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14☆青天の霹靂
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一年前から予約がいっぱいだった――。それは、辻褄が合わない内容だ。
嫌な予感が脳裏を掠めていく。
「あの……このマンションって、最近出来たばかりですよね?」
「ええ、先月に完成したばかりだけれど、入居者は一年前から募集していてね。募集開始して、すぐに全部屋埋まってしまったそうよ」
――おかしい。この物件は、この間たまたま見つけたものだと言っていたのに。
「急にキャンセルが出たとかは……」
「ないわよ~。人気物件だから、キャンセル待ちの人も山ほどいたらしいわよ」
ニコニコと話す奥さんとは対照的に、僕の顔は強張っていった。
一年前――当然、僕と付き合うなんて話が出るよりずっと前だ。そんなに前から、アイツはこの家に住もうとしていたのか。一人で住むには広すぎる、カップル向けのこの物件に。
本当は、誰かと住む予定があったのだろうか。それが何かしらの理由で無しになったのかもしれない。もしくは、先に僕と付き合うことになってしまって、仕方なくこの家を使ったとか――。
「あの、どうかして……?」
ぐるぐると考えごとをしていると、奥さんに心配そうに声をかけられた。悟られないように、笑顔を作る。
「あ、いえ、そうだったんですね。ますます彼に感謝しないとですね」
「ふふふ、そうね。急に話しかけちゃってごめんなさいね」
「こちらこそ、お話できて楽しかったです」
ペコリと頭を下げて、急いで部屋に駆け込んだ。
そのままベッドに飛び込む。
「うぅ……十夜の馬鹿……」
枕に顔を埋めながら、一人で呟いた。
この家は、僕と暮らすために探したものじゃなかったのだ。
(どうして、それならそうと言ってくれなかったんだよ……)
自分が鈍感なせいだと分かっているが、それでも悲しい。同時に苛立ちも覚える。
「やっぱりあんな奴、大っ嫌いだ……」
そんなことを呟きながらも、急激な疲労感からすぐに眠ってしまった。
目を覚ますと、もう朝になっていた。
「やば……あのまま寝ちゃったのか……」
スマホを見ると、事務所やメンバーからの着信履歴がある。メールを確認すると、炎上の対応などでメンバー全員事務所に泊まりだったらしい。
僕だけ何もしていなくて、申し訳ない気持ちになった。とりあえず、謝罪のメールを送信しておく。
しばらくするとマネージャーが迎えにきたので、身支度を整えて車に乗り込んだ。
「おはよう……ございます」
挨拶をしながら事務所に入ると、みんな疲れた顔をしていた。昨日は色々と大変だったのだろう。
全員揃ったところで、マネージャーが話を始めた。
「明日、生放送の音楽祭への出演があります。そこで、二人の仲の良さを見せつけましょう!」
世間の噂を挽回するために、事務所が頑張って生放送の枠を取って来てくれたそうだ。そこで、またキスでもすれば
変な噂は消えていくだろう。
今の僕の心境はそれどころではないけれど、やらなければならない。
明日に向けて、細かい打ち合わせを行った。
その日は、久しぶりに十夜と一緒に家に帰った。
帰るとすぐにシャワーを浴びる。熱いお湯をかぶっていると、さっきまでの気持ちが落ち着いてくる気がした。
(今は仕事に集中しないと……)
そう自分に言い聞かせる。
浴室から出て、髪を乾かしてから寝室に向かった。交代で十夜が入っている間に、先にベッドに入ることにする。
十夜に聞きたいことは沢山あるが、怖くて聞けない。
(とにかく早く寝てしまおう……)
そう思って布団に潜り込み目を閉じた。
しばらくすると、隣に気配を感じる。十夜がベッドに入ってきたようだ。
そっと様子を窺うと、十夜の背中が見える。いつもなら僕が寝てようがお構いなしに抱き締めてくるのに、今日は何もしてこなかった。それどころか、背中を向けて寝るなんて……。
少し寂しい気持ちになってしまったが、これで良かったんだと思う。
僕は小さく息をつくと、静かに眠りについた。
嫌な予感が脳裏を掠めていく。
「あの……このマンションって、最近出来たばかりですよね?」
「ええ、先月に完成したばかりだけれど、入居者は一年前から募集していてね。募集開始して、すぐに全部屋埋まってしまったそうよ」
――おかしい。この物件は、この間たまたま見つけたものだと言っていたのに。
「急にキャンセルが出たとかは……」
「ないわよ~。人気物件だから、キャンセル待ちの人も山ほどいたらしいわよ」
ニコニコと話す奥さんとは対照的に、僕の顔は強張っていった。
一年前――当然、僕と付き合うなんて話が出るよりずっと前だ。そんなに前から、アイツはこの家に住もうとしていたのか。一人で住むには広すぎる、カップル向けのこの物件に。
本当は、誰かと住む予定があったのだろうか。それが何かしらの理由で無しになったのかもしれない。もしくは、先に僕と付き合うことになってしまって、仕方なくこの家を使ったとか――。
「あの、どうかして……?」
ぐるぐると考えごとをしていると、奥さんに心配そうに声をかけられた。悟られないように、笑顔を作る。
「あ、いえ、そうだったんですね。ますます彼に感謝しないとですね」
「ふふふ、そうね。急に話しかけちゃってごめんなさいね」
「こちらこそ、お話できて楽しかったです」
ペコリと頭を下げて、急いで部屋に駆け込んだ。
そのままベッドに飛び込む。
「うぅ……十夜の馬鹿……」
枕に顔を埋めながら、一人で呟いた。
この家は、僕と暮らすために探したものじゃなかったのだ。
(どうして、それならそうと言ってくれなかったんだよ……)
自分が鈍感なせいだと分かっているが、それでも悲しい。同時に苛立ちも覚える。
「やっぱりあんな奴、大っ嫌いだ……」
そんなことを呟きながらも、急激な疲労感からすぐに眠ってしまった。
目を覚ますと、もう朝になっていた。
「やば……あのまま寝ちゃったのか……」
スマホを見ると、事務所やメンバーからの着信履歴がある。メールを確認すると、炎上の対応などでメンバー全員事務所に泊まりだったらしい。
僕だけ何もしていなくて、申し訳ない気持ちになった。とりあえず、謝罪のメールを送信しておく。
しばらくするとマネージャーが迎えにきたので、身支度を整えて車に乗り込んだ。
「おはよう……ございます」
挨拶をしながら事務所に入ると、みんな疲れた顔をしていた。昨日は色々と大変だったのだろう。
全員揃ったところで、マネージャーが話を始めた。
「明日、生放送の音楽祭への出演があります。そこで、二人の仲の良さを見せつけましょう!」
世間の噂を挽回するために、事務所が頑張って生放送の枠を取って来てくれたそうだ。そこで、またキスでもすれば
変な噂は消えていくだろう。
今の僕の心境はそれどころではないけれど、やらなければならない。
明日に向けて、細かい打ち合わせを行った。
その日は、久しぶりに十夜と一緒に家に帰った。
帰るとすぐにシャワーを浴びる。熱いお湯をかぶっていると、さっきまでの気持ちが落ち着いてくる気がした。
(今は仕事に集中しないと……)
そう自分に言い聞かせる。
浴室から出て、髪を乾かしてから寝室に向かった。交代で十夜が入っている間に、先にベッドに入ることにする。
十夜に聞きたいことは沢山あるが、怖くて聞けない。
(とにかく早く寝てしまおう……)
そう思って布団に潜り込み目を閉じた。
しばらくすると、隣に気配を感じる。十夜がベッドに入ってきたようだ。
そっと様子を窺うと、十夜の背中が見える。いつもなら僕が寝てようがお構いなしに抱き締めてくるのに、今日は何もしてこなかった。それどころか、背中を向けて寝るなんて……。
少し寂しい気持ちになってしまったが、これで良かったんだと思う。
僕は小さく息をつくと、静かに眠りについた。
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