死にたい人集まれ!

鯖乃味噌煮

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ネットにて(4)

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僕が、電車を乗り継いでまで、遠い場所に行こうとする理由はただ一つ。
知っている人に出会いたくないからだ。

都会でも、怖い。
たまたま顔を知っているか、知っていないかぐらいの人に出会う事が怖すぎる。

大学生活の中では、それが普通となっているのだが、プライベートやアルバイトでは違う。何かが僕のストレスとなって胃が痛くなる。
多分、大学生活では、感覚がマヒしているのだろう。非日常の生活だから。

僕は、あまり地元民でも知らないような、ローカル線に乗って職場に行く。
だから、ほとんどの確率で誰にも会わないし、誰と話す必要もない。

さっきの若い衆を見るのも、また胃が痛くなる。
僕は、おっさんなのだろうか?

町並は、最近、改修工事の入った高架下を歩く。治安が良くなり、風俗街や、怪しげなお店は減った方なのだが、もう少し北に向かうと、例の店が多くなる。
どれだけ、公共団体が手を入れようと、人間の欲望にはかなわない。しかし、キャッチのお兄さんやお姉さんはなにやら楽しそうだ。

乱雑なビルの中に、引き締められた店の数々は、まさに「欲望」そのものだ。
「まだ、入るんちゃう?」「もうちょいいけるんちゃう?」
ここらのビルのオーナーは、どんな人なのかはわからないが、まともではないだろう。

僕は、ぼんやりとそれらを見ながら、道を歩く。それは、決して足取りの軽いものでもないが、重いものでもない。何も考えずに、過ごせる時間がまた過ごせる。

アルバイトは、中途半端だ。

責任を果たさなくてもいいが、ある程度は店に貢献しなければならない。
「バイトがそんなに、責任を負わなくていいねん。」
そう言った店長の言葉が優しく響くものの、半分は嘘なのだろう。

だが、また、あの厳しい日常を送るよりかは幾分かまし。

ローカル線の駅に着く。
メイン都市部の駅に比べると、誰もいないほどの人数しか待っていない。
人間が少ないので、人の体温で温かくなる変な感触もない。

本数は少ないが、全くないわけではない。
しかし、一本逃せば間に合わないくらいの本数なので、スマートフォンの指示によって確実に乗れる時間を設定してもらう。

地下にある、この駅は人は少ないが、変な人が多い。

明らかに、障がいを持っている人もいれば、少し頭のねじがとれているのではないか?という人もいる。
僕がさっき乗った電車とは、また違う種類の変人が多い。

人間は無意識に、自分に近い場所を選ぶのだろう。

アナウンスが流れる。機械的な声で。日本語、英語、中国語、韓国語の順番でなっていく。
この駅は、一人しか乗務員はいない。

ドアが開く。

この駅は終点のはずなのに、ドアが開いても下りないおじいさんがいる。
オレンジ色の、優先座席に座っている。

僕は、できるだけ、そのおじいさんから遠ざかるように、違う座席に座る。
スマートフォンを取り出す。
Twitterを開き、見たいような、見ても同じような情報を見る。
ゲーム画面を開き、やりたいような、そうでもないような遊びを始める。

他の大学生の生活は知らない。
けれど、僕にとってが、これがリアルであり、これが僕の大学生活なんだ。
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