若松2D協奏曲

枝豆

文字の大きさ
11 / 242
バスレク

橋コース

しおりを挟む
橋を通るコースは大変過ぎて人気がない。
それは部活の先輩からも聞いていた。

ひとつはアップダウンが他のコースよりもあること。
ひとつは本格的な?吊り橋があること。
川までの落差が大きいのと、足元の隙間がけっこう広いのと、かなり揺れるのと。

注意を受けてしまったせいで、選択肢がなくなった私達の班は、左周りの橋コースを歩き始めた。

流石に皇子くんは他の班の女子を遠ざけるようになり、今は6人しかいない。
やっとみんなで過ごせる…。
そう思ったのに。

遊歩道ってウソでしょ?って思う。
段差の高さも幅も不規則な階段状の道は、登山道の間違いじゃないか?と思う。

ハアハア息を切らしながら、みんなについて行くのがやっとだった。

もっと楽しく和気藹々お喋りしながら歩けると思っていたのに…。
そうやって20分程歩いた頃。
「皇子!さすがにもう止めて!翠が死ぬ!」
「ああ、疾風!ストップ!」
だけど皇子くんの声は遠すぎて届きそうもない。
「チッ!北斗達はゆっくり来て。
追っかけて待たせておくから!」
そう言って皇子くんは走り出した。

こんなにローペースになったのは私のせい。
中野さんは和津くんの手を引いて、
「行こう、行こう!」
と先頭を元気に張り切って歩いていった。
置いていかれないように頑張ってはみたけれど、和津くんと中野さんとの距離はどんどん開いて行って、今はもう背中すら見えない。

「ゴメン、少し休ませて。」
と座り込んだ。
「大丈夫?水飲む?」
優ちゃんと北斗くんがすごく気を遣ってくれてるのがわかって、申し訳なくなる。
「本当…ごめん…。大丈夫だから、先に行ってて。」
「それはしない!」
優ちゃんがきっぱりと言い切ってくれるのが、正直嬉しい。

「ってか、中野マジやり過ぎ。」
「あああからさまだと引くって。」

優と北斗くんの会話はほとんど耳に入らない。
頭がガンガンしてきた。お腹も腰も重い。
生理痛がぶり返してきたのだ。

朝、薬を飲んでから…まだ5時間。ちょっと早いけどもう一回飲むか…。
リュックを漁り、薬の入った袋を取り出すと、優ちゃんはサッと何かに気付いてくれたみたい。
「北斗、ダッシュ!和津くん呼んできて!」
「えっ?なんで?」
「いいから、早く行って!」
優ちゃんが北斗くんをこの場から離れさせようとしてくれる。
本当ゴメン。
だけど薬を飲むところを見られたらきっと理由を聞かれる。
…言えないよ。恥ずかしくて。

「…イヤだ!」
きっぱりハッキリ、北斗くんは拒んだ。

「ゴメン、間違っていたらゴメン。
んで俺が聞いて良い事じゃないかもしれないけど。
もしかして翠ちゃん、生理痛?」

「北斗!バッカ!」
「ゴメン、本当ゴメン。
俺、姉ちゃんがいるから…なんとなく?そうかなぁって?」

…恥ずかしくて顔があげられないよー。

だけど北斗くんは話をする。

「なあ、翠ちゃん、優ちゃん。
俺たち合コンしに来てるわけじゃないよね?学校の行事だよ。
理由がわかればみんな何すれば良いかわかるよ、それで助けられることがあれば、俺、なんでもするよ?」

…そうだった。
これは学校の行事で、授業だ。

「北斗…ゴメン。少し中野に引きずられ過ぎてた。」優ちゃんが謝った。
「…ごめんなさい。優ちゃんは悪くないから、責めないで。私が恥ずかしくて言えなかった。うん、そうなの。今薬飲むね。」

堂々と薬を出して飲んだ。
恥ずかしがっていないで最初からそうすれば良かったんだ。

「俺、おんぶするよ。」
「えっ、そこまでしなくていい。大丈夫、歩ける。」
「無理してない?」
「無理…してるけど、甘えたくない。頑張りたい。」
「うん、わかった。じゃ、荷物は俺が持つ。ゆっくり行こう。」
「ありがとう…。」

優ちゃんが背中からリュックを引き剥がして北斗くんに渡す。
「さあ、行こう。」
私から立ち上がって声を掛け、3人で歩き出した。
リュックだけじゃない、なんだか心が軽くなった気がする。

10分くらい歩いたところで、皇子くん達と合流できた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

黒に染まった華を摘む

馬場 蓮実
青春
夏の終わり、転校してきたのは、初恋の相手だった——。 鬱々とした気分で二学期の初日を迎えた高須明希は、忘れかけていた記憶と向き合うことになる。 名前を変えて戻ってきたかつての幼馴染、立石麻美。そして、昔から気になっていたクラスメイト、河西栞。 親友の田中浩大が麻美に一目惚れしたことで、この再会が静かに波紋を広げていく。 性と欲の狭間で、歪み出す日常。 無邪気な笑顔の裏に隠された想いと、揺れ動く心。 そのすべてに触れたとき、明希は何を守り、何を選ぶのか。 青春の光と影を描く、"遅れてきた"ひと夏の物語。   前編 「恋愛譚」 : 序章〜第5章 後編 「青春譚」 : 第6章〜

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

after the rain

ノデミチ
青春
雨の日、彼女はウチに来た。 で、友達のライン、あっという間に超えた。 そんな、ボーイ ミーツ ガール の物語。 カクヨムで先行掲載した作品です、

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...