商店街のお茶屋さん~運命の番にスルーされたので、心機一転都会の下町で店を経営する!~

柚ノ木 碧/柚木 彗

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50 ビールに綿菓子、野菜食え

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『何がどうしたって?』


 現在時刻は夜の9時。
 そんな時間帯に俺は自宅の一階の台所で一人、自棄酒をしております。
 え?嵯峨さんはどうしたって?

 いやー…うん、泣いていい?


「だってさ、だってさ、だってさあああああ~!」

『餅付け!』

「それ言うなら落ち着けな?」

『冷静キタコレ』

「ワインを炭酸で薄めてコップ一杯開けてしまったけれど、俺は冷静でしょうか?ちなみに席を立ったら目眩がしてフラフラしまふ!」

『無理!お前お酒弱いじゃん!今も顔真っ赤だし、どう見ても滅茶苦茶酔っぱらい!つーか語尾!』 


 ギャハハと大笑いしているパソコン画面に映っている幼馴染の手には缶ビール。美味そうにアチラもゴクゴクと飲んで、俺の話を肴に爆笑している。
「どうでも良いけど酒のツマミ程度でも良いから何か腹に入れておけ、そうじゃないと悪酔いするぞ」とか言ったら慌てて画面の奥へ行ったかと思ったら、手には何故か綿菓子を持って来た。

 …何故綿菓子?
 しかも桃色の。
 綿菓子の入れ物には某ハートをゲットしちゃう魔法少女系達のキャラクターが。
 お前それどんな顔をして購入した?と言うか、地元で祭りでもあったのか?
 甘党か!甘党なのか!?


「ビールに綿菓子はあんまり合わないな、しょっぱい系が至高だな」


 そんな事を言いつつもムシャムシャと綿菓子をむしって食っている。
 俺の幼馴染は時折行動が謎だ。

 そんなワケで現在テレワークの真っ最中。正確には店で使う商品を注文してから本日あった事柄…主に聞いて来たのはヒムカさんの件。


「ヒムカさん、意外と話せる人だった」


 ここ連日モーションを掛けられて居て、常連さん達と騒がれるのは困っていた。
 おまけにストーカー気質なのか、追い掛けられたのは怖かった。ただ今日みたいな誤解もあったので、偶然なのだろうと思うことにした。
 実際はストーカーじゃないかと思っているが、指摘しないことが良いこともある。
 フラグは必要ありません。

 それに嵯峨さんが気になって来て…否。
 何時の間にか好きになって居た。


「はぁ、嵯峨さんに会いたい…」

『今日会っていたじゃーん』

「そうだけどさー」

『贅沢だぞ、贅沢。俺なんて次に彼女に会うのは明日だ!』

「お前も贅沢じゃね?」

『んだな!(そうだな)マジ彼女会いたい!』


 PC画面の幼馴染はマイペース。
 何時の間にか綿菓子を食べ終わり、口の中が甘いと文句を言いつつ何時持って来たのか、スーパーの白い惣菜容器を包んでいた透明なラップ(サラ○ラップ)を破り、中身のハムを割り箸で取り出してムシャムシャと…。
 そのハム、俺の所に普段送っているハムでは?


「野菜食え」

『えー。つか、嵯峨さん?だっけ?その人に会いたかったんじゃね?』

「それとコレとは別。お前の身体の為に野菜を食え」


 肉ばかりだと栄養バランスが良くないぞ。それでなくても先程綿菓子食べたのだし、野菜を食べてバランスを補え。


『ふおお~!おっし、冷蔵庫の中漁って来よう』


『眞宮がデレたー!』と謎の叫びを上げながら、画面が幼馴染の家の中を移動する。って、この画面スマホか。それなら会話継続してもいいよな。
 電源も切れて居ないし。


「本当はさ~嵯峨さんと夕飯食べてからその、告白するつもりだった」

『ほー』

「何だよ、これでも本気だったんだぜ」

『いや茶化す気は無いぞ?ただなー意外だなって』

「意外?」

『そ。俺はてっきり【運命の番】相手のヒムカさんと都会で出逢って、いや再会か?兎に角そんな感じだからくっ付くかと思って居たけどな』

「無理」


 少し前なら、それこそ嵯峨さんに会って彼の優しさに触れてしまう前なら。もしかしたらその可能性はあったのではと思う。


『それはヒムカさんがバツイチだからか?』

「それとコレとは別」


 独身なら基本気にしないよ。余程年齢が離れているなら駄目だろうけど。


『それじゃあ何故?』

「…お前やけにヒムカさんの肩持つな」

『そりゃぁね~全く知らない相手よりも知り合いの方がって思って居たしさ。でもまぁ、んー…』


 其処でスマホの画面が何故か幼馴染の家の天井が映される。
 そうして聞こえて来たのは冷蔵庫を開ける音、それとガサガサ鳴る音。ビニール袋か何か漁っているのか?


「おー冷蔵庫の中身、見事に何も無い。あるのは卵だけ」

『おいおい、明日の朝ご飯の分も無いのか?』

 大丈夫なのだろうか、この幼馴染の食生活。とか思っていたら、


『おっし、これから畑行くか~』

「ええええ!?」

『いやー俺ん家の玄関横に家庭菜園があるんだなーコレが』


 幼馴染の天井を写していた画面が暗転。


「ポケットの中に入れたな」

『ばーれーたー』

「お前相当酔っているだろ」


 人の事は言えないけど。


『いやーそう言えばかいわれ大根、台所で育てていたから炒めようかと』


 幼馴染の声の奥から聞こえて来る、ブチブチと言う音。それから「生の気分じゃないな、油で炒めるか~。醤油が王道、それなら卵も入れて炒めるか」という声。

 先程夕飯を食べたけれど、何だか微妙に腹が減った気がする。
 かいわれ大根では無いけれど、もやし位なら冷蔵庫に入っていた筈。

 フラフラしながらも冷蔵庫の中身を漁りに行った俺は、PCから不意に聞こえて来た幼馴染の『眞宮が幸せなら誰が相手でも良いけどね』という声に苦笑した。

 中学の時、Ωになってしまった俺を一番心配してくれて、どうしたら良いのかと右往左往して大人達相手に聞きまくってくれた。お陰で当事者であった俺が一番冷静になってしまったって言う。

 でもこの幼馴染が声を大にしてくれたからバース性の学園へと高校から通うことが出来たし、何も知らなかった俺がΩ用の抑制剤も、首を守る為俺自身を守る為にプロテクター付けることも出来た。
 こうして考えると幼馴染と言っているが、どちらかと言うと親友ポジションだよな。黙っておくけど。

 何時の間にかかいわれ大根の卵炒めを完成し、食い始めた幼馴染相手に「有難う」と呟くと、ニヤリと笑って、


『告白、頑張れよ』

「…頑張るよ」


 俺も簡単に醤油で炒めたもやしを口に入れ、小さく呟いた。
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