この身体俺のでは無いようです!ー異世界転生ってここは何処!?ー

柚ノ木 碧/柚木 彗

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零の章

昼と夜の狭間 裏

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【で?】

【で、とは?】

【お前は何なんだ?】


 フッと鼻で嘲笑う黒い人に目を向けるが、その姿は此方を向いているのかどうかがわからない。


【○○から干渉される前には居なかった様に思うがな?】

【その通りです】

【お前、誰だ?】

【…】

【言い方変えようか、何の用でここに来た?】


 黒い人形の塊が少し動いたように感じると、その場に座ったように形が形容される。
 突っ立って居た時も思ったが、仕草が異性のような気がする。
 かといってこんなに歯も目も何もかも真っ黒な人形等、色気も何も感じないが。


【女か?】

【気色悪いこと言わないで下さい。私は男でも女でも、どちらでもありません。】


 じとーと睨み付けられている気がして、システムを見ると視線は黒くてわからないのに合わさった気がして肩をすくめる。


【あー悪い、話戻そうか。何の用できた?】

【気が付いたらシステムとしての機能として居ました】

【何だそれは?】

【元は干渉の一部のシステムだったようですが、そこに介入。マスターに回避行動をしてもらい介入システムの離脱、及び独立させました】

【何故そんなことを?】

【○○が嫌いなだけです】

【お前を作ったんじゃねーの?】

【オゾマシイこと言わないで下さい。化身の一つなだけですから】

【オイオイ、どっちも同じでは?】

【強調させて頂きますが、ち が い ま す】

【お、おう】

【大体ですね、○○は気色悪いのですよ。考え方がそもそもオゾマシイ。厭らしい。穢らわしい。正直腸を引き裂いて出してやってから、機関銃とナパーム弾と手榴弾と火炎弾と、兎に角あらゆる武器をぶちこんで追い撃ちをし、やっっっっっと意識が落ちたら、その藐の額の部分に肉と書いてから踏み付けたい位に嫌いです】


 半端なく毛嫌いしているとでも言うように、【ケッ】と微かに聴こえたのは幻聴ではないようだ。


【…】

【唖然とされても困りますけど?】

【肉って】

【言いたいことはそこですか?】


 確かにそうなのだが…


【なあ】

【何です】

【お前システムって言ってたよな?】

【今でもそうですよ】

【その割には感情ないか?】

【…?】


 システムは解らないのか戸惑っているような気配がする。
 少し間をあけてから、


【そう、かも知れませんね】


 一歩、彼は歩を進める。

 おや?マクスウェルはシステムを見詰めると、徐々に黒い人形が明確な人に近付いて形創られていく。
 ーー意識が変わったのか、口元にはニヤリと不敵な笑みをたたえ、スレンダーな男装の麗人があらわれる。
 姿形は女性のようだが、どちらかと言うと中性的とも言える。


【その姿…】

【おや?】


 褐色の肌は人間に近く、先程迄の影のような真っ黒としか言いようが無い人形よりも遥かに好感が持てる。
 だがしかし、藐が無い。
 其処だけは漆黒の煙を纏っているかのようにあるのか無いのか判別が付かない。


【…なんつーか、なぁ】


 当のシステムと言えば、やはり顔は無理ですか、成る程ね。等と納得をしたように頷き、自身の腕などを見ている。


【感情を自覚すると姿が判別できるなら、顔は…まあそれは放置でいいですね、システム的には意味はありませんし】

【欲しいなら創ってやるか?】

【いりませんよ、私はマスターに尽くすだけの存在ですので】

【何なら何処ぞの肉体に移すってのやろうと思えば出来るんじゃねーの?】


 勿論死体とか限定で、と軽い感じで言うと、


【それこそ不用ですね。私にはマスターしかいりませんし】


 キッパリと断られる。


【随分とハクを気に入ったみたいだな?】

【当たり前じゃあ無いですか、あんな小さくて希少動物並みの可愛らしい生き物、保護欲を沸き立てられてヤバすぎます。母性とか父性とか総動員されてヤバすぎます!危険過ぎます!ええ、特に小柄って所が問題ありすぎです。何ですかあれは、けしからん。マクスウェル、貴方が前世の姿だと言うならあのマスターの姿何とかならないのですか、可愛い過ぎるでしょう!!貴方も子供の頃ああいう姿だったのですか!?だとしたら今すぐ元に戻りなさい!】

【大人な私全否定っ?!】

【そんなものはとっくの昔に全否定です!男だか女だかわからない容姿なら、いっそ少年になりなさいっ!!その方が需要があります!!】

【いやいやいや、てか誰に需要があるんだよ】

【ワタクシにです!】

【オウ、システムさん目が座っててマジで怖いんですがーっ!何だか貞操の危機を感じるんですがーっ!!】

【安心しなさい、私に性別は"多分"ありませんから。】

【多分って何だ多分って!】

【どっちにしてもマスターにしか興味はありませんから。精々貴方には着せ替え人形になって目の保養をして頂くだけで】

【それってどんな鬼!】

【さあさあ、貴方にはマスターにマクスウェルって言うりっっっぱな名前を頂いたのですから、しっかり着せ替え人形して頂きますからね】

【いや、遠慮しま…】


 ずるずると這いずって逃げようとすると、ガシッと足首を捕まれる。
 途端に強烈な激痛が全身を走り、硬直する。
 そう言えば、ハクの傷み引き受けていたっけ………


【うふふ♪逃がしませんよ、マクスウェル。名付けて貰えない鬱憤の分、ちゃんと付き合って貰いますからね?一先ずその女物の上着、もっと可愛らしいのとか美しいものにしましょう。いいですね?ね?】


 ガクブルとマクスウェルは震える。
 実はこの女物の上着キモノはシステムが出した物だ。
 綺麗だからいいかなーと、渡されて気にもせずに羽織ってしまったのが運の尽き。



【ほ、程々にお願いします……】


 ハクの空間に涙目のマクスウェルの姿が憐れみを誘うが、名付けて貰えないシステムは、ただただ鬱憤を晴らす為に次々と嬉々として着付けていくのであった。
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