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兄ちゃん、お元気ですか。俺はピンチです。
夢と希望を持ってもいいじゃない2
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「妨害……?」
一体何の妨害だろうか。
クラスを決めるためにダンジョンを攻略しているのだ。ダンジョン攻略の妨害に決まっている。しかし、妨害して何の得があるのか。
ファスティート魔法学校のクラスは、魔法科なら魔法が使える順に決まる。普通の学校でいうところの学力順だ。そうすることによって魔法が上手い人はより高みへ、いまいちの人はしっかりと基礎から魔法を学ぶ体制を作る。学校案内にそう書いてあった。
とどのつまり、自分のレベルに合ったクラスで無理せず勉強して、しっかり魔法を身につけるのだ。首を傾げていた俺に兄が教えてくれたので間違いない。
「妨害までしていいクラスいっても、いいことないと思うんだけどなぁ……」
俺はようやく立ち上がり、すっかり静かになった大木を横目に尻についた土を払いぼやく。
頑張れるならいいクラスに行った方がいいだろうが、背伸びしすぎて……ましてや妨害して手に入れても、授業についていけなくて辛い。なんてことも起こる。
俺のぼやきを聞いてか、ヒューは赤い石を摘むと振り返った。
ヒューは少しの間俺を見つめ、納得したように頷くと口を開く。
「……騎士制度ってのがあるのは知ってるか?」
それも学校案内に書いてあった制度だ。
ファスティート魔法学校には騎士制度という、魔法科の生徒一人に騎士科の生徒を一人つける制度である。
「騎士制度がどうかした?」
「この学校は男女の学び舎を分けてるんだろ? 授業も男女別だが、騎士制度だけは男女混合だ。ほとんどの生徒は同性で組むんだが、ごくまれに異性と組むやつがいる」
頷く代わりに質問すると、ヒューが答えをくれた。
ファスティート魔法学校は共学なのだが、男女で校舎が分かれている。そのため、女の子と聞けば騒ぎたくなる男子生徒も多いらしい。騎士制度で女の子とお近づきになれるかもしれないというだけで、奮起してしまうようだ。
しかしそれだけで下手をすれば大事故になりそうな妨害をするものではない。騎士制度は成績で決まるものではなく、本人たちの意思で決めると学校案内にも書いてあった。敵味方ある戦いでもないのに他人の妨害をするような奴の騎士や魔法使いになりたいだろうか。
俺がヒューの答えに不満そうな顔をしていたようだ。ヒューは赤い石をズボンのポケットに入れたあと、さらに付け足して教えてくれた。
「今年は騎士に皇女がいるんだと」
「それ、お姫様といい感じになりたいの? 選ばれるかどうかわかんないのに?」
騎士に皇女がいるというだけで妨害するということはそういうことである。
俺も女の子がいたのなら三割増しくらい格好つけたいけれど、そうまでして女の子と一緒にいたいかというと別だ。
それなら家帰って片っ端から友達に連絡して『出会いをお恵みください!』と頼み込んだ方が健全である。
「そうだな、並大抵の男じゃどうにもならねぇ皇女なんだけどよ。それでも目立てば選んでもらえるかもしれねぇってんで、いいクラスに入りたいやつも多いみたいでな。皇女に選ばれりゃ将来城勤め、かなりうまくすれば王族の一員になれるんだと」
大木の状態をチェックしているのか、ヒューは木の幹に触れたり根の様子を見ながら俺の疑問に答えてくれた。一緒に危機を乗り越えた仲であるが、会ったばかりの俺に親切に答えてくれるヒューはやはりとてもいい奴である。
「ふうん……魔法使いは接近戦が不得意だから、実習とかするときは騎士とかつけておけって制度かと思ってたけど……逆玉とか職業斡旋の制度だったんだねー」
魔法の世界も就職が大変なのだなぁ……と世知辛い気分になるものの、やはり俺はそこまでやる気になれない。他人事だという気持ちがことばにのり、顔にも出てしまった。ゆるい笑いがこぼれて仕方ない。
「本来ならそういった制度なんだが……お前は王族の一員になりたくねぇのか? モテそうな顔してるし、性格もそう悪そうじゃねぇから無理ではないだろ」
ワンチャンあるのではないかといわれても、そのモテそうな顔はホスト顔だと持てはやされてるし、俺の考える理想の恋愛に合わない。
「いやぁ……恋人とか結婚相手ってそうやって選ぶもんじゃないし。モテるっていうけど、夜の街でシャンパンタワーっていわれる顔って、ちょっとモテの系統が違うというか……ヒューこそどうなのさ」
ヒューは怖い顔をしているけれどいい奴だし、怖い顔といっても整った顔をしていると思う。ちょっとアクセサリーが見慣れないほど多く、ちょっと顔が強いだけなのだ。
そのちょっとが掛け合わさった上に背が高く、さらに無表情になっていたら、怖くて近づきがたいのだけれど。
「権力には用がねぇし、俺ぁ運命論者なんでな」
「え、ロマンチックだね」
どう見たってヤンキー面でロマンなど鼻で笑いそうだし、運命なんて現代社会を斜に見そうな雰囲気すらある人にいわれたら、ポロッと失言してしまうものだ。
俺はまずいと思うと同時に口をふさぐ。
兄にも一言二言多いと憐れまれることが多々あったので、魔法高校に入学したら寡黙でクールで賢そうな男になろうと思っていた。なのにこの調子では高校デビューも失敗である。
「顔に似合ってねぇのはよくわかってる。別に待ってるわけじゃねぇし……とにかく、そんなわけだから今年はいいクラスに入りたい連中が多い」
ヒューも自らの主義が外見に似合っていない自覚があるらしい。
大木のチェックがすんだのか、ヒューは俺に振り返って苦笑した。
「そっかぁ……でも妨害行為ってマイナスになんないの?」
「ならなくはねぇんだが、うまい魔法なら加点対象でな……なぁ、石、どうにかできるか?」
俺の疑問にちゃんと答えてくれるだけでなく自然にも優しいとは、いい奴過ぎて、どうしてボッチだったんだと机を叩きたい気分になる。それともいい奴だから割を食って一人になってしまったんだろうか。もしもそうなら、とんでもなく切ない話である。
「おっけーおっけー! 色々木に悪そうな石だもんねー……って、魔法学校って健全な精神は育てないものなの?」
ヒューとは何が何でも仲良くやっていこうと思い良い返事をしたあと、気が付く。魔法さえうまく使えていれば妨害が加点対象となると、悪賢い奴ほど得になる。かなり心が荒みそうな評価法だ。
「就職希望先によってはあとから叩き直される」
「うわぁ……ご愁傷様です」
俺は両手を合わせて、妨害を仕掛けた誰かに手を合わせる。うまくいっていいクラスに入ったら、大変なことになるに違いない。
「だが妨害された側もうまく対処できりゃ、勝手にいいクラスに入れる」
「なるほど」
妨害やらなんやらに納得したところで、俺は石を木からどけるためにまたバングルに触れ魔法を使う。
木に絡みついた重石は砂に、木の根を留める岩の釘は小さな石に。変化して、できれば大木のためになるようにイメージし、口を開く。
「重石も岩も砕けて土とまざり根を隠せ」
ちょっと小石が多いかもしれないが元気に育ってねと心を込めて魔法を使ったが、できればもうちょっと木によさそうなものが欲しいものだ。ダンジョンから出たら木によさそうなものでも検索しよう。大木の根元で土と混ざっていく石を見つめ、しみじみそう思った。
「さてと、大木はこれでいいとして……このダンジョンは攻略したらそれでいい感じ?」
悲しい魔法学校の話は置いといて、気を取り直してダンジョン攻略だ。入学取り消しだなんて悲劇に遭遇しないためにも、俺はダンジョンを攻略しなければならない。
俺は悪くない魔法が使えて、いい気分で俺より学校に詳しいようであるヒューにルンルンと問いかけた。
「攻略……いや、最奥までいけたら確実にいいクラスにいけるが、そこまでする必要はねぇな」
「じゃあ、どこまでいけばいいダンジョンなの?」
阿といえば吽とくるではないけれど、サクサク返ってくる答えに俺はまたいい気分になる。しかもダンジョンをちゃんと攻略する必要がないとくれば更に気分が上がった。
「ウロウロ好きにすればいい。そうしていれば勝手に困難に出会うし、のぞき見している教師たちが判断するはずだ」
「なら、探検しよう!」
現代社会には迷路という娯楽はあってもダンジョンはない。しかも魔法学校の入学試験も筆記と魔力測定しかなかったので、これが初めてのダンジョンだ。
退学がかかっているボッチで急なダンジョン攻略は心細いものだが、気のいい友人と一緒に行くダンジョン探検なら楽しいものである。
それなら是が非でもダンジョンを探検したい。
俺はヒューの返事も聞かず楽しい探検へと一歩踏み出した。
「わかった。なら、興味の赴くままダンジョンを歩くとするか……一応聞くが、いいクラスには入らねぇでいいのか?」
「実力に見合ったクラスでお願いします」
足は止まらず小さくスキップしているが、上がった気分がほんのり下がる。
夏休みだと舞い上がっているときに宿題の話を聞いた時のような気分だ。
俺が口を尖らせるとヒューは小さく笑った。
「兄弟揃って欲がねぇのな」
一体何の妨害だろうか。
クラスを決めるためにダンジョンを攻略しているのだ。ダンジョン攻略の妨害に決まっている。しかし、妨害して何の得があるのか。
ファスティート魔法学校のクラスは、魔法科なら魔法が使える順に決まる。普通の学校でいうところの学力順だ。そうすることによって魔法が上手い人はより高みへ、いまいちの人はしっかりと基礎から魔法を学ぶ体制を作る。学校案内にそう書いてあった。
とどのつまり、自分のレベルに合ったクラスで無理せず勉強して、しっかり魔法を身につけるのだ。首を傾げていた俺に兄が教えてくれたので間違いない。
「妨害までしていいクラスいっても、いいことないと思うんだけどなぁ……」
俺はようやく立ち上がり、すっかり静かになった大木を横目に尻についた土を払いぼやく。
頑張れるならいいクラスに行った方がいいだろうが、背伸びしすぎて……ましてや妨害して手に入れても、授業についていけなくて辛い。なんてことも起こる。
俺のぼやきを聞いてか、ヒューは赤い石を摘むと振り返った。
ヒューは少しの間俺を見つめ、納得したように頷くと口を開く。
「……騎士制度ってのがあるのは知ってるか?」
それも学校案内に書いてあった制度だ。
ファスティート魔法学校には騎士制度という、魔法科の生徒一人に騎士科の生徒を一人つける制度である。
「騎士制度がどうかした?」
「この学校は男女の学び舎を分けてるんだろ? 授業も男女別だが、騎士制度だけは男女混合だ。ほとんどの生徒は同性で組むんだが、ごくまれに異性と組むやつがいる」
頷く代わりに質問すると、ヒューが答えをくれた。
ファスティート魔法学校は共学なのだが、男女で校舎が分かれている。そのため、女の子と聞けば騒ぎたくなる男子生徒も多いらしい。騎士制度で女の子とお近づきになれるかもしれないというだけで、奮起してしまうようだ。
しかしそれだけで下手をすれば大事故になりそうな妨害をするものではない。騎士制度は成績で決まるものではなく、本人たちの意思で決めると学校案内にも書いてあった。敵味方ある戦いでもないのに他人の妨害をするような奴の騎士や魔法使いになりたいだろうか。
俺がヒューの答えに不満そうな顔をしていたようだ。ヒューは赤い石をズボンのポケットに入れたあと、さらに付け足して教えてくれた。
「今年は騎士に皇女がいるんだと」
「それ、お姫様といい感じになりたいの? 選ばれるかどうかわかんないのに?」
騎士に皇女がいるというだけで妨害するということはそういうことである。
俺も女の子がいたのなら三割増しくらい格好つけたいけれど、そうまでして女の子と一緒にいたいかというと別だ。
それなら家帰って片っ端から友達に連絡して『出会いをお恵みください!』と頼み込んだ方が健全である。
「そうだな、並大抵の男じゃどうにもならねぇ皇女なんだけどよ。それでも目立てば選んでもらえるかもしれねぇってんで、いいクラスに入りたいやつも多いみたいでな。皇女に選ばれりゃ将来城勤め、かなりうまくすれば王族の一員になれるんだと」
大木の状態をチェックしているのか、ヒューは木の幹に触れたり根の様子を見ながら俺の疑問に答えてくれた。一緒に危機を乗り越えた仲であるが、会ったばかりの俺に親切に答えてくれるヒューはやはりとてもいい奴である。
「ふうん……魔法使いは接近戦が不得意だから、実習とかするときは騎士とかつけておけって制度かと思ってたけど……逆玉とか職業斡旋の制度だったんだねー」
魔法の世界も就職が大変なのだなぁ……と世知辛い気分になるものの、やはり俺はそこまでやる気になれない。他人事だという気持ちがことばにのり、顔にも出てしまった。ゆるい笑いがこぼれて仕方ない。
「本来ならそういった制度なんだが……お前は王族の一員になりたくねぇのか? モテそうな顔してるし、性格もそう悪そうじゃねぇから無理ではないだろ」
ワンチャンあるのではないかといわれても、そのモテそうな顔はホスト顔だと持てはやされてるし、俺の考える理想の恋愛に合わない。
「いやぁ……恋人とか結婚相手ってそうやって選ぶもんじゃないし。モテるっていうけど、夜の街でシャンパンタワーっていわれる顔って、ちょっとモテの系統が違うというか……ヒューこそどうなのさ」
ヒューは怖い顔をしているけれどいい奴だし、怖い顔といっても整った顔をしていると思う。ちょっとアクセサリーが見慣れないほど多く、ちょっと顔が強いだけなのだ。
そのちょっとが掛け合わさった上に背が高く、さらに無表情になっていたら、怖くて近づきがたいのだけれど。
「権力には用がねぇし、俺ぁ運命論者なんでな」
「え、ロマンチックだね」
どう見たってヤンキー面でロマンなど鼻で笑いそうだし、運命なんて現代社会を斜に見そうな雰囲気すらある人にいわれたら、ポロッと失言してしまうものだ。
俺はまずいと思うと同時に口をふさぐ。
兄にも一言二言多いと憐れまれることが多々あったので、魔法高校に入学したら寡黙でクールで賢そうな男になろうと思っていた。なのにこの調子では高校デビューも失敗である。
「顔に似合ってねぇのはよくわかってる。別に待ってるわけじゃねぇし……とにかく、そんなわけだから今年はいいクラスに入りたい連中が多い」
ヒューも自らの主義が外見に似合っていない自覚があるらしい。
大木のチェックがすんだのか、ヒューは俺に振り返って苦笑した。
「そっかぁ……でも妨害行為ってマイナスになんないの?」
「ならなくはねぇんだが、うまい魔法なら加点対象でな……なぁ、石、どうにかできるか?」
俺の疑問にちゃんと答えてくれるだけでなく自然にも優しいとは、いい奴過ぎて、どうしてボッチだったんだと机を叩きたい気分になる。それともいい奴だから割を食って一人になってしまったんだろうか。もしもそうなら、とんでもなく切ない話である。
「おっけーおっけー! 色々木に悪そうな石だもんねー……って、魔法学校って健全な精神は育てないものなの?」
ヒューとは何が何でも仲良くやっていこうと思い良い返事をしたあと、気が付く。魔法さえうまく使えていれば妨害が加点対象となると、悪賢い奴ほど得になる。かなり心が荒みそうな評価法だ。
「就職希望先によってはあとから叩き直される」
「うわぁ……ご愁傷様です」
俺は両手を合わせて、妨害を仕掛けた誰かに手を合わせる。うまくいっていいクラスに入ったら、大変なことになるに違いない。
「だが妨害された側もうまく対処できりゃ、勝手にいいクラスに入れる」
「なるほど」
妨害やらなんやらに納得したところで、俺は石を木からどけるためにまたバングルに触れ魔法を使う。
木に絡みついた重石は砂に、木の根を留める岩の釘は小さな石に。変化して、できれば大木のためになるようにイメージし、口を開く。
「重石も岩も砕けて土とまざり根を隠せ」
ちょっと小石が多いかもしれないが元気に育ってねと心を込めて魔法を使ったが、できればもうちょっと木によさそうなものが欲しいものだ。ダンジョンから出たら木によさそうなものでも検索しよう。大木の根元で土と混ざっていく石を見つめ、しみじみそう思った。
「さてと、大木はこれでいいとして……このダンジョンは攻略したらそれでいい感じ?」
悲しい魔法学校の話は置いといて、気を取り直してダンジョン攻略だ。入学取り消しだなんて悲劇に遭遇しないためにも、俺はダンジョンを攻略しなければならない。
俺は悪くない魔法が使えて、いい気分で俺より学校に詳しいようであるヒューにルンルンと問いかけた。
「攻略……いや、最奥までいけたら確実にいいクラスにいけるが、そこまでする必要はねぇな」
「じゃあ、どこまでいけばいいダンジョンなの?」
阿といえば吽とくるではないけれど、サクサク返ってくる答えに俺はまたいい気分になる。しかもダンジョンをちゃんと攻略する必要がないとくれば更に気分が上がった。
「ウロウロ好きにすればいい。そうしていれば勝手に困難に出会うし、のぞき見している教師たちが判断するはずだ」
「なら、探検しよう!」
現代社会には迷路という娯楽はあってもダンジョンはない。しかも魔法学校の入学試験も筆記と魔力測定しかなかったので、これが初めてのダンジョンだ。
退学がかかっているボッチで急なダンジョン攻略は心細いものだが、気のいい友人と一緒に行くダンジョン探検なら楽しいものである。
それなら是が非でもダンジョンを探検したい。
俺はヒューの返事も聞かず楽しい探検へと一歩踏み出した。
「わかった。なら、興味の赴くままダンジョンを歩くとするか……一応聞くが、いいクラスには入らねぇでいいのか?」
「実力に見合ったクラスでお願いします」
足は止まらず小さくスキップしているが、上がった気分がほんのり下がる。
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俺が口を尖らせるとヒューは小さく笑った。
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