商店街のお茶屋さん~運命の番にスルーされたので、心機一転都会の下町で店を経営する!~

柚ノ木 碧/柚木 彗

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 つらつらと俺の経営している『小林茶房』の事情を述べる。

 こんな若造である俺が何故駅前商店街でお茶屋を経営を維持することが出来ているのかと言うのは、嵯峨さんには謎だったらしい。

 確かにと思う。
 幾ら男だとは言っても【Ω】だ。この世界で言えば、ほんの少し前までは差別問題があり、例え抑制剤で抑えられる様になった昨今でも、Ωはヒートがあれば隔離するべきだと言う人は多い。
 オマケに【運命の番】問題がある。

 世間では滅多に【運命の番】に等会えるものでは無いが、もし、万が一運命の番にΩが会ってしまえば即座にヒートが起きる。
 勿論人によって大なり小なりとヒートの度合いは違うが、ほぼ初対面で【運命の番】に出会ってしまうとヒート(発情)が起き、周囲にΩのフェロモンを無差別に撒き散らす。
 ヒート状態のΩである本人が嫌がって居ても、どうしても起こってしまう。

 そうして次の問題は周囲のαが発情すること。
 発情すると理性の抑えきれないα達が一気に暴走し、フェロモンを出しているΩへと群がる。

 ある意味事故だ。
(それとは別だが、悪意のある人為的事故…違法薬物を使用し、擬似的にヒートを起こさせるなんて事柄も最近事件として起こっている程にタチが悪い)

 現在ではありがたいことに医学の進歩で抑制剤等の薬でヒートを抑えられるとは言え、過去の事例を記憶している年代からはΩが社会に出て働くことに反対をしている人もいる。
 同時に差別も存在しており、よく聞く話だと旦那がαである若い既婚女性βからは旦那が取られると大騒ぎをする既婚女性もいると言う。

 実際真宮もこの商店街で店を構えるようになってから若い既婚女性から遠巻きに見られた事が何度もある。口に手を当てながら此方を指を刺し、聞こえるような声を出して「うちの旦那αなのよ、あんな人が側に来たら嫌だわ」とヒソヒソと他の人と陰口らしきことを何度かされた。

 正直『俺にだって選ぶ権利がある』と言ってやりたくなる程薄気味の悪さを感じる光景なのだが、当人は自分が異様なことをしている自覚はあるのだろうか。
 あくまでも此方とは目を合わさない。

 まして、此方はΩとは言え男性。ちょっと考えればわかるのに。

 小心者め。
 だからつい、意趣返しとばかりに意地悪と思いつつも返してしまう。

「聞こえているよ!」

 こちとらΩとは言え気が強いほうだ。
 そもそもお前の旦那誰だか知らねーよ。とまでは言わないが、ギッと睨み付けてきた既婚女性に対して眼光鋭く睨み返してやると大抵の女は我に返ってそそくさと退場する。

 言っとくけどな、下手な女よりは力があるんだぜ。
 こちとら毎日重いお茶が入ったダンボールとか荷物を抱えて居るんだ、普通のΩよりも確りとした筋肉がある。

 Ωだからと言って、虐げられる気は無い。
 噛み付いて来たら、此方も噛み付き返してやる。しかも噛んだら離れない位執拗に。
 普通Ωはケンカを売られたら同じ土俵の上に上がるコトはしないとか言われているが、俺はその逆。ほんっと昔から気は強い。

 唯一駄目だったのは、故郷で会った【運命の番】相手ぐらいだ。

 その相手も結婚指輪をしていたし、もう会うことも出会うことも無いだろう。
 何せ故郷は東北の端で、ドが付きまくる田舎。海も山も畑もある、都心とは無関係の田舎だ。

 等と思っていた。


 …こう言うのってフラグが立ったって言うのかな。



「え」

 心が、ざわりと沸き立つ。


 途端に全身が炎の中に入ったのか、それとも俺自信が燃え上がったのか。

 匂い。

 この、匂い。

 初めて会った、あの人の匂いが。

「何故」

 嵯峨さんが「小林さん?」と不思議そうに言った途端、鼻に手を当てて俺から離れた。
 それから慌ててポケットの中から何かを取り出し、飲み込んだ。
 飲み込んだのは恐らく、α用の抑制剤だろう。

「小林さん!抑制剤ありますか!?ヒートになっています!無かったら俺が持っているΩ用の薬で構いませんか!?」

 御免、嵯峨さん。
 息が荒く過呼吸のような状態になりろくに返事が出来ない最中、ゆっくりと頷く。すると「失礼します」と嵯峨さんが吸入用の抑制剤を俺の口に当てた。

「薬を吸った後眠くなりますが、大丈夫です。俺が病院まで運びます。安心して下さい」

 手は『今は』まだ出しませんので。

 小さくそう聞こえた声に「『今は』かよ」と小さく笑いー…。


 目を閉じる瞬間。
 道の向こう側で、例の【運命の番】であるあの人が此方を顔を歪めながら「みつけた」と口を開いたのを見た。

 …気が。


 ……した。


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