グリーンピアト物語~命を紡いで愛を紡ぐ・国王様の愛した女医さん~

紫メガネ

文字の大きさ
20 / 27
忍び寄る影と深まる愛

愛とお金…

しおりを挟む
 その夜。
 
 お風呂を済ませたエルファは、フィーネからの電話に待っていた。

 
 時刻はもう23時を回っていた。

 
 100万ギロ。
 エルファが結婚式の時に、ないかあった時の為に持ってきたお金が5000万ギロある。
 そのお金の事はシャルロにも誰にも話してはいない。

 もしもの時。
 そしてどうしても、お王室が嫌になり出てゆくときに必要だろうと隠し持っているお金である。

 そのお金からフィーネに100万ギロ渡す事にした。
 そうしないと、とんでもない事になる事が判っているからだ。


 エルファの妹のフィーネは、エルファとは血の繋がらない妹。
 エルファの母が亡くなり、ペリロッドが再婚した相手が連れて来た連れ子である。

 エルファが小学校生高学年になった頃、ペリロッドは同僚の女性と再婚した。
 連れ子にエルファより下のフィーネと言う女の子がいて、女の子同士仲良くなれると信じていた。
 
  しかし再婚から半年もたたないうちから、継母は豹変して行き、娘のフィーネには新しい服を作るがエルファには古着ばかりを買ってきて着せるようになった。

 ご飯もフィーネには美味しい料理を用意して、エルファには冷えたご飯に卵だけしか与えない日々が多かった。
 その為、いつもお腹を空かしていてエルファ。

 たまに見かねた近所の人が、エルファにご飯を作ってくれた事もあったが、それが判ると継母は烈火のごとく怒りエルファに酷い暴力をふるっていた。
 それが怖くてご近所の人からの好意にも甘えることが出来なかったエルファ。

 ペリロッドは仕事が忙しく家にいない日々が多く、たまに帰って来た時にエルファが継母の話をすると「そんなことはないだろう」と言って信じてくれない事が多く、ペリロッドの前では継母もフィーネも仲良くふるまっている事からエルファは言うも一人で辛い日々を絶えていた。

 大学には自分の力で進学したエルファ。
 ペリロッドは「なぜ何も相談しないのだ! 」と言ってきたが、エルファは「いつも私の事は信じてくれない。他人の事は信じる癖に」と初めて大声で怒った。

 そんなエルファを見て、ペリロッドは今までエルファの言ってきた事を真に受けなかったわけではなかったが、塩とで家を空ける事が多くエルファを一人にはできないと、その想いが多く認めることが出来なかったと話した。

 その後、近所の人の証言などでエルファがずっと虐待行為をされていた事実を掴んだ。

 だがその頃、継母は不治の病にかかり余命僅かになっていた。

 エルファが大学へ進み2年経過した頃、継母は病死した。

 これで平和になるとペリロッドは思っていたが、今度はフィーネが異常な行動をするようになった。

 フィーネは看護学校へ進み看護師になった。
 しかし、ゆく先々で不審な事件ばかりが起こりフィーネが「好きな人が出来て、結婚するの」と言ってきた男性は暫くすると行くへ不明になりいつの間にかどこかで自殺している事が多かった。

 不審に思ったペリロッドは、暫くフィーネを監視していた。

 すると。
 フィーネは異常なくらい、好きになった男性に着きまとい言う通りにならなくなると監禁にしたり嫌がらせをしている事が判明した。
 邪魔する人は「死ねばいい」と言って、追い詰めている事が判った。

 これは異常だと判断したペリロッドは、フィーネを病院に連れて行く事にした。

 精神鑑定を受けたフィーネは「双極性障害」がある事が判明した。
 
 その原因が、フィーネが小さい頃に父親が亡くなっている事が大きく影響していた。
 腕利きの医師だった父親は、いつも家にいない事が多く母親はいつも「浮気している」と口癖のように言っていた。
 しかしある日、仕事に行ったきり父親は帰ってこなかった。
 そして暫くすると、山奥で首をつって死んでいるのを発見された。

 母親は泣く事もなく「どこかの女に殺されたのよ。私を裏切るから」と言っていた。

 父親がなくなり、残された遺産で贅沢はできていたがその遺産も底を尽きようとしていた時にペリロッドと出会い再婚した。

 しかしフィーネの異常な性格は治らないままで、母親がエルファにしている虐待も当然の様に見ていた。
 そして母親がなくなると、フィーネも同じようにエルファに暴力をふるいお金を巻き上げる事も多かった。

 
 ペリロッドはフィーネを病院に入れる決意をした。
 相当な異常者になってしまったフィーネを放置していると、本当に取り返しがつかなくなると判断したのだ。
 エルファは結婚させて、フィーネは病院に入れれば平和になるとペリロッドは考えた。

 

 しかしフィーネは病院を脱走して、再びエルファに近づいてきたのだ…。






 みんなが寝静まった深夜を回る頃に、フィーネから着信があった。

 エルファは誰にも見つからないように、裏口からお城の外に出てきた。



「お姉様、来てくれて有難う」


 かん高い声がしてエルファが振り向くと、そこには派手な赤いバラ模様のワンピースを着て黒いカーティガンを羽織って、赤いハイヒールを履いている女性がいた。
 黒い長い髪で、前髪は目のギリギリまで長く全体的に顔を隠すような髪型をしている。

 見える目つきは狐の王な目をしていて、低い団子鼻に分厚い唇。

 見た目は派手にしているが、異様な雰囲気が漂っている。


「フィーネ…。どうやって病院を抜け出したの? みんな心配しているわよ」
「心配なんてしていないわ。私を縛り付けて、酷い事しているもの」


 この女性がフィーネ。
 年齢的にエルファより年下のようだが、見た目は既に40代の様に老けて見える。


「約束のお金、持って来てくれた? 」

 
 ニコっと笑いかけてくるフィーネ。

 エルファは封筒を差し出した。



「有難う」


 ニコッと笑って封筒を受け取ったフィーネは中を見た。


「すごいわね、100万ギロのお金をこんなに早くだせるなんて。さすが王室ね。これからも、よろしくねお姉様。頼りにしているわ」

 ウフっと笑ったフィーネはまるで魔女のような顔をしてた。


「また電話するわ。いつもでお金渡せるようにしておいてね」
「フィーネ…。貴女は幸せ? 」

「ええ、幸せよ。だって、お金は裏切らないから。人と違ってね」
「…私は、あなたの幸せを祈っているから」

「有難う。じゃあね…」

 お金を受け取り上機嫌で帰って行ったフィーネ。

 
 深いため息をついて、エルファはお城の中へと戻って行った。





 静かな廊下を足音を忍ばせて歩いて戻って来たエルファ。

 

 部屋の前に来ると、音がしないようにそーっとドアを開けた。



 部屋の中は暗く、小さな豆電球のみついていた。

 出て行った時と変わらないままで、エルファはホッとして、そのまま寝室へと向かった。




 音をたてないように寝室のドアを開けて入ってゆくと、シャルロの心地よい寝息が聞こえてきた。


 気づかれていないようだ…。
 
 ホッとしたエルファは、そのまま静かにベッドに戻った。


 
 ホッとしてそのまま眠りに着こうとした時…。

 ギュッと、抱き着かれる感覚を感じてハッと目を開けたエルファ。


「…体は冷えています…。もしかして、外に行っていたのですか? 」


 耳元で聞こえるシャルロの声に、ドキッとしたエルファ。


 だが…

(大丈夫です。僕が、護りますから。…貴女を、愛しています…)


 また胸の奥の方から聞こえた声に、エルファは何か遠い記憶を思い出そうとしている自分がいる事に気づいた。

 

 なんだろう…
 胸の奥から聞こえる声…
 誰の声なのだろう?


 遠い目をして天井を見ていたエルファを、シャルロがギュッと抱きしめた。

 
 この感覚…前にもどこかで感じたことがある…どうして? 

 
 ドキドキと胸の高鳴り置感じたエルファ。


「…こんなに冷えていては、ぐっすり眠れませんから。今夜は、こうして抱きしめる事を許して下さい」

 
 なんて優しい声なのだろう。
 こんな私に、優しくしてくれるなんて…。


 何も言えなくなり、エルファは小さく頷くしかできなかった。



 シャルロに抱きしめられながら、その夜は眠りについたエルファ。



 いつもより心が軽くなるのを感じながら、そのまま眠りについたエルファ…。



 
 翌日。


 カーテンから朝日が指してきて目が覚めてゆくのを感じたエルファ。



 耳もとでスヤスヤと心地よい寝息を感じて、顔だけ振り向いて見ると。
 綺麗な寝顔のシャルロがいた。


 昨夜。
 フィーネにお金を渡して、気づかれないように戻ってきてベッドに入った。
 そのまま寝ようとしていたが、ギュッとシャルロに抱きしめられた。
 体が冷えていると言われて、抱きしめられたまま眠りについた。


 
 目覚めたエルファは、とても体が軽くなっているのを感じた。
 体だけではなく…何となく気持ちも軽くなっていた。


 シャルロを起こさないように、ゆっくりとベッドを出たエルファ。


 

 洗面を済ませて、ふと鏡を見たエルファはいつもより顔色がいいのを感じた。

 こんなに顔色がいい自分を見るのは、初めてかもしれないとエルファは思い、何となく嬉しさを感じた。


 ずっと抱きしめてくれていたシャルロは、ぐっすり眠れたのだろうか?

 そう思ったエルファ。




 洗面を済ませてエルファが戻って来ると、ちょうどシャルロが起きてきた。


「おはようございます」

 爽やかに挨拶をしてくるシャルロに、ちょっとはにかんだ笑顔を向けたエルファ。

「おはようございます…」

 エルファが挨拶をすると、さわやかな笑顔のままシャルロは洗面所に向かって行った。


 
 寝不足のような顔はしていなかったような気がするけど…。


 そう思ったエルファ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...