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バレンタイン2
しおりを挟むその後「仲が睦まじいねぇ」と。
何処のお年寄り?と言う、妙な台詞を呟いているディラン兄さんの生暖かい眼差しに内心苦悶しつつ、冷静を装いオルブロンと共にパウンドケーキの生地を制作。
どうでも良いけどディラン兄さん、何故台所の一角に椅子を持ってきて書類仕事初めたのかな~?料理長も苦笑して居るけどね。それとニキ様は何故ウチに居たのかな?今はタオルで額を拭っているけど。ってコトは運動でもしたのかな?しかもディラン兄さんと。
聞いて居ないのだけど…
犯人、いや共犯?だと思われるディラン兄さんの方をじと~と見詰めていたら、
「ごめんね、最近弛んで来たこの身体を鍛えるためにニキ様を呼んだのだよ。弟のジーニアスと違って私は鍛錬をしていないとすぐ体力が衰えるし、ジーニアス程強くないからね」
そう言ってディラン兄さんは「困ったもの」だと言わんばかりに肩を竦め、
「本当はジーニアスに頼みたかったのだけど、彼は近衛兵だから中々時間が取れなくてね?それなら一緒に鍛錬しませんか?と、私の話を聞いてくれたニキ様が訓練に付き合ってくれたのだよ」
「ご謙遜を。ディラン様も中々の腕前でしたよ」
「ふふ、それなら良いのだけど」
「何度か危なかったですし」
「領地に居た時に鍛えてくれたジージやエルロンの指導が良かったからだね。それにしても強いなぁニキ様は」
「そう言えばジージ様やエルロン様のお弟子さんでしたね」
「いや、弟子って程では無いよ。彼等はあくまでも…」
うん。
何だかディラン兄さんとニキ様の会話を纏めると、ディラン兄さんはこの王都ロメインに来てから碌に身体を動かして居ないので心配だったらしい。
確かに領地に居た時は、兄弟…と言ってもジーニアス兄さんとだけど、二人で良く鍛錬していたのを見ていた記憶がある。
つまり兄さんは『もし』何かあった時、デュシー姉さんや私に末っ子のオルブロンの姉妹達を守れる様にと、普段から鍛えておきたかったらしい。
備えあれば憂い無しって言うことだろうか。
この世界にこの言葉があるかどうかは知らないけれどもね。
「弟のジーニアスばかり妹達の株が上がって居るからね?」
と、ウインクを寄越されて苦笑してしまう。
意外とディラン兄さん気にしているのねとも思ってしまったが。
「ディランおにーちゃん、似合わないコトしている~」
「オルブロンに言われちゃうか。うーん、私の柄に似合わなかったかな?」
「ウインクは似合わないよ?でもね、大事にされているってわかった。お兄ちゃんありがとー!」
「そうか。だが困ったなぁ。ウインクが似合わないとは」
「あはは、だってお兄ちゃん可愛いーもん。ウインクより笑顔のがいいよ~」
「…童顔の弊害が。これでも22歳なのだけどねぇ…」
最近気がついたのだけど、どうやらディラン兄さんは童顔らしい。
…どれだけ私ってば兄さんの顔っていうか、兄さんの同年代の男性を知らなかったせいもあるのだけど、童顔って気が付か無かったのよ。
別れた当初からほぼ、ディラン兄さん顔変わってなかったから不自然に思えなかったし。
ごめんね、ディラン兄さん。
そして気が付かせてくれたヴェロニカさん有難う。
「ディラン様は22歳と言う割には随分と若々しいのですね」
だって。
それに対してパーシャさんの「童顔ですね~可愛らしいお顔だなんて実に羨ましい!は!と言うことは、年齢を…げへへ」という言葉に兄が童顔であると気が付いた。
どうでも良いけどパーシャさんや、その後ヨダレ垂らしていたってコトは、何か良からぬことを妄想でもしていたのかな?この子、最近拍車掛かって変態じみて来たけどほんと、色々と大丈夫なのだろうか。
また兄様達を使って妄想して居なければ良いけど…うん。多分それは無理だろうなぁ。何せパーシャさんは三人居るうちの一人、一応令嬢である私付きのメイド。
屋敷の台所に私が居るということは、お仕事の都合上…
うーんなんだろうね。
台所の調味料が入っている棚の前で、「うは、ヤバイ、萌が萌え萌しとるがな…」等という謎の言葉を話して床に伏し、プルプルと震えている。ちょっとだけ鼻血が出ている気がするが、それは見なかったことにしよう。
うんうん、何時もはもっと盛大に血の池を作っているしね。
と言うかね、一体今の事柄、何処が鼻血を出す要因になったのかさっぱりわからないことだし。やはりこのパーシャさんは良く分からないなぁ。
一体何を考えて第二王子であるレスカ様は彼女をメイドとして寄越したのだろう。
ただ彼女が身近に居ると、レスカ様が居る場合明らかに態度が違うから根本的な…何かがあるのかも知れない。…無いかも知れない。
それにナンダカンダ言って、彼女は緊張感を解す緩和剤や何かしらの緩和剤代わりになってもいる。
私達姉妹って庶民上がりみたいなものだしねー…
兄達もそうだが、表立って貴族のジーニアスとその支えとして立っているディランはまだいい。問題は私達姉妹だ。一応アレイで男爵家の姉妹として貴族席には居たが、ドがついてしまう程に田舎出身、おまけに父親のせいで碌な教育をされて来なかったせいで貴族令嬢としての有り方がさっぱり分からない。そのお蔭で口さのない貴族達には散々な言われようだとか。
そこでパーシャの登場、というわけなのである。
何がどうしてだって?
だってあんな良く分からない個性が強い人物が突っ走って、更には猪突猛進してみ?大抵の令嬢は引くから。大抵の子息は尻込みするから。それにも関わらず、どんどん捲し立てられてみ?最終的には何故か、解されて懐柔されているから。
そう、何故かパーシャは人を惹きつけるのである。いい意味でも悪い意味でも。
…ドン引く意味でも。
だからこそレスカ様は最後まで手元に残して置きたかったらしいのだけど、情勢が変わったことと自身の心境の変化、更には婚約者との仲を取り持ったお礼として私に寄越した…らしい。私にはどうみても変人にしか見えないけどね。
憎めないけども。
ついでに言うと、気がついたら愛着が湧いちゃったからなぁ。
取り敢えず、何故か白目をむき出したので怖いので(オルブロンは面白がって居る)、目線で許可を得て来たユイさんがそのまま引き摺って廊下にポイして居た。
それで良いのか。
同僚でないっけ?扱いが酷い気がするけど。
「そのうち復活して戻って来ますので」
「そうか~今度は何を妄想したのかな?」
オルブロンや、そんなワクワクした顔しなくて良いから。
ほっといても後で喋りだすだろうし、聞きたくない内容のが多いのだから。
「多分碌でも無いだろ…」
「下衆いこと以外無いだろうしなぁ」
ディラン兄様、それ正解。
そしてニキ様、事実だろうけど。
もしかして以前妄想されたこと、根に持って居るのかな?
以前レスカ様とか、ケイン様とかの…うん、思い出すのはやめよう。ニキ様の台詞でないけど、内容がちょっと、ね?それにこれ以上黙って「まだ?」と目で訴えているオルブロンを待たせて居るのは可愛そうだ。さっさとパウンドケーキ、バターケーキを作ってしまおう。
「それじゃ、最初は室温に戻したバターと砂糖を…」
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