ある日突然Ωになってしまったけど、僕の人生はハッピーエンドになれるでしょうか

柚ノ木 碧/柚木 彗

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「ほうほう、だーから優樹っち身の危険を感じてスマホで連絡して来たのか~。」


 隣にいた恭介さんが「ぐっ!」と何とも言えないくぐもった声?喉から出た音?を出し、ショックを受けた顔付きになる。


「ショックを受けた顔付きになっても駄目だからな。ほら、飲んでおけ。」


 こう言って問答無用でα用の抑制剤を問答無用で恭介さんに差し出す落合先輩。「今飲まないとこのまま喉に突っ込むぞ。」と言う怖い言葉を添えて。
 落合先輩中々の強者である。

 京夏さんに「助けて」とSOSを出したのだけど、結果的には落合先輩が色々と世話をしてくれている状態。因みに大人の筈の高峰さんは我関せずに徹しているらしく、運転席に在籍中。
 曰く、「思春期のナントやらだから、大人は口出しをしないで置いておく。」だそうで。

 ソレを聞いた京夏さんが何故かぷくっと頬を膨らませて、


「大人ってずるい」


 と文句を言っていた。
 こういう所、京夏さんって可愛らしいと思う。
 横にいる落合先輩なんて「頬…」と呟いて、速攻でメロメロだ。

 おかしいなぁ。
 この双子兄妹、お兄さんの京夏さんの方がΩっぽい性格していない?Ωの筈の杏花音さんの方がαらしい男前な性格しているよ。それでなくても普段から男装の麗人みたいな感じなのに。

 出会った当初は京夏さん、己を律していたらしくってかなり無理をしていた印象だったけど、最近は「我慢を止めた」と言って、自由奔放な性格を開放しちゃったらしくて生き生きとしている。
 そうして杏花音さんも。
 元々ただ立っているだけでも背景に薔薇が舞っている雰囲気を醸し出すなんて特技を持っている人だったのに、最近は特に凛々しさに拍車が掛かっている。
 クラスのどんな男子よりも凛々しい。
 勿論恭介さんを覗いて。
 ある意味恭介さんとは別のカテゴリーを持った貴人だよね、杏花音さんって。


「いやだって、雇い主の息子に角を立てたくは無いし。そうかと言って、皇君を信頼していないと言うわけでは無い。」

「高峰さんが信頼している恭介さんが、あの手この手で積極的に僕を押し倒そうとして来ますが。」


 やれやれと言う仕草をしたので思わず言うと、


「ちょ~と皇く~ん。『私』が言いたいことワカルよね?…顔貸せや。」


 と言って、青筋を立てておっかない顔に変化した高峰さん。その顔付きを見た恭介さんは引き攣った顔付きになって、無言で縦にコクコクと頷いていた。
 あ、高峰さんが普段の『俺』から『私』になっている。そうして先程からゼロ距離だった恭介さんとの距離が僅かだけど空いた。

 数分後。
 コンビニの大型駐車場に止めた後、恭介さんを運転席側に引きずって行った。

 …何を話しているコトやら。


「浮かれている皇には少し説教が必要だよな。」

「だね~思いっきり浮かれているっぽいし、ちょっと叱られて正気に戻って貰わないと。今後、優樹っちが困っちゃうもんね。」


 呆れたように喋る落合先輩に京夏さん。
 え、待って待って。


「浮かれていた?」


 あの恭介さんが!?


「滅茶苦茶浮かれていたじゃーん。」

「気が付かなかったのか?」

「え、だって。やたらキスされて、恥ずかしくてそれどころでは………。」

「皇っちが浮かれ過ぎてやらかし過ぎて、優樹っちが気が付かない程だったと言う感じか~。」

「何事も程々にしないと、だな。」

「だね~。」


 ひたすら抱き抱えられたりキスされたりしてパニックになっちゃって、恭介さんが浮かれていたとは気が付かなかった。確かにスキンシップが激しいなとは思ったけど、それは僕が告白したからかも?と思っていたからで。


「と言うか、優樹っちが可愛い件。」

「はい?」

「杏花音や楓ちゃん達女の子ちゃんが何時も優樹っちが可愛い、カワイイと言うの、わかるよ~。」

「…僕確かにΩだけど、その前に男だよ。」

「ソレ言ったら俺、男でαだけど?」


 ソレはそうですが、先程も思ったけれど京夏さんの方のが、可愛いと思うのだけど。
 αなんて学園に入るまで見たことは無かったと思うけれど、その中でも京夏さんは飛び切り可愛い性格をしているのでは無いだろうか。そうでなければ落合先輩が溺愛し、執着して来ないと思う。


「京夏さん」

「ん~」

「何故僕の頭を撫でているの。」

「可愛いから。」

「子供扱いしていない?僕同い年だけど。」

「確かに同い年だ~ね~。」

「京夏さん。」

「ん~。」

「女の子じゃないのですけど。」

「確かにそーだね~。」

「いい加減頭を撫でるのを止めて下さい。」

「ありゃ、撫でるのやーっぱ、皇っちの許可ないと駄目?」

「違います。」


 其処で今迄黙っていた落合先輩がクスクスと笑い、


「京夏、そこまで。」


 と僕から引き離してくれる。


「皇っちが居なくなったから、やーっと愛でられると思ったのに~。」

「それで?私の嫉妬を煽って居るということかな?」





「………うん。」


 京夏が可愛いとぷるぷると震え、悶え出す落合先輩。
 そんな落合先輩の姿を見て、先輩が可愛いとぽーっと頬を染めて見詰めている京夏さん。




 前も似たような光景を見た気がするけど、αってこういうモノなのだろうか………。
 この二人が特別ってことだよね?ね、ね??

 ちょっと失礼して、キャンピングカーの備え付けのトイレに入って砂糖と砂のミックスを吐いて来てイイだろうか。
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