勘違い令嬢は婚約破棄したい 予言の書によると俺は将来浮気するらしい。だから婚約破棄と言われても、それ予言の書でなく異世界日本のラノベだから!

なつきコイン

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婚約破棄宣言は突然に

第1話 婚約破棄宣言 (ウォール)

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「今日、この場をもって、わたくしアカシア・ウェスタン・ヘムロックは、ウォールナット・ビーン、あなたとの婚約を破棄させていただきますわ!」

 カンバラ王国の王都にある、王立高等学院の大ホールに、婚約破棄を宣言する少女の声が響き渡る。

 現在、大ホールでは、全学生と教員が出席して、今年入学した新入生を歓迎する、学院主催のパーティーが行われている最中であった。
 そんな中で大声を上げれば、出席者の注意を引くことになるのは当然のことで、しかも、その内容が色恋沙汰となれば、当然、その全員から注目を浴びることになる。

 そんな、衆人環視の中、毅然と立つ少女の姿は、とても入学したばかりの新入生の態度には見えなかった。
 もっとも、その態度以前に、彼女は十六歳の少女と呼ぶには、既に大人びた美貌の持ち主であった。

 その容姿は、肩まであるストレートの黒髪と、少し吊り上がった黒い瞳の目は、ともすれば冷たい印象を与えているが、それでも女神をも思わせる程、整った顔であった。
 そして、下品にならない程度に大きな張りのあるバストと、細い腰から続く、丸みを帯びて引き締まったヒップは、思わず抱き寄せたくなる、誰をも魅了するものだった。

 彼女の名前は、アカシア・ウェスタン・ヘムロック。知る人ぞ知る、西の公爵家の令嬢であった。

 そして、その彼女に婚約破棄を言い渡された冴えない男が、この俺、ウォールナット・ビーンである。
 平凡な容姿であるが、これでも彼女より一つ年上の十七歳、クィーンズランド辺境領を治める、ビーン辺境伯の嫡男である。

 実は、異世界からの転生者なのであるが、そのことは誰も知らない。

 さて、婚約者から突然婚約破棄を宣言された俺であるが、流石に、驚きの表情を隠せないでいた。

 一つ年下の婚約者である彼女が、奇行に走るのはいつものことなので慣れていた。
 だが、まさか、学院の入学パーティーの最中に婚約破棄を言い渡されるとは、全くもって予想だにしていなかったからだ。

 ただ、彼女が奇行に走る原因は、そのほとんどが『予言の書』であることも承知していた。
 また、新しい『予言の書』を読んで、何か勘違いしている可能性が高い。
 気を取り直して、婚約者であるアカシアに問いただした。

「突然何を言い出すんだいアカシア。僕が何か君の気に障るような事をしたかい?」

 アカシアとの婚約は、王命により三年前に結ばれたものだ。

 政略結婚であったが、俺にとっては、爵位が上の娘でもあり、少し、わがままな性格で、勘違いが甚だしいという問題点はあったが、それを埋め合わせて余りある容姿もあり、自分にはもったいない相手だと、満足していた。

 一方、アカシアは、王命ならば仕方がないと割り切っていたと思う。

 時々、彼女が、わがままを言い、勘違いから奇行に走っていたが、俺がそれを受け止めることで、婚約者として、三年間の交際が続いていた。

 それが、突然の婚約破棄宣言である。
 俺には婚約破棄に繋がる不始末をした覚えがない。
 ならば、これも、原因は『予言の書』だろう。
 そう結論づけた俺は、落ち着いて彼女の話を聞くことにした。

「大有りよ! あなた、私という婚約者がいながら浮気をするつもりでしょう!」
「浮気をするつもりって、僕はそんな気はないよ。アカシア、君一筋だよ」

 浮気をしたから文句を言われるなら、まだ納得できるが、浮気をする前から、浮気をしそうだと文句を言われるとは思わなかった。
 大体、俺には浮気ができるような、女性の目を引く容姿も、いかした話術も、そんなものは一つも持ち合わせていなかった。

「嘘おっしゃい!! これから、そこの男爵の娘と浮気するんだわ!」
「男爵の娘?」

 俺はアカシアの指差す方に視線を向ける。
 周りの学生達もそれに倣って、一人の少女に視線を向けた。

 その少女は、小柄で、ふわふわとしたローズピンク色の髪をしていた。
 皆の視線を集め「え、私?」と慌てている様は、いかにも守ってあげたい系の可愛い小動物のようであった。

 しかし、全く見覚えがない。
 王立高等学院には、貴族の子女しか入れない。
 平民は入れないのだから、貴族の娘なのだろうが、貴族の令嬢にこんな娘いただろうか?

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