商店街のお茶屋さん~運命の番にスルーされたので、心機一転都会の下町で店を経営する!~

柚ノ木 碧/柚木 彗

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61 煽り過ぎ

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 末明さんの旦那さんである晃洋の知り合いでも無いと思う。そう言う末明さんは一見普通にして居るが、女性の動きと手に持っている鞄に注目している。


「(あれ、多分刃物を鞄の中に入れている)」

「(ひえ)」


 そう言えばやたらと鞄の中に手を入れ、ゴソゴソと中を漁って居るんだよね。鞄の大きさから大きくても一般家庭で使用する包丁位では無いだろうか。
 あれで物差しとか菜箸が出て来てくれたなら良いなとか思ってしまうのは、俺が小心者だからだろう。


「(小林さん、出来たら動かない、もしくはゆっくりと後退して行って店内から住居へと移動して。警察を呼んで欲しい)」

「(え、でも末明さんは)」

「(多分大丈夫。相手は素人だし。とは言え油断はしないよ)」


 そう言って何故か末明さんは挑発的な顔付きへと変わり、ペロリと下唇を舐める。
 うわ、色っぽい。

 って、いやいやいや、それって駄目でしょう。
 此処は俺の店舗で、尚且つ俺は店主で。そうして末明さんはお客さんでご近所の仲の良い友人で、産まれたばかりの双子のお母さん。そんな人を危険に晒したくはない。


「何コソコソ小声で話しているのさーー!」


  また大絶叫が女性から発せられる。
うう、さっきから耳が痛いっつーの。


「コソコソも言うさ、知らない人から【あたしの男を取った】なんて言い掛かりを言われりゃあな。冤罪過ぎるし、君が言う男性がどんな人かも知らん」

「はぁーーー!?」


 うわ、また大絶叫。
 耳がキンキンして聴覚がおかしくなりそう。何でこんな大声で言うんだよ、この女性もしかして聴覚がおかしくなって居るとかなのか。
 それより何より末明さん、何煽っているんだよ~!


「(末明さん煽り過ぎ。大丈夫?)」


 俺がこっそりと末明さんに言うと、


「まーた、あたしの悪口言っているのかーー!」


 げげ。
 末明さんが危惧して居た通り、再度大声を出してから鞄から取り出したのはステンレス製だと思われる、160ミリ位の長さの三徳包丁。
 その包丁を持って「あたしの事を馬鹿にするのが悪いーー!」と、大声で喚き立てゲラゲラと笑い始める。


「(うわ~狂っているとしか言えない)」

「(斜視か…)」


 片方の目が方向に向いているが、もう片方の目が外側に向いている。先程は両目で此方を向いていたから…


「(頭部に何かしらの症状が進んでいるのかも)」


 末明さんがボソリと呟くが、先程からずっと同じ姿勢のまま。
 一見すると固まっているかのように見えるが、隙を伺っているよう…って、え。

 末明さんが素早く上着を脱いだのだけど!?


 ※


 今回の一部分の言葉で数日悩んでしまいました。
 わかる人にはわかるでしょうが、多分この言葉でなら大丈夫だとは思うのですが…。不快に思った方が居たら申し訳ありません。
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