政略結婚は不幸の種 知らない間に織物職人は第二王子の婚約者になっていました

枝豆

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ニルスへの要求

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「それから、今後のエリールについて申し伝える。」
来たっ!
兄と母からは何がなんでもエリールの雪山の砦を死守しろ、エリールの繊維業はニルスから切り離してはならないと言われていた。
子供のお使いじゃないんだから、これだけは通さなくてはならない。

「…モーリ、独立は考え直してくれ。」
父がエリール、レインやリーンにした事を思えばもっと請い願わなければならないか?と悩んだ。

「アリ、何言ってんの?初めからするつもりはないよ。」
えっ?
「じゃあ、サトラリアへ移るのか?」
「移らないよ。面倒じゃん。」
アッサリと独立も移属も無いと言い切ったモーリをつい不思議そうに見てしまった。

モーリはわかってないな、とばかりに少しの出来の悪い子供を見つめるような視線を投げかける。

「エリールが産業に力を注げたのはニルスの庇護下にいて軍事費が掛からなかったから。ザイモックが火災被害に見舞われた時、エリールがザイモックを支援出来たのもそう。
あの時他国や他のウッドバーンの島に攻め込まれていたら今のザイモックはない。
領地を警護する軍事費と貿易の収益とを比べたら軍事費の方がはるかに嵩む。
その恩があるからこそ父は色々と耐えてきたんだ、それに俺の母はニルス王族だ。
俺たちは従兄弟だろ?忘れるな!」

「それからバーン織の事だが…。諦められるか?」
モーリは続けてそうも言った。

「バーン織を諦める?」
「元々バーン織は量産型ではない。そもそもバーンの頭数がそれほどいない。あれはウッドバーンでは神獣として扱われているから家畜にするなんて無理だ。もし軍服をバーン織で作るならバーンを増やすところから始めないとならない、少なくても10年は掛かるぞ。」

…そうか。父は考えてもいなかっただろうな。

「ただ、商会は解散してもらう。
お前の父親は作り出す者の思いを無視し過ぎた。
誰かのために誰かを思って、作り手達は物を産み出す。
ここにいるフランクのために作られた物が、そのフランクを傷付け悲しませる事になった事を忘れるな。
踏み躙られた思いは、次の負の感情を生む。
馬鹿なオッサンがしでかした事が引き起こした結果をニルスは受け入れるべきだと俺は思うぞ。」

ここに来てモーリが、レインが、何を大切にしたかったのかを知った。


「…母はどうしてる?」
「塔に幽閉中だ。」
離宮にいたフラン叔母上は表向きレイン亡命の協力者の嫌疑で兄が捕縛した。
実際はアイリーン暗殺未遂の教唆犯。
王太子宮にもフラン叔母の手は放たれていたらしく、リーン本人でさえ知らなかった脱出の日を何故か叔母上は知っていた。
狂って泣き叫ぶ叔母の尋問は困難を極めて、今は塔の一室に文字通り「拘束」されている。

「モーリ、お前を呼んでいる。」
「…今は会えない。」
「…そうか。一応まだ人質だからな。」
「そういうことにしといてくれ、…済まない。母を頼む。おそらく母を壊したのは俺だ。」

何があった?と聞こうとしたが、憚られた。
何も言うな、聞くな、とモーリが身体で訴えている。

叔母が何故そんなにリーンを憎むのか、理解に苦しむ。レインやモーリが頑なに叔母上に冷たく当たるのも。
ただフランがニルスの城にいる限り、モーリはニルスから離れられない。
何かがモーリを叔母に引き留めている。
レインはあっさり妻を手放した。連れ出したのはリーンとホセの弟子が1人だけ。
それなのに冷徹に国を戦果に陥れたモーリの方が母を切り捨てられなかったように見えた。
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