ある日突然Ωになってしまったけど、僕の人生はハッピーエンドになれるでしょうか

柚ノ木 碧/柚木 彗

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「あれ?プロテクター、ほぼお揃い?」


 ワ~オなんて、ちょっと大袈裟な台詞っぽく言った赤銅さん。
 そんな僕は只今駅前商店街の一角にある店舗に「寄って良い?」と聞かれ、頷くと何故か何十枚も僕の身体に服をあて、試着してみてと何着もセットで服を渡される。
 流石に何回目?かのやり取りにウンザリしていたら、背後から見知った声が聞こえて来た。


「赤銅さん?」

「やあやあって、疲れ切った顔している?」


 どうした?と聞かれて思わず乾いた笑いをしてしまう。


「あ~…アレか、αならではの番追い込み、いいや囲い込み?と言うのかな。それが始まっているのかと思って。」

「え。」


 ナニソレ、怖いのですけど。
 因みに僕を囲い込み?に掛かっている恭介さんは、ちょっと離れた場所で他の服を物色中。
 そうして店内という事で、伊達メガネとマスクをして変装中。
 一見誰だか判断つきにくいけど、よ~く見れば恭介さんとわかる気がしないでもない、微妙な変装。
 それで良いのかな?と思ったけれど、完全に誰?状態だと怪しまれるそうで、コレで良いらしい。

 そんな変装中の状態で、僕の全身コーデを完成させたいらしい。
 頭の先から足の先まで着飾るには、とか何とか恐ろしいことを先程呟いて居た。

 …何だろう、一時期阿須那父さんに構い倒して全身コーデを決めていた陽平父さんを思い出す。
 何となくだけど、陽平父さんってこうして考えてみると、αの様な性格をしているよね?阿須那父さんに対し、地道に囲い込みに来ていた気がしないでもないし。

 ま、まぁ、阿須那父さんって繊細そうな見た目を裏切ってズボラな性格しているし、大雑把だし、離婚した当初は掃除も洗濯も出来なかった。僕もやり方知らなかったから似たようなモノだけど。
 親子だし、そういう所ソックリ。
 今は陽平父さんに習って掃除洗濯はほぼ出来るようになったし、料理も徐々に修行中。
 カレーとか簡単なのは出来るようになって来たし、今度もうちょっと難しいおかずとか教えて貰おう。そして、その……恭介さんに僕の手料理を食べて貰って、美味しいって言って貰えるようになりたい、なぁ。

 チラリと恭介さんの方に視線を向けると、真剣な眼差しで服のコーディネートをしている。
 どうせなら僕の服ばかりではなく、少しは自分の服を見れば良いのに。
 仕事で良く服は見ているだろうけど。

 そう言えば芸能人とかお笑い芸人とか、TVで活躍している人ってよく「この服汚しちゃったら買取しなくちゃならないのよ~!」なんて言っているのを見たことがあるのだけど、恭介さんもうっかり汚しちゃって買取した服とかがあるのかな。
 今度聞いてみよう。

 落合先輩はウキウキと京夏さんにこれはどうだ?と服を見繕っており、京夏さんは僕と同じ様な状態を見事に回避して、「ひろはコッチの方が似合う」とやり返している。
 流石京夏さん、バイタリティー強い。
 そうしてラブラブっぷりが凄い。
 女性店員や女性のお客さん達が、イケメンαである二人組に先程から何度もチラチラと様子を伺っている。時折黄色い声が聞こえて来るから何だろう?と思って見れば、人目もはばからず滅茶苦茶イチャついていた。
 額にキスとか、抱きついたりとか、抱きついたり、とか。
 諸々凄かったので二度言いました。


「うーんほら、αって言うか男って自分の好きな相手にプレゼントしたがるでしょ?で、服とかは送った相手を脱がしたいって言うのもあるけど、何より『自分色に染めたい』って言うのがあるから。」

「エエエ」

「あははは、その様子だと気が付いて無かったみたいだね?」


 確かに気が付いて居ませんでした。
 僕性別は男なのに、こういう所が鈍いよね。
 同時にショックでもあるのだけど。

 ナニ、自分色って。
 ナニ、服を脱がしたいって。

 付き合ってまだ0日、男って下半身直行だよね!?って、僕も男だった!!
 分かるような、分からないような、複雑な気分ですよ。


「ま、何事も程々にさせないと。αって自分が体力があるから、最初のうちは相手の体力がわからないらしくって、上手いこと手綱を握らないと疲れてしまって参っちゃうよ?」


 クスクス笑いながら話す赤銅さん。
 何だかちょっと幸せそう?
 ちょっと前までツンツンした気配をしている時ばかりに会っていたから、今穏やかに話しているのが何だか不思議。
 そうして時折自身のお腹をとても大事そうに見詰めたり、軽く撫でたりしている。

 …幸せそうで何よりです。

 そうして今更だけど赤銅さんのしているプロテクター、僕のより鍵の桁が何桁か多いから恐らくより高価。似ているけどちょっとだけ違う別の物。
 プロテクターを売っているΩの店員さんが「君は余り動き回らないみたいだね?それなら此方の方がお勧めかな。」と言って僕のは赤銅さんよりも少し鍵の桁が少ないものを渡された。


「う~ん、君のプロテクターは留め具の辺りが隠されているけど、皮膚に触れる所が金かな?ちょっと可愛いね。」

「え」

「今度鏡を使って見てみるといいよ。女の子だとピンクゴールドの人も居るけど、ピンクゴールドは銅が入っているから金属アレルギーの人には向かないからなぁ。」


 その点君のプロテクターは純金かな。
 と言われ、混乱。

 え。
 ピンクゴールド?
 ピンクゴールドってホワイトゴールドやイエローゴールドよりもピンク色の物で、金や銅を混ぜて作った合金のことだよね?
 金に銅を多く入れると赤っぽくなるって言う。

 僕が何故知っているのかと言うと、陽平父さんが阿須那父さんに結婚指輪を買う際に一緒に家族全員で買いに行ったから。その際店員さんが色々と教えてくれたんだ。ホワイトゴールドは銀が金に混ざっており、ピンクゴールドは銅が金に混ざっている。そうしてイエローゴールドは銀・銅・金を混合させた純金に類似し、少し温かみのある金のことだと。

 うん?銅は兎も角…。
 金?

 純金!!!
 滅茶苦茶お高い品じゃないか~!!


「皇さん!!」

「ん?」


 純金なんて、どれぐらい金額掛かったの!?と、思わず恭介さんの所に慌てて走って行ってみると、恭介さんの手には……


「ナニ持って居るの。」

「え?」


 驚いている恭介さんの手に握られているのは、フリルやらレースやらが豪華な、どうみても女物に見えそう…な、ぱんつ(下着)。一応パッケージに男性物と記載されているが、どうみても女性物にしか見えない。
 そんなスケスケパーッケージにちょこんとリボンがシールで貼り付けている、何処からどう見てもエッチな品。

 それを寄越している相手は、勿論……京夏さん。


「いや~優樹っちと皇っちのお付き合い初日記念日のお祝いに、ね?」


 コレぐらい履いて誘ってみるっていうのも手だよ?
 なんて言われてしまって。
 僕、まだ無理です~!!
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