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置き去りにしたもの
話してくれない
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図書館に戻った時、みんなはロビーにいた。
「ごめん、心配かけちゃった?」
「大丈夫、話してただけだから。」
優ちゃんと花音ちゃんは優しかった。
それからみんなで少しだけ勉強した。
なるべく普通に見えるように頑張った。
「数学…ヤバいんだよ。」という北斗くんに和津くんが数学を教えて、私と花音ちゃんは日本史の問題を出し合った。
皇子くんは優ちゃんに物理を教えている。
物理は私も教わりたいくらい苦手。
そうして時間まで勉強して、みんなで電車で帰る。
北斗くんは逆方向で、優ちゃんと花音ちゃんが降りる。
「俺、翠を送るわ。」
和津くんがそう言って、皇子くんだけが電車から降りて行った。
「…ごめん…心配掛けた…よね。」
「うん、心配したよ。黙って行かないで。」
「…ごめんね。止められると思ったから。」
うん、多分止めた。と和津くんが言う。
「実は優達に少し話したんだ。」
「…そっか。」
「優は翠の好きにやらせたら良いのにって言ってた。」
えっ?
驚いた。優ちゃんも止めると思っていた。
「翠はどうしたいの?」
「…絵里ちゃんに謝りたい。」
「なんで翠が謝るの?あんなに酷いことされたのに?」
「…私が先に傷付けたから。それと私は嫌がらせしたのは絵里ちゃんじゃないと思ってる。」
「話してくれないかな?でないと協力のしようがない。」
「…嫌わない?」
「俺が?翠を?」
うんと頷いた。
「それはない、大丈夫。信じて。」
電車が駅に着いてしまったので、ファーストフード店に寄る事にした。
「あのね…。」
紙コップを持った指先が震える。冷えているのはきっとドリンクのせいじゃない。
「そんなピアス、絵里ちゃんには似合わないって言っちゃったの。」
「翠が?絵里に?」
あの時のことを話して聞いてもらう。
ピアスで傷んだ耳のこと、病院に行ってもらいたい一心で傷付けてしまった言葉のこと。
「…そう言えばあの時の絵里ちゃんには届くと思った。
そうか、似合わないか、それなら外しても良いか、って考えるんじゃないかなって。
だけど、絵里ちゃん怒っちゃった。」
和津くんが黙っている。
ああ、幻滅されちゃった?
「ああ、なんかわかる。
痛みだけじゃない、何かを我慢するようなヤツじゃない。いい意味で見切りをつけるのが早いヤツだもんな。
そう、絵里なら、そっか、似合わないか、だったら我慢するなんてカッコ悪いだけ、そう考えそう。」
「だけど、それだけの何かがあったんだと思う。その事に気付かないで絵里ちゃんを傷付けた。」
「だから謝りたい?」
「うん、謝りたい。」
だけど、絵里ちゃんには避けられていたし、みんなは私が絵里ちゃんの側に行くことをよく思っていなかったから。」
「ちゃんと話してくれたら良かったのに。」
「うん、そうなんだけど…。」
簡単に言えば話しそびれてタイミングを無くした。
こんな事になるはずじゃなかった、それに尽きる。
「確かに怒り続ける絵里は、いつもと違うな。感情豊かな絵里はよく怒るけど忘れるのも早いのに。」
絵里がもし翠を嫌いになればあっさりと関係をリセットするだろう、だから無視し始めたのはわかる。
怒りのままに何回かは嫌がらせはしたかもしれない。
でもそれが長く続いて、更に半年たって帰国してもまだ続く?
なんとなく翠の言いたい事がわかってきた。
「ごめん、心配かけちゃった?」
「大丈夫、話してただけだから。」
優ちゃんと花音ちゃんは優しかった。
それからみんなで少しだけ勉強した。
なるべく普通に見えるように頑張った。
「数学…ヤバいんだよ。」という北斗くんに和津くんが数学を教えて、私と花音ちゃんは日本史の問題を出し合った。
皇子くんは優ちゃんに物理を教えている。
物理は私も教わりたいくらい苦手。
そうして時間まで勉強して、みんなで電車で帰る。
北斗くんは逆方向で、優ちゃんと花音ちゃんが降りる。
「俺、翠を送るわ。」
和津くんがそう言って、皇子くんだけが電車から降りて行った。
「…ごめん…心配掛けた…よね。」
「うん、心配したよ。黙って行かないで。」
「…ごめんね。止められると思ったから。」
うん、多分止めた。と和津くんが言う。
「実は優達に少し話したんだ。」
「…そっか。」
「優は翠の好きにやらせたら良いのにって言ってた。」
えっ?
驚いた。優ちゃんも止めると思っていた。
「翠はどうしたいの?」
「…絵里ちゃんに謝りたい。」
「なんで翠が謝るの?あんなに酷いことされたのに?」
「…私が先に傷付けたから。それと私は嫌がらせしたのは絵里ちゃんじゃないと思ってる。」
「話してくれないかな?でないと協力のしようがない。」
「…嫌わない?」
「俺が?翠を?」
うんと頷いた。
「それはない、大丈夫。信じて。」
電車が駅に着いてしまったので、ファーストフード店に寄る事にした。
「あのね…。」
紙コップを持った指先が震える。冷えているのはきっとドリンクのせいじゃない。
「そんなピアス、絵里ちゃんには似合わないって言っちゃったの。」
「翠が?絵里に?」
あの時のことを話して聞いてもらう。
ピアスで傷んだ耳のこと、病院に行ってもらいたい一心で傷付けてしまった言葉のこと。
「…そう言えばあの時の絵里ちゃんには届くと思った。
そうか、似合わないか、それなら外しても良いか、って考えるんじゃないかなって。
だけど、絵里ちゃん怒っちゃった。」
和津くんが黙っている。
ああ、幻滅されちゃった?
「ああ、なんかわかる。
痛みだけじゃない、何かを我慢するようなヤツじゃない。いい意味で見切りをつけるのが早いヤツだもんな。
そう、絵里なら、そっか、似合わないか、だったら我慢するなんてカッコ悪いだけ、そう考えそう。」
「だけど、それだけの何かがあったんだと思う。その事に気付かないで絵里ちゃんを傷付けた。」
「だから謝りたい?」
「うん、謝りたい。」
だけど、絵里ちゃんには避けられていたし、みんなは私が絵里ちゃんの側に行くことをよく思っていなかったから。」
「ちゃんと話してくれたら良かったのに。」
「うん、そうなんだけど…。」
簡単に言えば話しそびれてタイミングを無くした。
こんな事になるはずじゃなかった、それに尽きる。
「確かに怒り続ける絵里は、いつもと違うな。感情豊かな絵里はよく怒るけど忘れるのも早いのに。」
絵里がもし翠を嫌いになればあっさりと関係をリセットするだろう、だから無視し始めたのはわかる。
怒りのままに何回かは嫌がらせはしたかもしれない。
でもそれが長く続いて、更に半年たって帰国してもまだ続く?
なんとなく翠の言いたい事がわかってきた。
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