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第1章

こう、押し出す感じに。

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 私たちことライムが新しく冒険者パーティーに加わってから2日が経った。

 ルーナたちに同行することになった私たちは今、ルーナのカバンの中で揺られ揺られて街に向かっている途中である。

 なぜルーナのカバンの中にいるのか。それは冒険者パーティーになってすぐのこと、このまま普通にスライムを連れて歩くのは問題だということになったことから始まる。

 たとえ姿を変えていたとしても、その独特の光沢と半透明な体、おまけに人とはかけ離れた姿である。スライムとは思われなくてもモンスターであるということはわかる。

 いくらかわいいからといってポートやディランのようにそのかわいさに惑わされない人も確かにいるわけで。少なくとも多少の騒ぎにはなる。

 なにせこの世界では未だモンスターとともに肩を並べて歩く人などいないのだから。

 奴隷という形でこき使っていたり、家畜と同様の扱いをするものは多少いるものの、それでもやはり少数である。冒険者パーティーと同行するということに至っては皆無である。

 ということでやはり連れていくなら周囲から見えないようにする必要があるということになった。

 そこで問題はどう隠すかということに移行する。

 「ライムちゃんて割と体小さいから袋とかにいれて持ち運べないかな?」

 「誘拐しているみたいでそれはそれで問題があるような気がするな。」

 レナの提案にディランが返す。私も袋に入れられて連れていかれるのはちょっと遠慮したい。

 けれどレナの提案にも聞くべきところはある。

 私たちの体は大きさ的にはバスケットボールよりもちょっと大きいくらい。しかも頑張れば多少は大きさを縮められるし、形に至っては自由自在に変化させることができる。

 ということで何かの中に潜り込むということも可能ではある。

 可能ではあるけど袋に詰められて周りも見えなくなるのは避けたい。

 せっかくのファンタジー世界だし、頼れる人たちにも巡り合えたのだから周りの風景とかものんびり見ていたい。

 ということで袋詰め以外でお願いしたいのだけど、他に何かいい考えは浮かばないだろうか。

 「ならば誰かが背負うのはどうでしょうか?」

 「服の内側に入れるってことだろ?変形できるとはいっても限界はあるだろうし、変に服の盛り上がりができると不自然に思われないか?それと動きもいつもの感覚とは違うようになってしまう恐れがあるし、いざ戦闘になったときに対処できなくなるようじゃ困るぞ。」

 ルーナの提案もディランは渋る。

 確かにいいかもと思ったけど、ずっとまとわりついてなきゃいけないのはそれはそれで大変だと思う。主に精神的に。

 それに結局周りが観れない状況になるのでこれも却下だな!

 (観光しに来たわけじゃないんだからそこまで周り観れるようにしなくてもいいんじゃない?)

 (いやいや美景さん。やっぱり周りが見えた方が気晴らしとかになるじゃないですか。むしろ周りが見えない状況が続くのって不安じゃないですか。)

 (そういうものかな?私は結構暗いところにいるの落ち着くから好きだけど。)

 (美景・・・もしかして転生する前にも暗い部屋で一人っきりで過ごしてたことがある、なんてことはないでしょうね。)

 (そぅ・・ーんなわけないじゃない。)

 なんか変な受け答えになってるあたり、本当に暗い部屋で過ごしてた経験があったみたいだ。

 うん大丈夫!これからは私がついてるからね!一人ぼっちにはしないからね!

 (なんかすごい憐れまれてる気がするんだけど。)

 (気のせい気のせい。)

 私たちが内輪で盛り上がっている間にも話は進んでいたようで、ぬいぐるみとして持ち運ぶ、鞭に変形させて腰に下げる、もうむしろ手提げかばんのようにして堂々と持ち運ぶ等々。

 様々な提案がされるもどれも名案とはならず、むしろ迷案となってきた。

 しかもその大半がディランによって却下されていた。

 一瞬すべての提案をはねて、やっぱり置いていくという流れにしようとしているのかとも思ったけど、ちょくちょくディランからも提案が出ているところを見る限り、単にまじめに考えた末に却下しているようだ。

 はじめは私たちが仲間になるのに猛反対していたのに、いざ仲間になったということになると、途端に真剣に考えてくれた。

 ディラン。なかなかイケメンじゃないか。主に精神面。

 (のーちゃん惚れちゃった?)

 (ば、ちが!そんなんじゃないやい!)

 (慌てるあたりがすっごく怪しいと思うなーお姉さんは。)

 (だから違うって!ちょっとイケメンだって思っただけだし!)

 (はいはいそういうことにしておきましょう)

 美景から温かい目、改め、温かい思念を注がれているが無視無視!

 「やっぱり何かにいれて連れていくのが一番だと思うのですが。例えばカバンの中とか。」

 「いや、でもカバンの中の物はどうすんだよ。さすがにライム入れたら他のもの入らなくないか?」

 ルーナが提案するもポートは問題を指摘する、が。

 ふむ。カバンか。

 ルーナが肩から下げているカバンは割と大きめだ。

 その中には当然すぐに取り出せるようにと入れてある薬やら煙幕やらの道具が入っているのだろう。

 ルーナをはじめとして、冒険者である4人はそれぞれ肩掛けのカバンとリュックを持っている。

 ゲームのようにアイテムボックスとかがあって、そこに何でもかんでも詰め込めるというわけではなく、旅に必要なものはそれぞれが分担して運ばなければいけないらしい。

 そしてルーナの肩掛けカバンは他の3人よりも少々大きく、私の体もぎりぎり入るだろう大きさがある。

 けど、当然そのかばんの中には道具が満載されているわけで、私を入れるためにはカバンの中の道具を全部出してしまわなければいけない。

 けどこれだとルーナは旅の途中に戦闘が行われることになっても、咄嗟に道具を扱うことができなくなってしまう。

 確かにコレはポートの言うようにダメな選択といえる。

 けれどそれは私たちじゃなければの話だ。

 私はルーナの足をちょんちょんと突いて意識を向けさせる。

 ルーナは「なに?」と言ってこっちに目を向ける。すると他の3人も注目した。

 私はおもむろに近くに生えていた1輪の花を引っこ抜いて体内に吸収したように見せる。

 3人は私が何をやっているのかよくわからないような眼をしていたが、私がその花を頭のてっぺんからにょきにょきと出したところで驚きの表情になった。
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