若松2D協奏曲

枝豆

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恋するクリスマス 

了先輩

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「よ、元気?今ここにいるって事は決めたんだな。」
「はい!」
「そうか、楽しみだな。あ、でも翠はジャスの方か。」

俺は今この大学の指揮科に通っている。元々ずっとピアノをやっていて、部活では経験のために別の楽器をと、管楽器を希望していたのだ。
なので、今俺が入っているのは管弦楽団のグループだ。
なので翠と多分同じグループで演奏できる日はきっとない。

「遥先輩は?」
「…アイツは違う大学に。」

彼女の遥はプロ志望ではなかったから、看護系の学校に進む。

「それは聞いてます、けど?」
って首を傾げた翠。
ああ、変な勘違いをしてしまった!
クリスマスイブなのに会わないのか?って事らしい。
ったく紛らわしい言い回しをしやがって!

「受験生にクリスマスはないらしい。」
とおどけてみせた。

…予備校の冬季講習、クリスマスもお正月もガッツリスケジュールが組まれている。
だけど仕方ない。
俺だってそうだったし。

「遥が変な気を回さないように、ボランティアに登録したんだ。
あわよくば会場内で…って思ったんだけど、1年は警備に回されるんだ。」

「じゃあ先輩、ずっと今日は外なんですか?」
「…うん。全く学生なのに入れないなんてなぁ。でもリハは見せてもらったよ。
ホラ、早く行かないといい場所取られちゃう。」

…ずっと外なんて寒いだろうな。これから夜が深くなればどんどん気温も下がっていく。
あっ!そう言えば。
「これあげます。」
ずっとカバンの中で出番を待っていたカイロを2つ取り出した。

「おっ、サンキュー、助かるよ。じゃあ、また後で。」

はい!と翠は軽く手を振ってくれた。

「了!火付けるぞ。」
リーダーの声かけで容器に入ったロウソクに火をどんどんと着けていく。

清心の一大イベントのキャンドルミサが始まった。



あれっ?アイツどこかで…。

中途半端な時間だというのに、こっちに向かって歩いてくる男がいる。
…誰だったっけな?

あー、翠の友達だ。

食い入るように翠を見つめて、金管の野郎どもを睨みつけていた、アイツ。
あれ?もしかしてもしかする?

「すいません、チケット無いと入れないんですけれど。」
と声をかけた。

「あっ、はい、わかってます。人を迎えに来ただけなので…。」
「山本さん?」
「えっ!あっ、はい。って、あー!」
お前、人を指差すなよ!仮にも学校の先輩だぞ!

「俺の事わかる?」
「はい、わかります。吹部の…」

「20時終わりって聞いてる?」
「はい。そうなんですけど、翠携帯OFFにしたままみたいで…。」

ははは、翠らしいな。
出演するにあたり携帯の電源をOFFにして、そのまま。

「あったかいとこで待ってても良いんだけど。多分翠帰りに俺に挨拶して帰ると思うし。だけど…我慢できるならここにいてよ。
ちょっとだけ良い事ある…かも。」

ホラっとさっき貰ったカイロをそのまま渡す。
有無を言わさずにそのまま警備の俺の隣に立たせ続けた。


















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