この身体俺のでは無いようです!ー異世界転生ってここは何処!?ー

柚ノ木 碧/柚木 彗

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焔ノ章

番外編 御姉様方の新年 2

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「そう言えば竜王様がグリンウッドにいらしたのですって」

「ではあの噂は本当なのか」

「噂って?」

「何でもグリンウッドで長い間求めていた念願の番相手に巡り会えたらしい」

「まあ!」

「可愛らしい女の子だって言う噂だって」

 本日も元気にハクにテイムされたノーブルラビットのモチは、アルバイトをしている宿屋の前をモチ用の箒で器用に掃除している。

「ンキュ?番?」

 ここファンダムは新しく出来た街であるが、元は様々な種族の溢れ者が流れ着き寄り添い集まった小さな村である。
 ハーフエルフから始まり、獣人の国と呼ばれて居るウィングダス国以外では余り居ない獣人に飛竜族、ハーフドワーフにハーフダークエルフ等といった人間至上主義な国からは半端者と呼ばれる者達の楽園と言われ、様々な種族の混じった者達が目の前を噂話をしながら過って行く。

「あらモチちゃん、聞いてたの?」

「すいません、つい」

 竜王様の番って確か僕の【御姉ちゃん】の事だよね。
 テイムされて此処に来る前にグリンウッドで別れた双子の姉。
 僕が渡した魔力が籠った赤い瞳、綺麗な毛並みの白いノーブルラビット。
 モチは心の中で思いつつ、確りと確認をする。

「竜王様の番って銀髪の赤い瞳の女の子でしたっけ?」

「モチちゃんよく知ってるわね、ええ、そうだって話よ」

「そっかぁ、元気にしてるのかぁ…」

「ん?元気にしてるのか?」

「ピヒャッ!な、何でも無いです!」

 うん?とモチの呟きを聞いた人が小首を傾げた途端ーー…

「ピギャッ!」

 ビタンッとモチの顔に貼り付く何時もの光景。

『モチ~!逢いたかったのじゃぁぁあっ』

「ピ…キュ~~ッ!」

 苦しい~!と貼り付いたミトラをベリッと引き剥がし、プクッと小さく頬を脹らます。

「もう!ミトラさん貼り付かないで下さいって何時も言ってるじゃ無いですか!」

『むう、そうなのかの?(だがそのせいで誤魔化せたのでは無いかの?)』

 え?とモチが先程の人を見ると、クスクス笑って「それじゃあね、モチちゃんに精霊さんまたね」とヒラヒラと手を振って去って言った。

「聞いてたんですか?」

『妾に取ってモチのぴんちは救うものじゃ』

 ふふふ、とミトラは笑ってモチの首筋にグリグリと擦りよる。

「ミトラさん僕お掃除してるんですけど」

『大丈夫じゃ、妾は勝手にスリスリしてるだけじゃ』

 むふふ~フカフカモフモフじゃ!と言って離れないミトラにモチは諦めて手を動かす。
 既に慣れっこのようだ。

『モチはフカフカじゃの~柔らかくて寒くなって来た季節にはこの様にくっついて居たいのじゃ』

「それじゃあ足とか寒いんじゃ無いですか?」

『それは大丈夫じゃ。ちゃんと愚弟の所で頼んだ暖かいニーハイブーツを履いとるからの』

 見せびらかす様にプランっとモチの前に片足を上げると、モチがその足をウサギの前足で器用に下ろす。

「ミトラさん僕だから良いけど、見えちゃったらどうするんですか」

『んむむむむむ…はしたなかったかの?』

「です」

『はぅぅぅぅ…モチに言われるとダメージが半端ないのじゃ』

「だったらやらなければいいじゃ無いですか」

『んぐぐぐぐっモチ辛辣じゃ』

「何処が辛辣ですか」

『モチのいけずなのじゃ~!』

 ぷんっと頬を脹らませ拗ねたミトラはモチから顔を背けながらも確りと首筋にしがみつき、文句を垂れ流す。
 ブーブーと小声で言うから他の人には聞こえないが、首筋に抱き付かれて居るモチには確り伝わる。
 仕方無いなぁとモチが打開策を練っていると、

「モチこんな所で何してるんだ?」

 掃除は終わったか?と宿屋の中からモチの主人であるハクが顔を出す。
 途端に道行く人々から視線を浴びる。
 銀髪に人を惹き付ける様な容姿に、そして少し笑むと場の空気が華やぎ、まるでその場に軟らかな色合いの可憐な花1輪が咲きつつあるかの様な雰囲気へと変わる。
 男なのに少女の様な華奢な身体に陶磁の様な色白の艶やかな肌。
 唯一残念なのは、身長が些か低い事だろうか。

「ミトラ相変わらず引っ付き虫だな」

 例え辛口な口調でも、周囲の女性達がほぅ…と溜め息を付くのをモチは見詰め、相変わらずご主人は無意識に色気を醸し出してなぁと思う。
 今も目線を少し上げただけで周囲の女性達の息を飲む音が聞こえて来るほどだ。

『ハク!妾は引っ付き虫では無いのじゃ!』

「んじゃモチ限定の張り付きモチ」

『何なんじゃその例えはのぅ…』

 モチにモチとはの、とガクーと項垂れるミトラ。
 そのミトラを見詰め口の端を上げるハク。

 "今日のご主人は口の悪い方のご主人の様ですね。"

 チラッとモチは自身の主人を見詰めると、悪戯っぽい瞳を輝かせている。

 "ミトラさんをフォローしないと不味いですか?ね?"

 とウンウン考えて居ると、

「モチくーん!」

 野太い第一声の声で悪戯っぽい瞳は即座に引っ込んだ。
 モチが主人の顔を見ると、何時も通りの優しい軟らかな光が瞳に宿って居る。

 "これって優しい方のご主人です。"

 ふむふむとモチは納得し、声のした方を見ると見知った…………
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