政略結婚は不幸の種 知らない間に織物職人は第二王子の婚約者になっていました

枝豆

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王妃が突きつけたもの

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「謝る気はない。これは避けられない事だったのです。それより城の中で太刀回りなぞ…。全く短慮に過ぎる。呆れきって溜息も出ないわ。
いや、アリの本気を見誤った私の誤算かしら?アリには悪いが、セオドアスの決断だったのです。このままアイリーンを城に留め置くことは出来ぬと、アリにもわかっていたはずだ。」

涼しい顔をして座ってお茶を飲む母上。堂々と謝らないと言われては苦笑するしかない。

「アリには言うてない事がある。
アイリーンはザイモック家の系譜だ。」

母にサラリと投げかけられた言葉の持つ力は凄まじかった。
思わなかった事実に目を見開く。
「ザイモックの、ですか?」
「そうだ。
アイリーンの祖父が火山災害の時に逃げ延びたザイモックの後継だ。
エリール家に庇護されたザイモック後継は、エリール領から出ることを許されずそのまま留め置かれた。
それはウッドバーン諸島国への影響力を強めたいニルス前王の謀だったと我は思っておる。」

当時軍需力を剥ぎ取られたまま力の弱かったエリールは、泣く泣く国王陛下の意向に従うしかなかった。
ザイモックの再建を優先する腹積りもあったはずだ。

たが、国の為政者が他国の臣家であるという歪な関係は、エリールにもウッドバーンにも好ましい事ではない。
1日も早く分家を果たし、この歪な関係を終わらせるのが、その後半世紀にも渡る伯爵家の願いだった。

後継は王都では目立ち過ぎると領地代行の元でひっそりと育てられた。生涯ウッドバーンへの渡航許可は国王から出される事はなく、エリールに根を張りその身を市井に紛れ込ませた。
そしてアイリスが産まれた。

もしルーナが死なず、アイリスがレインと結婚出来ていたら、今の状況にはなってはいない。いく人もの人が不幸になる事はなかっただろう。

「では…。アイリーンの父はレインなのですか?領主の初夜権はその為に行われたのですか?」
「それはわからぬ。
初夜権の夜のことは誰にも詮索は出来ない。2人が話さなければ誰にもわからない。」

しかしレインは布石を打った。
庶子とされたらそれはそれで良い。堂々と後継をザイモックへと送り出せる。
されなければモーリウスと結婚させる道も生まれ、次代へと延ばす事もできた。

愚かにもランスはその事に気付かずにフランの口車に乗った。そしてレインを怒らせ、独立への口実も与えた。
アイリーンに手を出してはいけなかったのだ。
レインが愛しているからではない。
エリールとザイモックという2つのコンラン家の悲願が掛かっているからだ。

母の話を聞きながら、リーンがモーリの留学に付いてウッドバーンに行っていたという話を思い出した。
そうか、あれはモーリの留学ではなく、リーンのためだったのかもしれない。
永住する気もあった、やりたい事が出来たから帰ったと言っていたではないか!
既にあの時にはアイリーンには覚悟があったに違いない。
将来ウッドバーンを背負って立つ覚悟が。
ウッドバーンの民のためにバーン織を作り上げた。国民の命と財産を守る為の覚悟。為政者としての覚悟があったから?

絶望的なひとつの現実が目の前に聳え立っていたことにアリストリアは気付いてしまった。

じっと自分を伺っていた母上は、投げかけた事柄が十分に息子に染み渡った事を確認すると、真っ直ぐに自分へ視線を向け、更にダメ押しの言葉を放った。

「アイリーンはウッドバーンに行く。
アイリーンの横に立つ為には、アリストリアは国を捨てねばならぬ。
その覚悟が其方にあるか?」
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