政略結婚は不幸の種 知らない間に織物職人は第二王子の婚約者になっていました

枝豆

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プレゼント

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兄様から貰った毛糸はまずはベストに変わった。
自分用にと思ったけれど、色合いが少し男性向きだったから男性のサイズにした。

…誰にあげよう。
といっても今、私がプレゼント出来るような「男性」は王子宮にはひとりしかいないだろう。うん、仕方ない。

「…殿下要ります?」
恐る恐る聞いてみる。
こんなの誰が着るか!と拒まれてもおかしくはない。

エリールでベストを着るのは外作業をする時か部屋着だ。
どんなに雪が深い時期でも、レイン様やモーリ兄様が正装する時に毛糸編みのベストは着ない。
王都で、お城で、王子様が着てくださるはずはない。

でも一応殿下は嬉しそうな顔をして受け取ってくれた。
「…ちょっと着てみても良い?」
とその場で軽く羽織ってまでくれる。

(よし、出来は悪くはない!)
編み上がりに満足して思わずニヤけてしまう。
ニコニコとベストを着ている殿下はなんだか不思議そうな顔で私を見ているのに気付いた。
あっ、ニヤけているのがバレた。

「ありがとう、大切にする。」
とありがたい言葉まで返してくれた。
こんなサクッと暇潰しで編んだだけのベストが本当に大切にされる事はないだろう。
目の前で罵倒されないだけ良かった。
だけどそこは腹の探り合いに慣れているお貴族様、さすが凄い、完璧な演技だ。

「喜んでいただけたなら嬉しいです。」
と返しておく。
私は上手く演技出来ているだろうか。
あっ、いやコレは演技じゃないな。

作ったものが誰かの手に渡ることは、作り手としてこんなに嬉しい事はないからね。

「1日でこんなに編めるものなのか?」
と驚かれた。
「…そうですねぇ。」
ゆっくりと考えてみる。

私はエリールでは仕事もあったから、私が毛糸編みをするのは片手間だった。
家事と仕事の合間のちょっとした隙間の時間だ。寝る前に寝室に持ち込むと朝までやってしまうことも多くて、あまり自室には持ち込んでいなかった。

「根を詰めて1日編むということがなかったので、よくわかりませんが、編めたのだからそうなるのでしょう。」

ただ、手編みを専門に仕事にしている人は幾人かいた。
そういう人は大抵もっと早いペースで編み上げていく。
一定のペースで編むことで、綺麗に編み目が揃う。

「でも私はどちらかと言えば(手編みは)遅い方ですよ。」

「そうなんだ。リーンでも凄く早いと思うのに、もっと早く編める人もいるのか。」
と殿下は感心してくれる。

「見てるだけ楽しくなる。」
「あっ!解ります!」

小さい頃から母が編み機を動かしていたり、祖母が刺繍しているところを横で見ているのが好きだったから。
どんな素敵なものが出来るのか、ワクワクしていた。

「うーん、そういう経験は俺にはないな。」
とどこか寂しそうに殿下が話す。
「それは王妃様は職人じゃありませんからね。」
王妃様が編み機をガチャガチャいわせながら働く姿は想像も出来ない。

「本を読んでいただいた事はありますか?」
「あっ、それならある。」
眠りにつくまで傍で物語を話してくれたそうだ。
「続きが気になってなかなか寝付けなくて、叱られた事はあるな。」
「ふふ、同じですよ。」

昨日まで、王族はどこか別世界の人だと思っていた。共通の話題なんてない、こんなふうに殿下と打ち解けて取り止めもない話をする事はないと思っていたけれど、それは違ったようだ。

…意外だった。
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