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息子達の決断
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サトラリアによるエリール侵攻および占拠を伝えた時、ランス国王は既にその身柄は拘束されていた。
セオドアスとアリストリアは父の姿をしっかりとその目に残そうとその場に立ち会った。
冷酷に父を切る判断を下したのは自分だけではないけれど、その業は自分達が生涯償っていかなければならないと覚悟を決めていた。
エリール関連の書類に埋もれたアリストリアが見つけたのは、平時であれば申告漏れで済んだかもしれない、僅かな横領だった。ただそれが例の黒衣となれば話は変わる。
それに国家背任の容疑をくっつけたのはセオドアス王太子だ。
2人の王子からの告発を議会はすぐに問題視し、ランス国王の権限停止を決めたのだった。
悔しそうに息子たちを睨みつけているランス国王を前にして、ルカリオ宰相は淡々と罪状を読み上げていく。
「ニルス商会では漆黒の黒布の反物は全てサトラリアに納品される事になっていました。あの最上位ランクの反物も含めてです。
その黒布は書類上はニルス商会所有のものでした。
ランス国王はそれを私物化し、夫妻がその反物を使った黒衣をサトラリア王太子の結婚式で着用している事をアンリ王妃が証言しました。
また、明確な理由なく、議会の審議を経ずに、サトラリアとの取り引きを停止したこと、王子殿下婚約者暗殺未遂の犯人追跡を故意に終結させたことも、職権の乱用に当たり、国家の利益を損ねるものです。
これらがサトラリアからの信用を失わせ、サトラリアのエリール侵攻へと結びついた、と判断致しました。
著しく国に不利益をもたらしたランス国王陛下の国王としての権限を停止し、その身柄を議会により拘束致します。」
「そんな事をしている場合ではないだろう!一刻も早くサトラリアに対抗しなければ!」
父の言葉にセオドアスは
「父上、レインからの伝言です。
エリールにいる領民ひとり、羊の1匹でも害するものがいれば、エリールは今後一切の取引を行わない、と。」
冷たく言い放った。
父はあの雪の山脈の価値をわかっていなかった。
乗り越えられなかった雪山を超えられてしまった今、エリールを傷付けずにサトラリアと戦う事など出来ない。
「エリールを傷付けずにサトラリアとは戦えません。エリールからの富を得られなくなる可能性を見捨てる事はできません。」
「お前たちもか…エリール、エリールと。うんざりだ!」
お祖父様がニルスの為にエリールを重要視していた理由はわかる。俺達にわかるという事はそれはニルス王族として正しい考え方の証明だと信じていた。
なぜそれが父に伝わらなかったのかが、とにかくもどかしい。
言葉の刃を向けたのは兄だった。
「だったらなぜエリールが無くても盤石なニルスの礎を作ろうとはしなかったのですか?」
エリールを憎みながら、エリールの地の利に甘え、エリールからもたらされる富を甘受しつつ、エリール頼みの国政を敷いたのは他ならぬ父上自身だ。
「セオドアス様のおっしゃる通りですよ、陛下。
それほどまでに憎むのならば寄りかかってはいけなかったのです。あなたがエリールにニルスから離れる決断をさせた。その責任はあなたにあるのではないだろうか?。」
怒りに震えていた父は何か反論しようと一旦は口を開きかけたが、しかし周りに自分の味方がひとりもいない事に気付くと、ぐったりと項垂れた。
連れ出されようとする父にアリストリアが声をかけた。
「父上、ひとつだけあなたに感謝を。
アイリーンに引き合わせてくれてありがとうございます。」
丁寧に腰を折り、礼儀を尽くした言葉に父は「お前の為ではない。レインが一番嫌がることをしただけだ。」
と吐き捨てる。
それでもアリストリアは、反論する事も下げた頭を上げる事もしなかった。
黒衣を共に纏ったアンリ王妃も身柄を拘束、共に北の塔へと幽閉された。
これは母が望んだ事であった。
「夫のした事は我の為でもある。」と押し留める息子とルカリオ宰相を振り切った。
またコンラン伯爵夫人フランには、15年にも渡る王室財産の占有および横領の他に、王子殿下婚約者コンラン伯爵令嬢アイリーン暗殺未遂の教唆、およびレイン・コンラン伯爵のウッドバーン亡命幇助の嫌疑も掛けられ、共に身柄を拘束した。
セオドアスとアリストリアは父の姿をしっかりとその目に残そうとその場に立ち会った。
冷酷に父を切る判断を下したのは自分だけではないけれど、その業は自分達が生涯償っていかなければならないと覚悟を決めていた。
エリール関連の書類に埋もれたアリストリアが見つけたのは、平時であれば申告漏れで済んだかもしれない、僅かな横領だった。ただそれが例の黒衣となれば話は変わる。
それに国家背任の容疑をくっつけたのはセオドアス王太子だ。
2人の王子からの告発を議会はすぐに問題視し、ランス国王の権限停止を決めたのだった。
悔しそうに息子たちを睨みつけているランス国王を前にして、ルカリオ宰相は淡々と罪状を読み上げていく。
「ニルス商会では漆黒の黒布の反物は全てサトラリアに納品される事になっていました。あの最上位ランクの反物も含めてです。
その黒布は書類上はニルス商会所有のものでした。
ランス国王はそれを私物化し、夫妻がその反物を使った黒衣をサトラリア王太子の結婚式で着用している事をアンリ王妃が証言しました。
また、明確な理由なく、議会の審議を経ずに、サトラリアとの取り引きを停止したこと、王子殿下婚約者暗殺未遂の犯人追跡を故意に終結させたことも、職権の乱用に当たり、国家の利益を損ねるものです。
これらがサトラリアからの信用を失わせ、サトラリアのエリール侵攻へと結びついた、と判断致しました。
著しく国に不利益をもたらしたランス国王陛下の国王としての権限を停止し、その身柄を議会により拘束致します。」
「そんな事をしている場合ではないだろう!一刻も早くサトラリアに対抗しなければ!」
父の言葉にセオドアスは
「父上、レインからの伝言です。
エリールにいる領民ひとり、羊の1匹でも害するものがいれば、エリールは今後一切の取引を行わない、と。」
冷たく言い放った。
父はあの雪の山脈の価値をわかっていなかった。
乗り越えられなかった雪山を超えられてしまった今、エリールを傷付けずにサトラリアと戦う事など出来ない。
「エリールを傷付けずにサトラリアとは戦えません。エリールからの富を得られなくなる可能性を見捨てる事はできません。」
「お前たちもか…エリール、エリールと。うんざりだ!」
お祖父様がニルスの為にエリールを重要視していた理由はわかる。俺達にわかるという事はそれはニルス王族として正しい考え方の証明だと信じていた。
なぜそれが父に伝わらなかったのかが、とにかくもどかしい。
言葉の刃を向けたのは兄だった。
「だったらなぜエリールが無くても盤石なニルスの礎を作ろうとはしなかったのですか?」
エリールを憎みながら、エリールの地の利に甘え、エリールからもたらされる富を甘受しつつ、エリール頼みの国政を敷いたのは他ならぬ父上自身だ。
「セオドアス様のおっしゃる通りですよ、陛下。
それほどまでに憎むのならば寄りかかってはいけなかったのです。あなたがエリールにニルスから離れる決断をさせた。その責任はあなたにあるのではないだろうか?。」
怒りに震えていた父は何か反論しようと一旦は口を開きかけたが、しかし周りに自分の味方がひとりもいない事に気付くと、ぐったりと項垂れた。
連れ出されようとする父にアリストリアが声をかけた。
「父上、ひとつだけあなたに感謝を。
アイリーンに引き合わせてくれてありがとうございます。」
丁寧に腰を折り、礼儀を尽くした言葉に父は「お前の為ではない。レインが一番嫌がることをしただけだ。」
と吐き捨てる。
それでもアリストリアは、反論する事も下げた頭を上げる事もしなかった。
黒衣を共に纏ったアンリ王妃も身柄を拘束、共に北の塔へと幽閉された。
これは母が望んだ事であった。
「夫のした事は我の為でもある。」と押し留める息子とルカリオ宰相を振り切った。
またコンラン伯爵夫人フランには、15年にも渡る王室財産の占有および横領の他に、王子殿下婚約者コンラン伯爵令嬢アイリーン暗殺未遂の教唆、およびレイン・コンラン伯爵のウッドバーン亡命幇助の嫌疑も掛けられ、共に身柄を拘束した。
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