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零の章
その名は
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「君、きみ、こんな所で何をしてるの?」
いやもう、何と言われても。
脳内で猛ダッシュで突っ走る【】の告知に呆然としてしまい、地面に抱えた貴族兎(ノーブルラビット)ごと座り込んでいた。
勿論周囲にはつい先程まで他の兎達も何十匹も居たのだが、この声を掛けてきた人物の気配がした為か、文字通り脱兎、蜘蛛の子を散らすが如く周囲に散って行った。
「さっきまで凄い数の兎が居たようだけど…」
小首を傾げて大丈夫?と聞いて来る人の方を見詰める。
聞こえて来るのは日本語。
感覚としては異国の言葉だと理解する。理由は何となく言葉がダブって聞こえるからだ。
左右2つのスピーカーから声が同じ二人の人物が別々の話を語っているようで、少しだけ聞き取り難い。
【聞き取り難いのは翻訳のスキルがまだ無いからな、私がサポートしててもこれが限界だが、暫くすると気が付かないうちに修得するから普通に会話しとけ。後此方が話す分には影響が無いように調整しているから安心しろ】
先程の事務的な口調とは違い、滑らかな【】の言葉が脳内に直接聞こえて来る。なんともチートな、と思っていると、【】が脳内で溜め息のようなものをついたような気がしてきた。目の前の声を掛けてきた人物に怪しまれているぞ?と言われているような気がして、慌てて口を開く。
「あ、えーと、大丈夫です」
うんうん、俺は大丈夫。
と首を縦に軽くふってみせる。
…この世界のジェスチャーってこれで通じるかどうかはわからないけれど。
「そう?って、ん?」
「ん?」
「その兎テイムしたの?」
「え、あーええと、そうみたいです」
「へえ、君テイマー?」
「いえ、えっと…」
テイマーと言われても、実のところよくわからない。第一ついさっきこの世界に来たばかりなのだから…なんて、言えるわけないよな、まだこの世界について知らないのだから。
多少は警戒し、迂闊な言葉は喋ら無い方が良い。
さて、どう弁解しようかと思っていると、
「その様子だと遠い異国から来たばかりの旅人かな?」
変わった服装(シャツとジーパンとスニーカー)だし、と言われて改めて声を掛けてきた男を見る。
年の頃は16~18歳位かな?俺より年上って感じだ。
赤茶色の髪の毛をショートカットにしている。
対して瞳の色は緑色だ。
比較的端正な顔立ちと言えるが、美形とは言わないな。
程々に均衡の取れた体つきをしている。
革を鞣した胸当てと、革で出来た中々年期が入っている手袋。腰の辺りにはナイフが数本装備されていて、左腕下には何かの武器か何かが納められている?
左腰には剣が納められている。
そして、背中にはリュックのような麻で出来ているような袋。荷物が入っているのかそこそこ膨らんでいる。
軽装なのかな?何だかRPGの冒険者のような格好だ。
「ええ、ここに来たばかりなので」
「成る程ね。とすると、この近くの街に寄って行くかい?」
「道案内お願い出来ますか?」
「いいよ、と言いたいけど俺依頼の途中でね。手伝ってくれたらその分依頼料支払うけどいいかい?」
勿論討伐じゃないし、簡単な薬草詰みだからと言うことで手伝うことにした。
「薬草詰むの初めて?」
「はい」
教えて貰った薬草を取りに、近場の草原に入って二人で摘んでいく。途中摘んでいると、先程まで居た他の兎達が視界の端に時々姿を表すが、俺の傍に別の人物が居るのがわかると即座に姿を消す。
野生の兎なんて本来はこんなものなのだろうな。
俺がテイムしてしまったらしい兎は俺の横にビシッとくっついて来ていて、何だか一緒に居る彼を警戒しているようだ。
それにしても、テイムしてしまったこの兎、いったいどうしたらいいのだろう?
先程から仕切りと俺をキラキラした瞳で見詰めて来る。
傍に別の人物が居るせいで、テレパシーを送って来ないようだが。
「そう言えば自己紹介がまだだったね、俺の名前はアレフ。差し障りが無ければ君の名前を教えて貰え無いだろうか?」
ん?
何だかやけに丁寧に聞いて来るな?
名前か、名前ね。
うーん、俺の名前魂の名前はわからないし、身体の持ち主の名前しかわからないのだけど…
【偽名を薦める】
偽名?それは何故?
【警戒に越したことはないとは思うが、外部干渉回避したばかりだ。お前が居た場所を特定し、近くの街に滞在しているうちに干渉してきたヤツが何か仕掛けて来ないともわからない。】
確かにそうだな。
【ま、地域特定出来ない様に気を使ったのか偶然か、あの兎女神が竜道にお前を置いていったからな、その辺りは大丈夫だろう。】
竜道?
【この世界での魔力溜まりのことだ。竜道に居ると磁場が狂い場所特定が難しくなるし、魔力回復も早くなる。あの兎女神も帰還するのに魔力が必要だったようだしな】
【…無茶しやがって】
なんだか兎女神と知り合いのような?
【それよりさっさと偽名名乗っておけ。アイツを待たせているぞ】
あ、忘れてた。
ちらりとアレフと名乗って来たヤツを見ると、少し困ったような顔をする。
これは早く答えた方が良いのだろう。
しかし、偽名、偽名ねぇ…
「えっと、名前は…」
何にしよう。
何か、うーん、困ったな。
そういや兎ってフランス語でラパンだっけ?コネホだっけ?いずれにしても車みたいでやだなあ。
んー白はブランか。
白兎はなんだろ?
ん?白?あ、そうだ。
「ハクです。」
「そうか、ハクちゃんか!可愛い名前だね!」
【言うの忘れてたがな。そいつ、お前のこと女の子だと思っているから確実に訂正しとけ】
ぶははははっと【】の悪魔のような笑い声が脳内に響き渡った。
いやもう、何と言われても。
脳内で猛ダッシュで突っ走る【】の告知に呆然としてしまい、地面に抱えた貴族兎(ノーブルラビット)ごと座り込んでいた。
勿論周囲にはつい先程まで他の兎達も何十匹も居たのだが、この声を掛けてきた人物の気配がした為か、文字通り脱兎、蜘蛛の子を散らすが如く周囲に散って行った。
「さっきまで凄い数の兎が居たようだけど…」
小首を傾げて大丈夫?と聞いて来る人の方を見詰める。
聞こえて来るのは日本語。
感覚としては異国の言葉だと理解する。理由は何となく言葉がダブって聞こえるからだ。
左右2つのスピーカーから声が同じ二人の人物が別々の話を語っているようで、少しだけ聞き取り難い。
【聞き取り難いのは翻訳のスキルがまだ無いからな、私がサポートしててもこれが限界だが、暫くすると気が付かないうちに修得するから普通に会話しとけ。後此方が話す分には影響が無いように調整しているから安心しろ】
先程の事務的な口調とは違い、滑らかな【】の言葉が脳内に直接聞こえて来る。なんともチートな、と思っていると、【】が脳内で溜め息のようなものをついたような気がしてきた。目の前の声を掛けてきた人物に怪しまれているぞ?と言われているような気がして、慌てて口を開く。
「あ、えーと、大丈夫です」
うんうん、俺は大丈夫。
と首を縦に軽くふってみせる。
…この世界のジェスチャーってこれで通じるかどうかはわからないけれど。
「そう?って、ん?」
「ん?」
「その兎テイムしたの?」
「え、あーええと、そうみたいです」
「へえ、君テイマー?」
「いえ、えっと…」
テイマーと言われても、実のところよくわからない。第一ついさっきこの世界に来たばかりなのだから…なんて、言えるわけないよな、まだこの世界について知らないのだから。
多少は警戒し、迂闊な言葉は喋ら無い方が良い。
さて、どう弁解しようかと思っていると、
「その様子だと遠い異国から来たばかりの旅人かな?」
変わった服装(シャツとジーパンとスニーカー)だし、と言われて改めて声を掛けてきた男を見る。
年の頃は16~18歳位かな?俺より年上って感じだ。
赤茶色の髪の毛をショートカットにしている。
対して瞳の色は緑色だ。
比較的端正な顔立ちと言えるが、美形とは言わないな。
程々に均衡の取れた体つきをしている。
革を鞣した胸当てと、革で出来た中々年期が入っている手袋。腰の辺りにはナイフが数本装備されていて、左腕下には何かの武器か何かが納められている?
左腰には剣が納められている。
そして、背中にはリュックのような麻で出来ているような袋。荷物が入っているのかそこそこ膨らんでいる。
軽装なのかな?何だかRPGの冒険者のような格好だ。
「ええ、ここに来たばかりなので」
「成る程ね。とすると、この近くの街に寄って行くかい?」
「道案内お願い出来ますか?」
「いいよ、と言いたいけど俺依頼の途中でね。手伝ってくれたらその分依頼料支払うけどいいかい?」
勿論討伐じゃないし、簡単な薬草詰みだからと言うことで手伝うことにした。
「薬草詰むの初めて?」
「はい」
教えて貰った薬草を取りに、近場の草原に入って二人で摘んでいく。途中摘んでいると、先程まで居た他の兎達が視界の端に時々姿を表すが、俺の傍に別の人物が居るのがわかると即座に姿を消す。
野生の兎なんて本来はこんなものなのだろうな。
俺がテイムしてしまったらしい兎は俺の横にビシッとくっついて来ていて、何だか一緒に居る彼を警戒しているようだ。
それにしても、テイムしてしまったこの兎、いったいどうしたらいいのだろう?
先程から仕切りと俺をキラキラした瞳で見詰めて来る。
傍に別の人物が居るせいで、テレパシーを送って来ないようだが。
「そう言えば自己紹介がまだだったね、俺の名前はアレフ。差し障りが無ければ君の名前を教えて貰え無いだろうか?」
ん?
何だかやけに丁寧に聞いて来るな?
名前か、名前ね。
うーん、俺の名前魂の名前はわからないし、身体の持ち主の名前しかわからないのだけど…
【偽名を薦める】
偽名?それは何故?
【警戒に越したことはないとは思うが、外部干渉回避したばかりだ。お前が居た場所を特定し、近くの街に滞在しているうちに干渉してきたヤツが何か仕掛けて来ないともわからない。】
確かにそうだな。
【ま、地域特定出来ない様に気を使ったのか偶然か、あの兎女神が竜道にお前を置いていったからな、その辺りは大丈夫だろう。】
竜道?
【この世界での魔力溜まりのことだ。竜道に居ると磁場が狂い場所特定が難しくなるし、魔力回復も早くなる。あの兎女神も帰還するのに魔力が必要だったようだしな】
【…無茶しやがって】
なんだか兎女神と知り合いのような?
【それよりさっさと偽名名乗っておけ。アイツを待たせているぞ】
あ、忘れてた。
ちらりとアレフと名乗って来たヤツを見ると、少し困ったような顔をする。
これは早く答えた方が良いのだろう。
しかし、偽名、偽名ねぇ…
「えっと、名前は…」
何にしよう。
何か、うーん、困ったな。
そういや兎ってフランス語でラパンだっけ?コネホだっけ?いずれにしても車みたいでやだなあ。
んー白はブランか。
白兎はなんだろ?
ん?白?あ、そうだ。
「ハクです。」
「そうか、ハクちゃんか!可愛い名前だね!」
【言うの忘れてたがな。そいつ、お前のこと女の子だと思っているから確実に訂正しとけ】
ぶははははっと【】の悪魔のような笑い声が脳内に響き渡った。
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