ファンサービスではありませんっ!

krm

文字の大きさ
13 / 22

13☆にわか雨

しおりを挟む
しかし、その後にまた新たな炎上が起きてしまう。
十夜と僕が付き合っているというのは嘘ではないかと、噂が流れ始めたのだ。
女優と噂が立ったことで、やっぱり十夜は女性の方が好きなのでは……という流れになったらしい。
「なんだよこれ……ひどいな……」
壮太がSNSを見ながら呟いていた。
「はぁ!?BL営業!?」
翔もスマホを見ながらキレている。
売れるために付き合っているフリをしているとか、彼女がいることをカモフラージュしているだけとか、様々な憶測が飛び交っていた。

「なあ、十夜はどう思ってるんだよ?」
翔の問い詰めるような口調に、十夜は困った顔をしている。
「どうって言われても……」
「お前と光輝のことだろ?言いたいこととか、何かないのか?」
「別にないよ。……こういう風に言われたって、仕方ないことだろ」
その十夜の言葉に、僕は冷水を浴びせられたような気持ちになった。
(そうか……そうだよな……)
確かにそうだ。別に十夜は僕のことを好きなわけじゃない。僕がうっかり言ってしまったことに合わせてくれていただけだ。世間の噂は的を射ている。付き合っているフリをしていると言われて、当然なのだ。
(やっぱり僕、馬鹿みたい……)
「光輝、大丈夫か?」
呆然としている僕に壮太が気付いて、心配そうに声をかけてくれる。
「う、うん、平気……」
笑って答えようとした瞬間、涙がポロリと零れ落ちた。
「えっ……光輝、どうした!?」
壮太が慌てている声が聞こえる。
「うわっ!ごめん!そうだよな、デリカシーがなかったな、悪い!」
翔も焦っているようで、オロオロとしている。
「ち、違う!ごめん、なんか分からないけど涙が出てきただけで……」
(ああ、本当にダメだ……)
これ以上ここにいたら、もっと泣いてしまうかもしれない。
「ちょっと出てくる……!」
それだけ言って、逃げるように飛び出した。
一瞬目に入った十夜は、驚いたような顔でこちらを見ていたが、すぐに目を逸らす。
その態度に、さらに胸が苦しくなった。

外はにわか雨が降っていて、まるで今の自分の心を表しているようだった。
「はぁ……」
大きな溜息が出る。
(何やってるんだろう……)
雨の音を聞きながら、ぼんやりと考える。
このままではいけないと思うのだが、どうしたらいいのかわからない。
そもそも、僕はどうしたいのだろうか……。
そんなことを考えていると、ポンッと肩を叩かれる。十夜かと思って焦って振り返ると、そこにはマネージャーが立っていた。
(アイツが追いかけてくるわけないか……)
そう思うと、また大きな溜息が出てしまう。
「光輝くん、今日はもう帰って休んでください」
「あ……はい、すみません」
そのまま事務所の人に送ってもらい、家に帰った。


「あら、こんにちは~」
マンションの部屋の前で、中年の女性に声をかけられる。
お隣に住んでいる夫婦の奥さんだ。上品な雰囲気で、旦那さんは大きな会社の役員らしい。
「あ……こんにちは」
「今日は彼氏さんは一緒じゃないのね」
「はい、彼は仕事で……」
僕達は有名になってきたので、アイドルに興味なさそうな人達にも、事情を知られている。お隣さんには特に説明していなかったけど、僕達が恋人同士だと分かっているのだ。
「こんな広い家だと、一人の時寂しいわよねぇ」
「ああ、確かに……」
十夜と二人でいる時は全く気にならないのに、一人になるとこの広さが気になって、急激に寂しくなる。
「それにしても、このマンション広くて住み心地も良くていいわよねぇ。頑張って契約してくれた旦那に、感謝しないと……」
「そうですね……僕も……彼に感謝しています……」
十夜のことを思い浮かべながら、ポツリと答えた。
「あら、彼氏さんが契約してくれたのね。愛されているわねぇ」
「そんな……こと……っ……」
奥さんの言葉を聞いて、十夜と過ごした日々を思い出してしまう。涙が出そうになって、慌てて俯いた。
しかし、次の奥さんの言葉に、僕は心臓が止まりそうになる。

「だって、このマンション、一年前から予約でいっぱいだったんですもの」
「……え?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

お疲れポメラニアンの俺を癒したのは眼鏡イケメンの同期だった

こたま
BL
前田累(かさね)は、商社営業部に勤める社員だ。接待では無理してノリを合わせており、見た目からコミュ強チャラ男と思われているが本来は大人しい。疲れはてて独身寮に帰ろうとした際に気付けばオレンジ毛のポメラニアンになっていた。累を保護したのは普段眼光鋭く厳しい指摘をする経理の同期野坂燿司(ようじ)で。ポメラニアンに対しては甘く優しい燿司の姿にびっくりしつつ、癒されると…

契約満了につき

makase
BL
仮初めの恋人として契約を結んだ二人の、最後の夜。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

【8話完結】帰ってきた勇者様が褒美に私を所望している件について。

キノア9g
BL
異世界召喚されたのは、 ブラック企業で心身ボロボロになった陰キャ勇者。 国王が用意した褒美は、金、地位、そして姫との結婚―― だが、彼が望んだのは「何の能力もない第三王子」だった。 顔だけ王子と蔑まれ、周囲から期待されなかったリュシアン。 過労で倒れた勇者に、ただ優しく手を伸ばしただけの彼は、 気づかぬうちに勇者の心を奪っていた。 「それでも俺は、あなたがいいんです」 だけど――勇者は彼を「姫」だと誤解していた。 切なさとすれ違い、 それでも惹かれ合う二人の、 優しくて不器用な恋の物語。 全8話。

【8話完結】いじめられっ子だった俺が、覚醒したら騎士団長に求愛されました

キノア9g
BL
いじめられ続けた僕は、ある日突然、異世界に転移した。 けれど、勇者として歓迎されたのは、僕を苦しめてきた“あいつ”の方。僕は無能と決めつけられ、誰からも相手にされなかった。 そんな僕に手を差し伸べてくれたのは、冷酷と恐れられる騎士団長・ジグルドだった。 なのに、あいつの命令で、僕は彼に嘘の告白をしてしまう――「ジグルドさんのことが、好きなんです」 それが、すべての始まりだった。 あの日から彼は、僕だけをまっすぐ見つめてくる。 僕を守る手は、やさしく、強くて、どこまでも真剣だった。 だけど僕には、まだ知られていない“力”がある。 過去の傷も、偽りの言葉も超えて、彼の隣にいてもいいのだろうか。 これは、いじめられっ子の僕が“愛されること”を知っていく、嘘と覚醒の物語。 全8話。

こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件

神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。 僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。 だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。 子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。   ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。 指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。 あれから10年近く。 ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。 だけど想いを隠すのは苦しくて――。 こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。 なのにどうして――。 『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』 えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 一月十日のアルファポリス規約改定を受け、サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をこちらへ移しましたm(__)m サブ垢の『バウムクーヘンエンド』はこちらへ移動が出来次第、非公開となりますm(__)m)

処理中です...