3 / 4
ネットにて(4)
しおりを挟む僕が、電車を乗り継いでまで、遠い場所に行こうとする理由はただ一つ。
知っている人に出会いたくないからだ。
都会でも、怖い。
たまたま顔を知っているか、知っていないかぐらいの人に出会う事が怖すぎる。
大学生活の中では、それが普通となっているのだが、プライベートやアルバイトでは違う。何かが僕のストレスとなって胃が痛くなる。
多分、大学生活では、感覚がマヒしているのだろう。非日常の生活だから。
僕は、あまり地元民でも知らないような、ローカル線に乗って職場に行く。
だから、ほとんどの確率で誰にも会わないし、誰と話す必要もない。
さっきの若い衆を見るのも、また胃が痛くなる。
僕は、おっさんなのだろうか?
町並は、最近、改修工事の入った高架下を歩く。治安が良くなり、風俗街や、怪しげなお店は減った方なのだが、もう少し北に向かうと、例の店が多くなる。
どれだけ、公共団体が手を入れようと、人間の欲望にはかなわない。しかし、キャッチのお兄さんやお姉さんはなにやら楽しそうだ。
乱雑なビルの中に、引き締められた店の数々は、まさに「欲望」そのものだ。
「まだ、入るんちゃう?」「もうちょいいけるんちゃう?」
ここらのビルのオーナーは、どんな人なのかはわからないが、まともではないだろう。
僕は、ぼんやりとそれらを見ながら、道を歩く。それは、決して足取りの軽いものでもないが、重いものでもない。何も考えずに、過ごせる時間がまた過ごせる。
アルバイトは、中途半端だ。
責任を果たさなくてもいいが、ある程度は店に貢献しなければならない。
「バイトがそんなに、責任を負わなくていいねん。」
そう言った店長の言葉が優しく響くものの、半分は嘘なのだろう。
だが、また、あの厳しい日常を送るよりかは幾分かまし。
ローカル線の駅に着く。
メイン都市部の駅に比べると、誰もいないほどの人数しか待っていない。
人間が少ないので、人の体温で温かくなる変な感触もない。
本数は少ないが、全くないわけではない。
しかし、一本逃せば間に合わないくらいの本数なので、スマートフォンの指示によって確実に乗れる時間を設定してもらう。
地下にある、この駅は人は少ないが、変な人が多い。
明らかに、障がいを持っている人もいれば、少し頭のねじがとれているのではないか?という人もいる。
僕がさっき乗った電車とは、また違う種類の変人が多い。
人間は無意識に、自分に近い場所を選ぶのだろう。
アナウンスが流れる。機械的な声で。日本語、英語、中国語、韓国語の順番でなっていく。
この駅は、一人しか乗務員はいない。
ドアが開く。
この駅は終点のはずなのに、ドアが開いても下りないおじいさんがいる。
オレンジ色の、優先座席に座っている。
僕は、できるだけ、そのおじいさんから遠ざかるように、違う座席に座る。
スマートフォンを取り出す。
Twitterを開き、見たいような、見ても同じような情報を見る。
ゲーム画面を開き、やりたいような、そうでもないような遊びを始める。
他の大学生の生活は知らない。
けれど、僕にとってが、これがリアルであり、これが僕の大学生活なんだ。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる