かわいいは正義(チート)でした!

孤子

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第4章

壇上に上がる

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 翌日の早朝。ディラン達とともに私たちは城の南にある大きな広場で準備を始めていた。

 ウォルトス王子によって事前に話が伝わっており、広場には私たち以外にも集会の準備を進める者たちが少なからずいた。中には治療する場所なども作っている者たちがおり、今回の集会が物々しくなる可能性があると思う人もいるようだった。

 当然そのようなことにならないように、イリアナには親衛隊を止めるように演技してもらう。けれど、万が一それが失敗したときは、あの即席の救護施設が負傷者で埋まるのだろう。

 バカみたいな話だろうけれど、実際そうなってしまった過去があると聞かされれば笑い話にもならない。とりあえずイリアナには熱演してもらいたいものだ。

 「よもやこのようなことをすることになろうとは、夢にも思わなんだな。」

 準備を終えたころに、国王夫妻が仮設舞台に集まる私たちのもとに到着した。これから国王とウォルトス王子、ディラン、私たちで流れの最終確認を行い、人が全員集まったところで本番となる。

 「芝居とは言え、ディランの婚約を発表する機会がこようとは思わなんだ。もうそれどころか、とっくにどこぞで結婚しているとばかり思っておったしな。」

 「流石にお父様のお耳に入れずに結婚などしませんよ。これまでそういった余裕もありませんでしたしね。正直なところ、考えたこともありませんでした。」

 ディランの返答に何と言ったものかと苦い顔になる国王。

 「ディラン。それがお主の望みであるとするならば良いが、しかし、もう少し自分のために行動してもよいのではないか?お主はちと欲がなさすぎる。」

 そう言いながら小さくため息を吐く国王。ディランは何とも不思議なものを見たというように、目を丸くした。

 「良いかディラン。他人のために行動し、他者を幸せにすること自体は素晴らしいことだ。善い行い、心がけと言えよう。しかし、それで自分を殺してしまってはいけない。他者のためを思って動くことが、自分の為になる。それこそが正しい在り方というものだ。」

 「そういう・・ものでしょうか。」

 「お主にもいずれわかる時が来る。その時には、お主の隣に寄り添うものもあらわれるだろうて。」

 それから最終の打ち合わせが終わり、どんどんと騎士と貴族が広場に集められ、朝と昼の中頃、10時頃には全員が広場に集まった。

 「ラスタル国王陛下、並びにセレスティア―ヌ正妃の御入来である!」

 舞台下にいる騎士達の一人が声を上げ、国王の登壇を告げる。するとすぐに騎士と貴族全員が最敬礼になり、物音ひとつたたなくなった。

 舞台裏から静かに、威厳たっぷりで壇上に上がる国王夫妻。二人が舞台中央に立ち、少し間をおいてから国王が一歩前に進み出て口を開く。

 「皆の者、面を上げよ。」

 その一声で、騎士と貴族全員が敬礼を解き、顔を上げて壇上に立つ国王を見上げる。

 「今日ここに集まってもらったのは、皆に急ぎ報告すべきことができたためだ。重要なことゆえ、皆には最後まできちんと記憶してもらいたい。」

 国王の言葉にほんの少しだけ反応を示す者たちがいた。騎士の中に多く見られ、恐らく騎士団の動きを妨害している者たちだろうと思われる。

 「先日、我が息子、ディランが城に帰還した。そのことはこの場におる皆の耳にも入っていることと思う。」

 その言葉に反応したのは貴族の中の数人だ。その者たちの目は力強く、熱いものがこもっているような目だった。恐らくディランを支持している者たちなのだろう。

 「そして、そのディランから、正式に婚約を結びたいという申し出が出た。」

 この言葉に広場にいるほぼ全員が小さく声を上げ、ある者を歓喜を、ある者は恐れを顔に浮かべていた。

 国王はその声が静まるのを待ってから、話を続ける。

 「ディランが我らの下に戻り、婚約の許しを得に来たということ、皆にもそれが何を意味するのかは分かるであろう。されど、一度城を出て、冒険者となったディランを認めることはそうたやすいことではない。」

 そこで、一つ言葉を区切り、広場の全員の顔をぐるりと見渡す。

 「だが、私の一存にて全てを決するのは、この国の慣習からも、何より私自身の思いからも外れるものである。故に、この場にて皆の意思を確認したい。」

 国王は言い終わると、舞台袖に控えた騎士に目配せをする。

 騎士はすぐに舞台裏にいる私たちとディランに合図を送り、ようやく私たち二人の出番が来た。

 (うわ~、めっちゃ緊張する。)

 (まあこんな機会滅多にあるものじゃないからね。)

 そう言う美景はほとんど緊張しているように見えなかった。やはりこれが経験の差というやつなのだろうか。

 「ライム。行けるか?」

 「だ、大丈夫です。」

 私は声を上ずらせながら返事をする。

 するとディランがほんの少し噴き出して笑った。

 「そこまで笑わなくてもいいでしょう!」

 私が睨みながらそう言うと、ディランは笑いをこらえて息を整える。

 「大丈夫だ。今のライムはどこからどう見ても人の姿だし、見栄えもする。堂々としていればおかしいところなんて一つもない。」

 「見栄えがするのはドレスのおかげでしょう。それに、普段とは違ってフードで隠せていませんし。」

 今私はエレアが持っているドレスの中でも一番高く、豪華なデザインのゴスロリチックなドレスを着ている。フリルがふんだんにあしらわれている白と青のドレスは、それはもう着たものを清純そうに見せる見事な出来で、普段着ている落ち着いた色合いのものと比べてかなり派手に見えた。

 正直言って全然落ち着かないが、それでもビシッと白に金の刺繍が施された軍服のような衣装に身を包んだディランと並ぶには、これくらいのドレスでないと釣り合える気がしなかった。

 それに、カルミュット子爵邸とは違って、朝っぱらの屋外。影ができている場所ならばともかく、日の当たるところでは薄っすらと体が透けて見えるのだ。

 舞台には屋根がついていない。すなわち太陽がスポットライトのように私たちを明るく照らすことになる。そうなれば近くで見ている者には私が透けて見えてしまうかもしれなかった。

 頑張って透けないように工夫して、白色の布を肌の表面直下に巡らせているけれど、見る者が見れば水の中に布を浮かべているだけに見える。

 「正体がばれてしまったらどうしましょう。そうなれば一緒にいるディランがどうなる事か。それにつかまったり処罰されたり。」

 「大丈夫だ。心配しなくてもいい。」

 ディランは私の手を取って腕を組みつつ、そう声をかける。

 「いつものような想定外の動きさえしなければ、誰も怪しむことはない。最悪の場合は、私を含め、エレアナ全員が協力してこの国を出る。ライムは、私たちではそれくらいの事もできないと思うか?」

 黒い笑みを浮かべるディラン。その自信たっぷりな表情は、まるで今回の作戦も些細なことに過ぎない、いつも通りだと言わんばかりだった。

 私はその表情を見て徐々に落ち着きを取り戻し、崩れかけそうになった体を引き締めなおす。

 「そうですね。エレアナなら、それくらいのことはできそうです。」

 「俺たちならば、やろうと思えばなんだってできる。だから、今はこの一瞬にだけ集中していろ。」

 「わかりました。」

 そして、ディランと私たちは堂々と壇上に上がったのだった。
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