若松2D協奏曲

枝豆

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ジャズ演奏

朝練 拓実視点

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それから毎朝早練に行った。
僕と山本先輩の2人の時間は駅から学校の音楽室に入って楽器を出すまでの僅かな時間。その時間に山本先輩は沢山の事を僕に話してくれた。

4月、意味なく他の楽器を練習させられたのは、人と楽器を知る期間だった。
「私もね、なんで?って思ったけど。
他の楽器を触ってみるのは意外に楽しかったよ。 
クラリネットなんて全然音出せなくてね。
こんな難しいの良くできるよなぁって。
そうするとね、他の楽器担当の人が大切にしてることとか苦労してる事とかがわかるようになってくるの。

それと、一通り全員と触れ合うでしょ?この先輩優しいなぁ、とかこの先輩の音好きだなぁって。
今年は少し見る目が変わって、この子はどんな子なんだろうって。
北条くんはトランペット好きなんだなぁってすぐにわかったよ。」
 
思ったのは後悔。
僕は嫌な態度だったと思うから。
やりたくないを全面に出しまくっていた僕の事を他のパートの先輩はどう見ていたんだろう?
もし僕が来年、トランペットを嫌々吹いている子を見たらどう思うのか?

「ガードもね、きっといい思い出になるよ。楽器決まっちゃえばみんなそれぞれになるでしょ?
同級生でひとつの事を練習するのは最初で最後だから。」

せっかくだから楽しんでね、そう言って山本先輩はふわりと微笑んだ。

体育祭が終わって担当楽器が決められた。念願のトランペットが吹ける!
ただ、もう僕にはそれだけじゃなくなっていたかもしれない。

…山本先輩は。
普段はふんわり暖かい雰囲気なのに、トランペットを吹くときは凛としたクールな空気を纏う。

山本先輩とトランペットが吹けたなら、それはきっと眩しくキラキラした時間になるんだろう。


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