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アンハッピーハロウィン 富田
変わる関係
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それからしばらくは新田の側にずっといた。
朝練は早めに切り上げて駐車場で新田を待つ。一日中側にいて、帰りは迎えの車に乗るまでを見守る。
「ごめんね。」
と俯く新田になんて事もないと笑ってやる。
「気にすんな、新田が悪いんじゃない。」
と頭を軽く撫ででやる。
新田は俺と手を繋ぐようになった。
…それだけ不安なんだろう。
仁志が時々じっと見てるけど、仁志と新田は手は繋がない。
…それでいい。今だけだから。
ごめん仁志、今だけ許して。全部終わったら絶対に返すから。
仁志は何も知らない。だから巻き込まないでやってくれ。
怒りは俺にぶつけろ!
新田でも仁志でもない、この俺に!
俺が叩き切ってやる!絶対負けない!
そんな気持ちを込めて、離れたところからこっちをジトっとした目で見てるアイツを睨みつけた。
朝練を終えて、部室に向かって渡り廊下を歩いていると、アイツがこっちを見ているのに気付いた。
てくてくてく。裸足のままアイツのところに向かう。
俺に気付いたアイツは、そのままくるりと後ろを向くとそそくさと逃げ出した。
「おいっ!待てって!!」
絶対聞こえているはずなのに、アイツは止まる気配はない。
「富田?どうした?」
裸足のまま外へ出ていった俺を見咎めた悠太に
「…なんでもない。」
急いで着替えないと新田が来てしまう。
仕方なく見逃す事にした。
異変は直ぐに始まった。
「富田、急げ。」
着替えを終えて、部室前の靴箱から上履きを出して履き替えて。
…?上履きの中に違和感を感じて立ち止まる。
「悠太、ちょっと待って。」
上履きを脱いで、逆さにして。
あれっ?何もない。
違和感の正体は悠太が見つけた。
「お前、痛くねえーの?足の裏に画びょうが刺さってる。」
足に裏に金色の画びょうが刺さってた。
その瞬間に察した。
…よしっ!やっと俺のところに来たか。望むところだ!
「痛くない。剣道してたらそうなるだろ?」
裸足で外を走ったこともある。面の皮だけじゃなくて足の裏の皮も俺はぶ厚い。
「ならねーよ。」
って悠太は言うけれど、きっとお前もこんなんだろうが。
画びょうを抜いて、靴を履き直して。
画びょうは近くの掲示板に適当に刺した。
「行くぞ!」
廊下を叱られない程度の速さで歩いて新田を迎えに走った。
今朝のことを和津にだけは伝えておく。
「和津、どうやら次のターゲットは俺になったらしい。」
「お前にか?」
「ああ、良かったよ。俺で。後はどんなことされたんだったっけ?」
「ホント大丈夫か?翠がやられたのは体操着とか教科書とかだけど。」
「俺は大丈夫。あんなヤツには負けない。やられそうな事わかってるし。…俺の場合きっと靴箱だけだな。」
俺は学校に2つの靴箱と4つのロッカーを持っている。
靴箱は昇降口にひとつ、部室前にひとつ。
ロッカーは教室にひとつ、昇降口脇のロッカー室にひとつ、部室に2つ。
「なら多分大丈夫だ。」
「鍵つけてんの?」
「ううん、空っぽに出来るから。」
「はっ!?」
元々荷物はほとんど部室のロッカーだ。
毎日朝練をする剣道部。
剣道人気が衰えて、部員の数よりロッカーの数の方が多いから、3年が引退したらロッカーをもうひとつ使わせてもらえている。
朝、自転車に乗って学校に来て、そのまま部室で着替える。
制服もジャージも上履きも基本は部室に置きっぱなし。
教科書を揃えるのも、副読本を置いてあるのも全部部室。荷物の入れ替えは部室でやってる。
「アイツこそ俺のロッカー開けたら驚くと思う。むしろゴミとか変なもの入れられる方が心配。」
「富田、強ぇ。」
唯一盗られるとしたら上履きくらいか?
まっ、それも部室に移動しちまえばいい…と考えて思い直す。
…確か部室に先輩が残してった上履きが転がってたな。
ひとつくらい囮があっても良いのかも。
現場を抑えたら問い詰められる。
「誰にも言うなよ。」
「わかってる。翠にも。」
「ああ、言わねーって。」
せっかく怒りが俺に向かってるんだから、新田にこれ以上余計な波風を立てたくはない。
朝練は早めに切り上げて駐車場で新田を待つ。一日中側にいて、帰りは迎えの車に乗るまでを見守る。
「ごめんね。」
と俯く新田になんて事もないと笑ってやる。
「気にすんな、新田が悪いんじゃない。」
と頭を軽く撫ででやる。
新田は俺と手を繋ぐようになった。
…それだけ不安なんだろう。
仁志が時々じっと見てるけど、仁志と新田は手は繋がない。
…それでいい。今だけだから。
ごめん仁志、今だけ許して。全部終わったら絶対に返すから。
仁志は何も知らない。だから巻き込まないでやってくれ。
怒りは俺にぶつけろ!
新田でも仁志でもない、この俺に!
俺が叩き切ってやる!絶対負けない!
そんな気持ちを込めて、離れたところからこっちをジトっとした目で見てるアイツを睨みつけた。
朝練を終えて、部室に向かって渡り廊下を歩いていると、アイツがこっちを見ているのに気付いた。
てくてくてく。裸足のままアイツのところに向かう。
俺に気付いたアイツは、そのままくるりと後ろを向くとそそくさと逃げ出した。
「おいっ!待てって!!」
絶対聞こえているはずなのに、アイツは止まる気配はない。
「富田?どうした?」
裸足のまま外へ出ていった俺を見咎めた悠太に
「…なんでもない。」
急いで着替えないと新田が来てしまう。
仕方なく見逃す事にした。
異変は直ぐに始まった。
「富田、急げ。」
着替えを終えて、部室前の靴箱から上履きを出して履き替えて。
…?上履きの中に違和感を感じて立ち止まる。
「悠太、ちょっと待って。」
上履きを脱いで、逆さにして。
あれっ?何もない。
違和感の正体は悠太が見つけた。
「お前、痛くねえーの?足の裏に画びょうが刺さってる。」
足に裏に金色の画びょうが刺さってた。
その瞬間に察した。
…よしっ!やっと俺のところに来たか。望むところだ!
「痛くない。剣道してたらそうなるだろ?」
裸足で外を走ったこともある。面の皮だけじゃなくて足の裏の皮も俺はぶ厚い。
「ならねーよ。」
って悠太は言うけれど、きっとお前もこんなんだろうが。
画びょうを抜いて、靴を履き直して。
画びょうは近くの掲示板に適当に刺した。
「行くぞ!」
廊下を叱られない程度の速さで歩いて新田を迎えに走った。
今朝のことを和津にだけは伝えておく。
「和津、どうやら次のターゲットは俺になったらしい。」
「お前にか?」
「ああ、良かったよ。俺で。後はどんなことされたんだったっけ?」
「ホント大丈夫か?翠がやられたのは体操着とか教科書とかだけど。」
「俺は大丈夫。あんなヤツには負けない。やられそうな事わかってるし。…俺の場合きっと靴箱だけだな。」
俺は学校に2つの靴箱と4つのロッカーを持っている。
靴箱は昇降口にひとつ、部室前にひとつ。
ロッカーは教室にひとつ、昇降口脇のロッカー室にひとつ、部室に2つ。
「なら多分大丈夫だ。」
「鍵つけてんの?」
「ううん、空っぽに出来るから。」
「はっ!?」
元々荷物はほとんど部室のロッカーだ。
毎日朝練をする剣道部。
剣道人気が衰えて、部員の数よりロッカーの数の方が多いから、3年が引退したらロッカーをもうひとつ使わせてもらえている。
朝、自転車に乗って学校に来て、そのまま部室で着替える。
制服もジャージも上履きも基本は部室に置きっぱなし。
教科書を揃えるのも、副読本を置いてあるのも全部部室。荷物の入れ替えは部室でやってる。
「アイツこそ俺のロッカー開けたら驚くと思う。むしろゴミとか変なもの入れられる方が心配。」
「富田、強ぇ。」
唯一盗られるとしたら上履きくらいか?
まっ、それも部室に移動しちまえばいい…と考えて思い直す。
…確か部室に先輩が残してった上履きが転がってたな。
ひとつくらい囮があっても良いのかも。
現場を抑えたら問い詰められる。
「誰にも言うなよ。」
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「ああ、言わねーって。」
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