この身体俺のでは無いようです!ー異世界転生ってここは何処!?ー

柚ノ木 碧/柚木 彗

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焔ノ章

この街の名前はファンダム。
昔は獣人が住む小さな集落でしか無かった。

当時は女子供や老人、戦えない者も含めて人口50人程で、日々隣の森ーーグリンウッドと言うのだが、そこから現れて襲撃してくるモンスターに怯えながらひっそりと暮らしていた。
だが、そんな静かな暮らしも深き森に住む数々なモンスターに一人、二人と倒れ、または去って行き、気が付いたら僅かに残ったのはカリナタ含めて八人のみ。
それも全員半端者と呼ばれ、世界から疎まれるハーフやクォーターばかり。
獣人やドワーフのハーフにカリナタの様なハーフエルフ。
生粋の者や人間は一人も居なかった。
それもそうだ、この村はーー世間から隠された村だったから。

この世界は半端者が生きて行くには辛い。
特に獣人は風当たりが強い。
獣人の国である南方の国では違うらしいが、この場所を抜けてグリンウッドを通り、南方に向かう等無理な話。
そもそもグリンウッドの深き森を抜ける等、無理なのだ。

…生粋のエルフや森の住人で無い限りは。


「せめて成人していたら良かった…」


集落に住むハーフエルフ等はよくこう喋る。
集落を包むようにある深き森、グリンウッドに住むには隠れ里に住むエルフの秘術が必要と言われている。
それが何なのか、大抵溢れ者であるハーフエルフには知ることは無い。
成人する前にほぼどのハーフエルフも皆里から抜けるからだ。
それでも数百年前の前族長の時代は良かった。
ハーフエルフだろうがクォーターエルフだろうが、里から追い立てるような事も無かったし、人買いに売り付けるような事も無かった。
それがここ約50年前、前族長が死に、代替わりした途端カリナタ達半端者は追い立てられ逃げてきた。
逃げなければ人買いに売りつけられていたからだ。
売られたら最後、奴隷として呪を掛けられて物として扱われる。
国によってはゴミの様な扱いしかされない。
そんなのは御免被る。

だからだろう、この悪魔の棲み家や悪魔の巣窟等と言われる森の中で似た者同士肩を寄せあい、静かに暮らしてきた。


そして気が付いたら八人。
あまりにもこの森の環境や世間は厳し過ぎた……。


最初の頃は強い獣人のハーフがいた。
歴戦の戦士とでも言うかの様な戦いっぷりで、グリンウッドの森のモンスター達を蹴散らし、圧倒的な覇気を持ち集落の住人を守ってくれた。
だが月日は残酷だ。
彼の子供が産まれ、育ち、やがて息子は子を持ち、彼はーー老兵へ。
だからかも知れない、彼は自身の息子と孫を集落から旅立たせた。
誰しも引き留める事は出来なかったし、引き留めることもしなかった。
諦めていたのだ。


次の襲撃があれば、恐らく全滅する。


生きる事に、何もかも全て諦めざるを得なかったのだ。
生まれが半端だっただけなのに………

そんな折り、八人居た住人は驚いた。
いや、たった一人だけは違った。
それは息子や孫を送り出した老兵が、にへ~と笑ったのだ。
まるで悪戯が成功して笑う子供のように。


「よ!みんな!帰って来たぜっ」


老兵の息子は笑みを湛え、孫はすっかり逞しくなって帰って来た。
沢山の同志と、若き日の老兵の様な強い眼差しをもった一組の人間の夫婦を連れて。

その日からカリナタ達半端者の運命は変わった。

世界は彼等に優しくなった。

一組の夫婦は老兵の愛弟子の弟子だと、カリナタ達に挨拶をしてくれた。
そして偏見の無い微笑み。

知らなかった。
人の偏見の無い笑みは、こんなにも心を豊かにしてくれるのだと。
始めて覚えた。
差別をしない人もいるのだと。

差別をされるのは当たり前、怯えて暮らすのは当たり前、これが常識だとずっと思っていた。
でもそれは違うのだと知った。
二組の夫婦は笑うのだ「ハーフ?クォーター?そんなもんどうでもいい」「ただの個性じゃない」「同じ人なんて居やしないよ」。
そして最後にこう二人で締めくくったのだ。


「「それでも文句言う奴は連れてきな!性根たたっ切ってくれる!!」」


それはカリナタ達にとってとても欲しかった言葉。
いままで誰も言ってくれなかった、欲しいけど手に入らなかった言葉。


こうして、集落は名を変え街になり、その夫婦の名(夫がキアフ・ヴァン・ダム、妻がディーネ・ヴァン・ダムと言った)から取ってファンダムとなった。
他国のよく思って無い者は異端の街、半端者の街と呼ぶがその実、多種多様な民俗や獣人、その他多種多様な人々が集まる街へと大きく変わった。
誰も半端者でも何も言わない。
当たり前の個として扱う街。
差別や権力等といったものは無い。
…多少強引で力強くな一面はあるけども、皆笑っている街。

グリンウッドの驚異はあるけども、皆が1貫となって生きていける街。




生きていて良かった…

こうして、カリナタはファンダムの市場で買い物をしながら微笑む。
ただ時折思うのは、あの老兵が一体どの種族とのハーフであるのか?そしてどのくらい長く生きて居るのか。
目の端で本を読みながらのんびりと日向ぼっこしている老兵を眺め、クーシーにしか見えない茶色な毛皮を撫でたいな~と思いつつ、息子達が帰って来たせいか、急にやる気が出た為か、全盛期程ではないが戦闘に混じって戦う老兵の孫であるケンネルに、今度聞こうかな?と思うのであった。
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