商店街のお茶屋さん~運命の番にスルーされたので、心機一転都会の下町で店を経営する!~

柚ノ木 碧/柚木 彗

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64 ブレンドコーヒーとビスコッティ

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「お疲れさん」


 と、不破さんが苦笑しつつ銀色に輝くステンレスの丸盆を片手に持った状態で此方にやって来る。
 っておや?何時も不破さんが経営している喫茶ロインで着用しているエプロンを着ている。うん、相変わらず格好良い、イケオジって感じ。
 一度店に戻ってから来たのかな?


「これ俺からのサービス、うちの店のブレンドコーヒーと焼き立てのビスコッティ」


 俺の眼の前のカウンターに珈琲を置き、ビスコッティを入れた小皿を渡してくれた。
 焼き立てだからまだ熱いよと言われたけれど、手に持ったビスコッティはほんのりとした温かさだ。


「持って来る間にだいぶ冷めたな~。ああ、お茶屋さんなのに珈琲の匂いが混ざってちょっと失敗したな」


 と苦笑しながら長閑に話している不破さん。
 有難うとお礼を言うと、いえいえ~と何処か間延びした声。

 尚、お嫁さんの末明さんは双子ちゃん達のミルクタイム。
 シッターさんが先程呼びに来たのだ。

 この場に居ない嵯峨さんはと言うと、アパートの大家という事、それと先程の女性と一緒に住んでいると言う娘さんに事の次第を知らせる為と道案内をする為、警官達と一緒に出て行った。


「有難う御座います、遠慮無く頂きます」

「うんうん、ちょっと休憩して今日は早めにお店を閉めちゃった方が良いと思うぜ」

「いえ、これぐらいで店を閉めるなんてしませんよ」

「そうかい?無理はしてはいけないよ」


 そう言ってチラチラと視線が彼方此方に飛ぶ不破さん。
 何時にない態度にはて?と思いながら不思議に思っていると、


「う~ん、ちょっと相談なんだけど小林さん」

「はい?」


 何だ?
 凄く歯に何かを挟んだ様な、ああええと、奥歯に物が挟まったようだったっけ。
 思っていること、言いたいことをはっきりと言わずに、なんとなくぼかしている感じが不破さんからする。ちょっと、嫌だなぁ。


「さっきの女性の件でちょっと、店閉めて家に来ないかい?」

「へ?」

「薬使っていたでしょ、あの女性。多分と言うか変な所から購入したと思うんだよね~。で、まぁ、この店、小林茶坊に入ったのを見られたと思う」


 うわぁ、それってつまり…


「チンピラとかが家に押し掛けてくる可能性があるってことで、警戒をしていると言うことですか?」

「うん、何か変なのが小林さんの店の周囲でウロウロしているのが居るみたい」


 小柄だけど、一応同じ様に薬を使用していたら一般人だと対応出来ないだろうし。
 等と言われて…こっわ!
 何ソレもしかしてつい先程の件がもうお薬を売った側に知られた可能性があって、尚且つ俺の店が標的になるってこと!?
 迷惑を掛けられた側だって言うのに、何ソレ理不尽!


「俺の店、喫茶ロインなら警備とかに特化したクラウディオの会社の部下達が常に居るし、何より警官達が立ち寄る店だから」


 言わないけど分かる。
 不破さんや今回の騒動を止めてくれた末明さんが居るから、俺の身を案じてくれているのだろう。


「おまけに末明が心配し過ぎちゃって、夫としては奥さんの心配事は払拭したいんだよね」


 惚気?
 と言うか、それが本音ですね?不破さん。
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