過ごすことになった。
ここを出る時が、布が織り上がる時になるように。

「これはなんの模様?」
織り機から垂れ下がる布を指して殿下が聞いてきた。
「これはバーン、これはエリールカズラです。」
「バーンとエリールカズラ?」
「…はい。」
「これは、樽と船かな?」
「ええ、これから山と鳥も入れようかと。」

領主代行夫人のローラ様が、男のクリス様が性別を偽ってまでここに来たということは、ここに長くいるつもりは無いということ。
合わせて兄様が迎えに来るよ、と言っていた事を思い出す。
答えはひとつしかない。

殿下と一緒に食事を取り、当たり前のように同じベッドで眠る。目覚めたときには殿下腕の中にいることも多い。

ここに来た時には思いもしなかった。
「まるで本当の婚約みたい…。」
つい呟いてしまった言葉をアリ殿下は聞き逃さなかった。
「まだそんなこと言っているの。本当の婚約にして見せると初めに言っただろう?」
逃さないとばかりギュッと抱きしめられる。額に頬に、そして唇に、キスされる。
「そうでしたね。」

アリ殿下の胸にそっと頭を乗せる。
「ずっとこのまま。ここにいて。」
私を抱きしめる腕に力がこもり、囁くように願ってくれる。
「はい…。」
私もそうなったら良いな、と希望を込めて答える。

だけどその先には進まない。束の間の幸せだと二人とも知っているから。
私達にこの先の未来はないことを私達は誰よりも知っている。
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