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第一部 借金奴隷編
第3話 借金奴隷
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ギルド内の不正の可能性を報告したら、何故か自分が犯人扱いされて、クビを言い渡されました。
「ちょっと待ってくださいギルマス! 横領があるかもと報告したのは私ですよ。報告書をよく見ていただけましたか?」
少しは落ち着いて、反論を試みます。
「ああ、見たとも。よくまとまっているな。巧妙に隠されていて、普通では横領があったととても気付かんだろうな」
「そうでしょう。私以外では見つけられなかったと思います(エッヘン!)」
こんな状態でも、褒められれば嬉しいです。
「そうだな、巧妙すぎて横領した本人以外見抜けないんじゃないか!」
「えっ?!」
「これは、犯人が、犯行が露見する前に自作自演で告発し、自分が容疑者から外れる狙いがあると見るのが一番しっくりくる」
なぜそうなるのでしょうか? ギルマスの考えがわかりません。
「そんな。言いがかりです!!」
「調査では横領などの不正は君の自作自演だとの結論になった。早く罪を認めてしまった方が楽になれるぞ」
「私はやってません! 無実です!!」
「仕方がないな。認めないならこのまま警備隊に引き渡すしかない」
ギルマスは完全に私を犯人扱いです。他の幹部も私を助けようとは考えていないようです。
こうなったら、警備隊でどれだけ話を聞いてもらえるかわかりませんが、粘り強く事情を説明して、無実を訴えていくしかありません。
私は覚悟を決めました。ですがそこに待ったがかかります。
「ギルマス。ちょっと待ってください」
「何だね、リーザ。君は彼女を庇いだてするのか!」
声を上げたのはサブマスのリーザさんでした。
彼女は半年前に王都のギルド本部から、ここミマスに赴任してきた四十歳前後だと思われる目付きの鋭い女性で、睨まれたらギルマスでも言い返せません。
大変厳しい方ですが、間違ったことを言われる方ではないので、その点は信頼できます。
私は救いの女神が現れたと安堵します。
「庇いませんが、警備隊に突き出すのは反対です。これはギルド内部の問題ですから、内部で処理するべきでしょう。下手に騒ぎ立てて、表沙汰になれば、ギルドの信用が失墜します」
「うむ、そうか? ならどうすべきだと考える?」
「そうですね。彼女には責任をとってもらい、横領で出た損失を弁済してもらいましょう」
救いの女神だと思ったサブマスは、利益優先主義者の守銭奴でした。
「私は横領なんてしてません! お金なんか取っていないのだから、返すいわれもありません!!」
「あら、私はあなたが取ったなんて言ってないわ。報告書を読んだけど、あなたが受付のお金を集計する係になったのは三ヶ月前からよね?」
「はいそうです。それで数字が合わないので変だと思って気が付きました!」
「毎日の個々の取引を全て計算したのですもの、凄い量だったでしょう。よく計算できたわね?」
「私は、計算は得意ですから(エッヘン!)」
実は、計算を早くするために、オリジナル魔法の「思考加速」や「並列処理」を使っています。
これは考える速度や一度に処理できる量を増やす魔法です。
これらの魔法は、無から有を生み出すのでもなく、重たいものを移動させるわけでもないので、必要な魔力量は極僅かで済みます。
魔法は何もないところから、何かを作り出すのには大量の魔力が必要となります。
例えば、「ファイヤボール」や「ファイヤアロー」などのように、何もない所に炎を出すには沢山の魔力が必要ですが、燃料に火を着ける「着火」はさほど魔力を必要としません。
私の魔力量でもなんとか「着火」は使用できますが、「ファイヤボール」などはとても作り出せません。
また、物を移動させる場合は、重たい物を移動させるほど魔力を食います。
石や水玉などを移動させるには沢山の魔力が必要ですが、空気を移動させるのは魔力をさほど必要としません。
ですので、私でも初級の風魔法「エアーカッター」ならば使えます。
同じ風魔法でも中級以上のものは、一度に動かす空気の量が多く、「トルネード」や「ストーム」などは私にはとても使えません。
まあ、魔法の話は兎も角。私は他の人の三倍、いえ、五倍は早く計算ができます。しかも、正確に間違いなく(ドヤ!!)。
「そのようね」
サブマスは私を見て目を細めます。
「でも、これだけ計算できるのだから、受付嬢個人ごとの集計も簡単にできたでしょうね?」
「それは……」
その通りです。私なら個人ごとの集計は簡単にできます。ですが、これを私がやってしまうと、私が横領の犯人を特定することになってしまいます。
ギルド内の私の立場を考えると、私が犯人を特定した場合、周りから反感を買うことになりかねません。
そのため、わざと犯人を特定しないで横領が行われている可能性があることを報告したのです。
できるだけ、犯人の特定はギルドの上の立場にある人にやってもらいたかったのです。
「あなたは横領の犯人を見つける能力がありながら、それを行なわず犯人を見逃した。責任がある、受付の集計係にありながら」
「うっ!」
サブマスの言う通りです。言い訳ができません。
「あなたは責任を放棄してギルドに損害を与えたのよ。損害額を弁済するのは当然でしょう! それとも、警備隊に突き出されて犯罪奴隷になる!!」
サブマスは私に詰め寄ります。
「ですが、損害額を弁済できるほどの貯蓄も手持ちもありません」
私は、サブマスの前で項垂れてしまいます。
「仕方がないわね。なら、借金奴隷になってもらいましょう。犯罪奴隷よりはましでしょ」
「借金奴隷……」
私は目の前が真っ白になります。
「白金貨十枚(一億円)くらい十年もすれば返し終わるわよ」
一年間に金貨百枚(一千万円)ずつ返済して十年間か。そんな、一年間に金貨百枚稼げる仕事って……。
ちなみにギルドの受付嬢は、月給金貨二枚と銀貨五十枚(二十五万円)。年収にして金貨三十枚(三百万円)です。
そんなの返済できないです!
ギルドには誰も味方がいません。誰でもいいから助けてください!!
* 銅貨=十円、銀貨=千円、金貨=十万円、白金貨=千万円
「ちょっと待ってくださいギルマス! 横領があるかもと報告したのは私ですよ。報告書をよく見ていただけましたか?」
少しは落ち着いて、反論を試みます。
「ああ、見たとも。よくまとまっているな。巧妙に隠されていて、普通では横領があったととても気付かんだろうな」
「そうでしょう。私以外では見つけられなかったと思います(エッヘン!)」
こんな状態でも、褒められれば嬉しいです。
「そうだな、巧妙すぎて横領した本人以外見抜けないんじゃないか!」
「えっ?!」
「これは、犯人が、犯行が露見する前に自作自演で告発し、自分が容疑者から外れる狙いがあると見るのが一番しっくりくる」
なぜそうなるのでしょうか? ギルマスの考えがわかりません。
「そんな。言いがかりです!!」
「調査では横領などの不正は君の自作自演だとの結論になった。早く罪を認めてしまった方が楽になれるぞ」
「私はやってません! 無実です!!」
「仕方がないな。認めないならこのまま警備隊に引き渡すしかない」
ギルマスは完全に私を犯人扱いです。他の幹部も私を助けようとは考えていないようです。
こうなったら、警備隊でどれだけ話を聞いてもらえるかわかりませんが、粘り強く事情を説明して、無実を訴えていくしかありません。
私は覚悟を決めました。ですがそこに待ったがかかります。
「ギルマス。ちょっと待ってください」
「何だね、リーザ。君は彼女を庇いだてするのか!」
声を上げたのはサブマスのリーザさんでした。
彼女は半年前に王都のギルド本部から、ここミマスに赴任してきた四十歳前後だと思われる目付きの鋭い女性で、睨まれたらギルマスでも言い返せません。
大変厳しい方ですが、間違ったことを言われる方ではないので、その点は信頼できます。
私は救いの女神が現れたと安堵します。
「庇いませんが、警備隊に突き出すのは反対です。これはギルド内部の問題ですから、内部で処理するべきでしょう。下手に騒ぎ立てて、表沙汰になれば、ギルドの信用が失墜します」
「うむ、そうか? ならどうすべきだと考える?」
「そうですね。彼女には責任をとってもらい、横領で出た損失を弁済してもらいましょう」
救いの女神だと思ったサブマスは、利益優先主義者の守銭奴でした。
「私は横領なんてしてません! お金なんか取っていないのだから、返すいわれもありません!!」
「あら、私はあなたが取ったなんて言ってないわ。報告書を読んだけど、あなたが受付のお金を集計する係になったのは三ヶ月前からよね?」
「はいそうです。それで数字が合わないので変だと思って気が付きました!」
「毎日の個々の取引を全て計算したのですもの、凄い量だったでしょう。よく計算できたわね?」
「私は、計算は得意ですから(エッヘン!)」
実は、計算を早くするために、オリジナル魔法の「思考加速」や「並列処理」を使っています。
これは考える速度や一度に処理できる量を増やす魔法です。
これらの魔法は、無から有を生み出すのでもなく、重たいものを移動させるわけでもないので、必要な魔力量は極僅かで済みます。
魔法は何もないところから、何かを作り出すのには大量の魔力が必要となります。
例えば、「ファイヤボール」や「ファイヤアロー」などのように、何もない所に炎を出すには沢山の魔力が必要ですが、燃料に火を着ける「着火」はさほど魔力を必要としません。
私の魔力量でもなんとか「着火」は使用できますが、「ファイヤボール」などはとても作り出せません。
また、物を移動させる場合は、重たい物を移動させるほど魔力を食います。
石や水玉などを移動させるには沢山の魔力が必要ですが、空気を移動させるのは魔力をさほど必要としません。
ですので、私でも初級の風魔法「エアーカッター」ならば使えます。
同じ風魔法でも中級以上のものは、一度に動かす空気の量が多く、「トルネード」や「ストーム」などは私にはとても使えません。
まあ、魔法の話は兎も角。私は他の人の三倍、いえ、五倍は早く計算ができます。しかも、正確に間違いなく(ドヤ!!)。
「そのようね」
サブマスは私を見て目を細めます。
「でも、これだけ計算できるのだから、受付嬢個人ごとの集計も簡単にできたでしょうね?」
「それは……」
その通りです。私なら個人ごとの集計は簡単にできます。ですが、これを私がやってしまうと、私が横領の犯人を特定することになってしまいます。
ギルド内の私の立場を考えると、私が犯人を特定した場合、周りから反感を買うことになりかねません。
そのため、わざと犯人を特定しないで横領が行われている可能性があることを報告したのです。
できるだけ、犯人の特定はギルドの上の立場にある人にやってもらいたかったのです。
「あなたは横領の犯人を見つける能力がありながら、それを行なわず犯人を見逃した。責任がある、受付の集計係にありながら」
「うっ!」
サブマスの言う通りです。言い訳ができません。
「あなたは責任を放棄してギルドに損害を与えたのよ。損害額を弁済するのは当然でしょう! それとも、警備隊に突き出されて犯罪奴隷になる!!」
サブマスは私に詰め寄ります。
「ですが、損害額を弁済できるほどの貯蓄も手持ちもありません」
私は、サブマスの前で項垂れてしまいます。
「仕方がないわね。なら、借金奴隷になってもらいましょう。犯罪奴隷よりはましでしょ」
「借金奴隷……」
私は目の前が真っ白になります。
「白金貨十枚(一億円)くらい十年もすれば返し終わるわよ」
一年間に金貨百枚(一千万円)ずつ返済して十年間か。そんな、一年間に金貨百枚稼げる仕事って……。
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