若松2D協奏曲

枝豆

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優しい北斗七星

この気持ちは? 北斗視点

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「あんたそりゃ正真正銘の吊り橋効果ってヤツだよ。」

週末海の家の準備でばあちゃんの家に家族でやって来た日の夜。

少しデカくなったんじゃない?こりゃ寸胴鍋1人で運べんじゃね、からの…。

「そういえばこの間女の子抱き上げられたなぁ、女の子って何キロぐらいあんの?」
従姉妹ねえちゃんに言ったら

バコン!
「いてっ!」
ねえちゃんに頭を叩かれて、
「バカ北斗!」
とまで言われて。

女の子の体重を筋トレのウエイト感覚で聞くんじゃねぇ、デリカシーってもんがないヤツだ!
と罵られた。
それからなんでそんな事になったんだ?からの…。

「少し気になっちゃうんだよね。」
とカミングアウト。
あんなに取り乱した優ちゃんは見たことがなかったから。
桜井家はそのところはあけすけに話す。
いや、ねえちゃんだけか。

ねえちゃんの初体験も、過去の彼のことも、旦那さんとの馴れ初めも全部知ってる。
今日生理だから北斗は倍動け!とか言われて抗議すると、女は大変なんだから大切にしろ、と怒られる。

理不尽だ!
けれど桜井家は女が強い。
父ちゃんも母ちゃんには勝てない。
叔父ちゃんも叔母ちゃんには甘い。
ねえちゃんに至っては叔父ちゃんも新婚の旦那さんも完全掌握してしまっている。

「あんたそりゃ正真正銘の吊り橋効果ってヤツだよ。」
「吊り橋効果?」

なんでも恐怖感や危機感を一緒に体験すると、そのドキドキを恋のドキドキと勘違いしてしまうらしい。

そっか、勘違いか。

「見極めてあげようか?」
ニヤリとねえちゃんが笑う。
「イヤ、いいよ。どうせ勘違いなんだろ?」
「バカ北斗。恋なんて勘違いの思い込みから始まるんだよ。勘違いを恋に膨らませて、恋を愛に育てるの!」
「意味わかんねー。」
「まだまだだねえ、北斗は。」

「まあ、勘違いかどうかゆっくり確かめてみたらいいよ。時間はたっぷりある。まだ4月、これから1年同じクラスなんでしょ。」

なんだよ、急に大人ぶりやがって。


従姉妹ねえちゃんの部屋を出て居間に行く。
叔父ちゃんと父ちゃんは既にビール片手に出来上がっている。
「あれ?おばちゃんは?」
「疲れたからってもう寝た。」
「相変わらず甘やかしてんなぁ。」

母ちゃんもだけど、叔母ちゃんはそんなに疲れてないのにすぐ疲れたと言う。もう無理!って言ってからの馬力はハンパないというのに。

なのに父ちゃんも叔父ちゃんもすぐに妻を甘やかす。

「あのなぁ、北斗。桜井の女は大丈夫って言っている時が一番ヤバいんだ。」
「そうそう、甘えるのは余裕がある時。余裕がある時に甘えさせてやんないと、すぐにダメになる。」
「「高校生ガキにはまだ分かんねえよなぁ。」」

酔っ払い2人は顔を見合わせてガハハっと笑い合った。
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