政略結婚は不幸の種 知らない間に織物職人は第二王子の婚約者になっていました

枝豆

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覚悟

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「国を捨てる覚悟はあるか?」
母上、いや王妃の言葉にも迷いは生まれなかった。
「あります。私はリーンと共に生きていきたい。」

怒られるか、嘲られるかもしれないと思ったけれど、少しでも覚悟を示そうと、真っ直ぐに母の目を見つめて、心を込めて伝えた。
意外にも母上はその美しい顔を満足そうに綻ばせて頷いた。
しかし返ってきた言葉は私の心を抉るものだった。
「しかし、アイリーンは黙って行ってしまった。人の気持ちは変わるとも言っておった。受け入れてもらえる余地はないかもしれない。それでもか?」

しかし俺の答えは変わらない。
「はい、それでもです。」

それでも一抹の不安はひたひたと足元から上る。服の上から胸元のペンダントをギュッと掴んだ。ここに、ここに約束の証がある。
だから、大丈夫だと信じよう。

「フッ」
少し意地悪く自分を見つめていた母上がいきなり吹き出して、あはは、と声を出して笑い出した。

自分の真剣な気持ちを笑われたのかとムッとした。
「私は真剣です。何が可笑しいというのですか?」
咎める言葉を吐き出しても、母上の笑いは止まらなかった。

「あはは、すまん、すまん。
いやな、アイリーンも同じ仕草をしておった。
其方達の胸に何がある?」

俺はそっと胸からペンダントを取り出した。
雌鳥の火鳥、番の片割れ。
リーンが大切に胸に隠したと聞いて、仄かな希望が差し込んだのを感じた。

「火鳥…か、そうか。」
優しげに王妃は母上の顔になり、微笑んだ。

良いことをひとつ教えておいてやる、と母の顔をしたまま王妃が言う。

「アイリーンは旅立ちは明日だと思っていた。ローラ殿はああ見えて権謀に長けていそうだな。アイリーンが口を滑らせる前にさっさと連れ出すことを決めたようだ。
それでもリーンが黙って行くつもりだったかはわからないが、あえて別れの時を作らせなかったのはローラだよ。」

またひとつ希望の光が見えた。



その日、エリール領に隣国サトラリア軍が侵攻。
十分に準備を進めていたサトラリアの大軍を前にして、駐屯していたニルス国軍はほとんど応戦することもなく降伏した。

サトラリアは領主後継、モーリウス・エリール・コンランを拘束。
王都滞在中のレイン・エリール・コンランは娘アイリーンとともにウッドバーン諸島国への亡命を発表した。

サトラリアがニルスに突きつけたのは、
エリール領のサトラリアへの無条件譲渡、ニルス国王の退位、王太子とサトラリア王女との婚姻、である。
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