修道院に行きたいんです

枝豆

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オマケ

お披露目5

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馬車はゆっくりと大聖堂の参道に入っていって、馬車留めで停止する。

「いちおうここで降りる予定ですが、どうされますか?馬車のまま進む許可は出ておりますが。」

ゼットンに確認されたけれど、この道を馬車のままで進めるのは死人を乗せている時だけ。忌事に倣うことはできるなら避けたい。

「大丈夫、歩くわ。」
みんなに会えたら少し元気を取り戻した気がする。

エルに手を取ってもらって馬車から降りた。参道の脇には警護の兵士たち、その後ろにも街の人がたくさん並んでくれている。

「レイチェル様ー!」
「エルンスト殿下ー!」
笑顔で大声を出しながら手を振ってくれるみんなの姿に胸に熱いものが込み上げる。

…わかってるから。私は本来はこんなふうに国民に祝福されるような資格は無い。
ステファン殿下との事を無かった事には出来ないってわかってるから。

国民は本当のことを知らないから…。
もしかしたら知ってて知らないフリをしてくれてるのかもしれないことも、ちゃんとわかってる。

…嘘つきでごめんね。

…でも。
もう迷わないって決めたから。何があっても、何を言われても、どう思われても、私はエルの隣に立つんだ、って決めたから。

許してほしい。許して下さい…。

誰にも話せない決意を胸に秘めて、エルと十数段の階段を上がり、大きく開かれた扉を潜った。

真っ直ぐに伸びる通路の先には祭壇が見える。
その脇には大勢の人。
右側には国教会に身を捧げた方々、左側には貴族と王族の方々が立ち並ぶ。
皆、灰色の式服を纏い、その役職に与えられた法衣を纏っている。

真ん中の通路を歩き進むと、祭壇の前に最高位の赤い法衣を纏った枢機卿猊下が、満面の笑みで立っておられた。
本来はエール国にいらっしゃる猊下は、今日このためにわざわざキッテンの地へと足をお運びくださったのだ。

エルと並んで2人で猊下の膝下に膝をついて座り、胸の前で指を絡ませ、頭を垂れる。

その瞬間、ざわめいていた聖堂内は紙一枚落とした音でさえも響き渡ってしまうほどの無音になる。

「御神の子、使徒エルンストでございます。
御神の求めに応じ馳せ参じましてございます。
生涯を我と共に御神に捧げる決意を持ちます、妻レイチェル・フィリア・ライナス・プリンセス・キッテンを、皆にお披露目させて頂く栄誉に預かれたことを、御神に感謝申し上げ奉ります。」

「エルンスト・ライナス・プリンス・キッテンが妻レイチェル・フィリア・ライナス・プリンセス・キッテンでございます。生涯を我が夫と共に御神に捧げさせて頂くために馳せ参じましてございます。
御神の願うまま、世の為民の為にこの身を捧げ尽くす事をここに御誓い申し上げ奉ります。」

…間違えてない?間違えてないよね?
必死に暗記した言葉を暗誦し、言われた通りに視線を猊下の足元で固定する。

動いちゃダメ、フラフラと周りを見ちゃダメ…、えーとか言っちゃダメ…。

緊張でカタカタと震える組んだ手をなんとか大人しくさせようと必死で力を込める。

「御神の御心のままに。」
猊下の声が響き渡る、私の前に祝盆に乗せられた黄色の法衣と勲章が差し出された。 
「御神よりレイチェルに使徒の法衣を賜った。心してこれを着よ。」
猊下のお言葉を受けて、立ち上がりそれらをエッタに身につけさせて貰う。

「皆に誓いを。」
と猊下に促されて、振り向いて後ろで固唾を飲んで身構えている参拝者達に顔を見せた。

「使徒レイチェルにございます。御神のご慈悲を賜り、祈りを捧げる身と成りました事を、ここにご報告させていただきます。…ぇ、常に御神と共に皆様方と共に、この身を捧げて参ります所存でございます。」

あっぶなーい、つい、えーって言い掛けた。

「今、ここに新たな使徒レイチェルが顕れた。レイチェルを遣わせてくださった御神に感謝をし、共に祈りを捧げましょう。」

「「御神の御心のままに」」

ここで国教会から正式に使徒のひとりとして、そして王族として認められた事になった。

皆の拍手が湧き上がり、それに応えるために漸く視線を動かせる。

父様は泣いてる…母様も。
カルロ様は満足そうに笑顔で、カトリーナ様はやれやれやっと終わった…と言いたげだ。
ステファンが優しく泣いているトーニャの背中を摩っていて。
意外にもクラリーチェ様も泣いていた。その涙をブルーノ様が優しく拭いて差し上げている。

エルに促されて、通路をまた出口に向かって歩いていく。
もう厳粛さはさほど必要ではなさそうで、皆が口々に「おめでとうございます」などと祝福の言葉を掛けてくれた。

兎にも角にも、エルが晴れてみんなに祝福してもらえている…。
それが何よりも嬉しかった。
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