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09.すっかり甘い雰囲気なんですが!?

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それから俺たちは城へと戻った。
「そろそろ夕食の時間だな。食堂に行こうか」
「もうそんな時間か。結構時間が経っちゃったね……」
「ああ。だが、良い買い物ができたよ」
俺は買ってもらったものを眺める。
「こんなにたくさん……悪いな……」
「いやいや、気にしないでくれ」
「いつかちゃんとお返しするからな」
「別にそんなの必要ないんだけど……」
「いや、絶対お返しするから!」
「ふふ、じゃあ楽しみにしているよ」
「うん!」
俺は笑顔で返事をする。
そんな話をしながら食堂に着くと、ちょうど食事の準備が終わっていたようだ。
「どうぞ、席についてください」
執事に言われて、俺と王子はテーブルについた。
「では、いただきます」
みんなが一斉に食べ始める。俺は目の前にある料理を見た。今日のメニューは肉のステーキのようだ。早速一口食べてみると、柔らかい食感と旨味が口の中に広がった。
「美味しい……」
思わず声に出してしまった。すると、横にいた王子が話しかけてきた。
「口に合ったかい?」
「うん!とっても美味しいよ!」
「それは良かったよ。ミノルは本当に美味しそうに食べるね」
そう言って微笑むと、王子も自分の料理を食べ始めた。俺はその様子をじっと見る。
やっぱりカッコイイな……。食べ方も綺麗だし、なんか優雅っていう感じだな……。
俺は、改めて王子の整った顔立ちに見惚れてしまう。
しばらくして、王子はこちらに視線を向けた。
「どうかしたのかい?」
「あっ、いや、なんでもない……」
俺は慌てて目をそらした。
「そうか……。何かあったら遠慮なく言ってくれ」
「う、うん……」
俺はドキドキしながら食事を続けた。

夕食後、王子はソファーでくつろいでいた。俺はその隣に座っている。
「ミノル、1つお願いがあるのだが、いいだろうか?」
「うん、何?」
「その……、一緒にお風呂に入りたいんだ」
一体どんな頼みごとをされるのかと思ったが、そんなことか。
しかし、王子への気持ちを自覚し始めてしまった今、王子と一緒に入浴は少し恥ずかしい気もする。
俺が照れていると、王子が俺の身体に密着してきた。
「ダメかな……?」
「いや、大丈夫だよ……」
「ありがとう、ミノル」
王子は嬉しそうにしている。
そして、俺達はお風呂場に向かった。

先にお湯を張ってから、服を脱ぎ始める。すると王子がじっと見つめてきた。
「あの……、あんまり見ないでくれるかな?」
「すまない……。つい見惚れてしまってね」
王子は俺の裸を凝視している。恥ずかしいけど、なんか興奮してしまう。
「は、早く入ろうよ……」
「うむ……。そうだね……」
お互いに少し緊張した面持ちで浴室に入った。まずは頭と体を洗う。
「ミノル……。私に背中を流させてくれないか?」
「えっ……そんなことを王子に……」
「私がそうしたいんだよ」
「うん……。分かった……」
俺は椅子に座り、王子はスポンジを手にして俺の背中を洗い始めた。少しくすぐったい。
「痒いところはないかな?」
「うん……、大丈夫だよ」
「そうか……。じゃあ、次は前だね」
「え!?前も!?」
王子は俺の前に回り込み、後ろと同じように全身を丁寧に洗ってくれた。
「よし……。これで綺麗になったよ」
「あ、ありがとな……」
「いえいえ」
お礼を言うと、王子はニコリと笑みを浮かべる。
俺も王子を洗ってあげた方がいいんだろうか?でも、王子の身体を触るのはなんだか恥ずかしいな……。
なんて悩んでいる間に、王子はさっさと自分の体を洗い終えていた。
「じゃあ、湯船に入ろうか」
「あ、ああ……、そうだね」
俺は王子と一緒に浴槽に浸かる。2人だと少し狭いけど、密着できるから悪くないな……。
「ふぅ……気持ちいい……」
「そうだねぇ」
「今日は楽しかったなぁ……」
「うん……。私も楽しい一日だったよ」
「王子とは気が合うし、これからもずっと仲良くしていたいな……」
「もちろんさ……。私も同じ気持ちだよ」
「そっか、良かった……」
「ミノル……、こっちを向いてくれるかい?」
「うん……。どうしたの……んむっ!」
振り向いた瞬間、突然キスされた。舌を入れられ、濃厚なディープキスを交わす。
「んちゅ……ぷはぁ……」
「はぁ……はぁ……」
王子の息遣いが荒い。興奮しているようだ。
「王子……今日は指輪の魔力減ってないんだけど……」
指輪の魔力を回復するためのキスは必要ないはずだ。
「すまない……。ミノルとくっついていたら我慢できなくなってしまった」
「えっ……」
王子の顔が赤くなっている。きっと俺の顔も真っ赤になっているに違いない。
「もう1度だけ……。ダメかな……?」
「うん……いいよ」
「ありがとう、ミノル」
王子は俺に抱き着いて再びキスをした。
「ミノル……、私だけのミノルになってくれて嬉しいよ……」
「えへへ、俺も王子だけのものになれて幸せだよ……」
俺は王子に寄り添いながら言った。この時間がずっと続けば良いのになと思った。
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