Game is Life

つる

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あんたがいればそれでいい

コーヒーと紅茶とたっぷりの砂糖

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 俺はクソ野郎だ。
 稼いだ金はギャンブルその他エンターテイメントでその日のうちに消え、寝床は一日限りの恋人に甘えて間借りする。飯はその日のチームメイトにたかれれば上々だ。
 長く付き合いがあるのは悪友ばかり、ごくごく少数精鋭である。絵に描いたようなクソ野郎だと数少ない悪友たちはよく茶化した。ろくな生き方もしていなければろくな死に方もしない。毎日変わるチームメイトにそんなことをいわれたこともある。
 自他共に認めるクソ野郎の話を聞いて、ロドナーク・アルディは笑ってこういった。
『未だかつて俺ほどのクソ野郎を見たことがない』
 友人でもなく恋人でもなくチームメイトですらない。
 たまたま雨宿りしたコーヒーショップで会った男だ。ティーバックが突っ込まれたままの紙コップを傾け、味もわからなければ香りすら良くわからない茶を啜っているときに知り合った。
 話しかけたきっかけはなんだったか。おそらく、似たような野郎どもが下世話なことを大声で話していたことからだ。昨晩お楽しみすぎてお口も上機嫌だった。ショップ内にいた全員が、そいつの話を聞いていただろう。
 せっかちな俺は茶葉が蒸れる前に、味つきの湯を作るべく砂糖に手を伸ばしていた。ロドナークもちょうど砂糖に手を伸ばしているときで、譲り合ってまごついたところに例の話が耳に飛び込んだ。
 二人して顔を見合わせ苦笑し、俺が先にスティックシュガーを手に取る。
「こんなところで他人の武勇を聞くことになるとは」
 なんとなく呟いたことばをロドナークが拾った。
「詐欺まがいなコンサルティングの話ならよく聞くが、昼間から勇ましいな」
 やれやれ品位をどこに置いて来たのやら。心の声が聞こえてきそうなロドナークはコーヒーにスティックシュガーを五本流しいれると、コーヒーミルクを二つ開けた。ざらざらゴリゴリとカップから聞こえてくる異音に、俺は自然と手元からロドナークの顔に目を向ける。
 この世に訪れる朝という朝を殺してきたような顔だった。眉間には谷を作り、目の下のクマは暗く、疲れが目元と頬に皺を刻む。砂糖をかき混ぜているだけなのに陽の光を憎むように、影の中で恨み言を呟いているようにも見えた。明るい色なのだろう。黒い髪の間から覗く目は銀色に鈍く光る。
「けど、日替わりで住居と恋人と職場の仲間が変わる人間にはいわれたくねぇよなぁ」
 ゴリゴリとカップの底を擦るのをやめ、俺に振り向いたロドナークは小さく笑って頷いた。
「噂のソロプレイヤーは私生活もソロだと聞いていたが、なるほど。フリースタイルゆえのソロか」
 ロドナークの顔を正面から見て、俺はようやくそいつが同業者だと気がつく。
 当時のロドナークはプロキシゲームというゲームの五対五戦闘部門の有名なプレイヤーだった。やたらと派手なチームリーダーと一緒に前線を走る戦闘狂の策士、変幻自在な地形操作を得意とする魔術師と天候操作を得意とする巫術師……極め付けに動く城塞と呼ばれる……術師しかいない珍しいチームに所属していたせいもあっただろう。
 かくいう俺も当時から有名人だ。一度もソロで戦ったことがないのに、ひとつのチームに留まらず助っ人ばかりしているプレイヤーであることからソロプレイヤーと呼ばれていた。
「まぁ、確かにいわれたくないだろうよ。なんせ、未だかつて俺ほどのクソ野郎を見たことがない。他人のことなどいえた義理じゃないな」
「へぇ……俺もクソ野郎振りには自信があんだけどなぁ」
 ロドナークは再び砂糖をコーヒーの中で磨り潰しながら、もう一度笑う。
「じゃあ、確かめてみるか?」
 三徹目にして他人の代理でカードゲームの賭け事をまだ続けねばならず、休憩で入ったコーヒーショップでうっかりナンパしてしまったのだ。後にやはり笑いながらロドナークは俺に教えてくれた。
「それなら今夜、寝床借りにいくわ」
 そんなこんなで紙ナプキンに書かれた住所を戦利品として別れた俺は、その晩、一人寝床を暖めることになった。
 これが本当のソロプレイヤーってか。
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