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3章 今日も学園はゴタゴタしていますが、何故か苗字が変わってしまってコッソリ鑑賞出来にくくなる様です。

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 色々ありグッタリしていたら、更にグッタリする出来事が起こった。


「すいません!」


 使用人メイドさん全員が頭を下げて謝って来る。


「あはは、まぁしょうがないよね」


 そう。確かに仕方が無い。

 まさかお風呂にお湯が貯まらない等、一体誰が想像出来るだろう。長い間放置されていた結果、お風呂のお湯を貯める丁度真ん中の壁の部分に目に見えない亀裂が入って居たらしく、お湯が洩れて一向に貯まら無いと言う事態が発生。

 掃除して居た時は微かに溜まっていたので平気だと思って居て、先程お湯を入れてみたら修理案件となった。


「今急いで修理を呼んでおります。すいませんが…」


 ん、という事は?


「どうしてもお風呂に入りたいと言うと、私共使用人のお風呂しか…」


 はいはいはいはーい!入ります寧ろ入らせて下さーい!


「仕方ありませんね」


 パーシャさんに苦笑されたけど、お風呂はあるなら入りたいよね!

 そしてパーシャさん、鼻は大丈夫ですか?


「それは言わないで下さい…」


 困った顔をされたけど、今朝の事は忘れて居ませんよ?










 * * *









「本日は濃厚な一日だった」


 夕食が終わってお風呂に入って。

 部屋に戻って一息を付く。


 つい先程フォーカス様が居るからと、ジーニアス兄さんを連れて来て学園で働く許可を得た。「急に辞めるわけにはいかない」とせめて年内はと、学園の食堂で勤める事の許可を得た。

 ただし勤務は週三日のみ。

 他の日は来年学園へ入学するのだから、勉学に励む事と約束させられてしまった。


 そう、来年学園へ入学する事は男爵家の娘となったのだからと、力強く念押しされて決定事項になってしまった。


「でもな~アルバイトみたいに継続する事は出来ないかなぁ」


 お気に入りなんだよね、厨房で働くの。

 勤めて居る皆が良い人だって言うのもあるけど、当初の目的である乙女ゲームの舞台の裏方でこっそりと覗くって言う事が出来なくなるのは望ましくは無い。

 折角王都に来て就職口を得たのに、こんなに早く辞めるのは嫌だなぁ。


 ただフォーカス様から、


「学園に入学する迄はまだいいが、入学してからも特別な理由が無く勤めて居るのは問題が起こるかも知れないぞ?」


 等と言われてしまった。

 ならば何かしら特別な理由を作れば良いのかも知れない。

 連休の時とか、春休みとか夏休みとか。

 でもそうなって来ると人手が足りないって事が無いから、かえって邪魔かも知れないな~。

 うーん何とか為らないかな?

 このまま慣れないお嬢様然としているのは、無駄にストレスを抱えて窒息しそうだし。


 その件は今後要相談とフォーカス様に言われた。

 うん、そうだよね。

 そして今回相談した内容は、フォーカス様がこのまま学園の校長先生や理事長に相談してくれるらしい。


「そうなると今迄の様な固定給の料金よりも安くなるが構わないのか?」


 今迄毎月ほぼ決まった料金(前世だと固定給って奴かな。残業代などは別に出る)だったのだけど、それより少ないとなると恐らく前世のパートさん達の料金位だろうか。勿論地方のパートさんの料金だけどね。


「はい、正直身体を動かして働くのが一番気楽ですので」


「はは、私と似たようなモノだな」


 うん?とフォーカス様を見ると、


「国王の弟が父で、元王族な親が公爵と言う肩書は私には肩が凝るのでな」


 だから天職である用務員になったと笑うフォーカス様。

 そしてその横で薄っすらと頬を染めて見詰めるオルブロン。

 …それは良いのだけどね、オルブロン。

 何故時折此方を見て牽制して来るかな?狙ったら駄目って感じで此方を見ないように。そんな気は全くありませんので。


 そんな事があって、更に…


「うーん…」


 私の手には二枚の手紙。

 一枚はユリア様からの物で、もう一枚はレスカ様からだ。

 ユリア様からは今回の爵位授与やタウンハウスに引っ越しの件で「お疲れ様」と言う労いの言葉が書かれており、近く折りを見て訪問致しますと言うお手紙だった。


 そしてレスカ様は「ユリアが来る前に家具等出来るだけ設えて置け」と言う脅迫状…違った、手紙だった。

 気のせいか物凄く筆圧が掛かった気がするんですが、ねぇレスカ様。これはもう脅迫状で良いよね?と言うか元貧乏男爵家三女にセンス等求めるなよ。他のお屋敷等見た事無いのだから、全く分からないのだけど。


 この辺りの事はメイドさん達に相談しながらにした方が良いだろうなぁ。ちなみにジーニアス兄さんに任せると、「壊滅的になるぞ」と言う宣言を頂いた。なんでも騎士団長様(つまりニキ様のお父様であるアルビオン様の事)のお宅に仕事で何度か訪問したのだが、

 玄関先にズラッと並んだ鎧達に圧巻と言うか威圧を受け、更に団長の部屋へ向かう際にも並ぶ鎧達に何とも言えない気持ちになり、また更に団長の部屋に入ると背後に並ぶ鎧達。

 何度か訪れて最終的には「壊してやろうか?」と言う気分に陥ったそうだ。

 何故かと言うとその数多ある鎧の中に時折団長が入り込んでおり、身を隠して居る時があるのだとか。玄関だったり部屋だったり廊下だったりと気分に寄って変える為、非常に面倒でストレスが溜まったとの事。

 何をしているのですかアルビオン様。

 そしてそんなタウンハウスで住んで居るんだニキ様。


「何度か素知らぬフリして蹴りを入れてやったがな」


 兄さん上司にそれってどうなの…

 ニキ様の王都のタウンハウスってそんな感じなのか、出来る事なら訪問はしたくないなぁ。


 そしてそう言う貴族の家しか見た事が無い(それって…)ので、センス等破壊的であろうと宣言する兄ってどうなのだろう。尚ディラン兄さんに問うた所、「どが付いちゃう田舎の一般家庭程度ならわかるけど、洗練された都会の家具に囲まれると緊張してしまうから無理」と言う言葉を貰った。

 それって単に実家の再現なのでは?と言うか、家具などほぼ無い状態だったので、今と然程変わらないのでは?と言ってみたら、無言で頷いたので恐らくディラン兄さんも無理だろうなぁ。


 最終的にはレスカ様に確認を取るとして、無難なのがシドニー姉さんかもなぁ。ただ妊娠中で貴族街まで遠いし、ストレス掛かりそうで来たくないと拒絶されているし、旦那さんに頼るのは…いや、それで行こうかなぁ。

 レスカ様だと無駄に高いのを設えられてしまいそうだし、その度に卒倒しそうになるのもアレだし。

 とか悩んで居たら、


「お嬢様の部屋だけなら屋根裏部屋から幾つか良いのが見付かりました。急設えですがそれでどうでしょう?」


 メイドさん達が提案してくる案に頷く事にした。

 だってお金掛からないしね!

 タダです無料です。

 タダより怖いモノは無いっていう事からも不安なので後程幾つか見せて貰う約束をし、本日は就寝する事にした。

 ちなみに、


「お嬢様の大量の薔薇をお部屋に飾らして頂きました。余にも素敵でしたので、幾つかドライフラワーや押し花、それに魔法で水分を飛ばして瑞々しい状態に保つ様に施して置きました(前世で言うブリザードフラワーみたいな物)。これで数年は枯れません。このお花はお嬢様のベットの横に飾らせて頂きました。お嬢様を思う方からの頂きモノでしょうか、素敵ですね」


 とニッコリと微笑まれて多少目が泳いでしまったのは仕方が無い事だと思う。

 ニキ様、ほんっとやり過ぎです…。










 * * *











 翌朝。

 視界の片隅に見える無駄にゴージャースな花々。

 あはは、あ~~…なんだろ、物凄く意識してしまう。

 病室に在った時はそう感じなかったのだけど、この屋敷の部屋にメイドさん達が一番綺麗に見える様に手を入れてくれて。お陰でこの部屋に居る限り、何処を見ても視界に映るんだよね。


 …もしかしてニキ様その事頼んで居ないよね?


 本日も本日でメイドさん達に手伝って貰いながら、と言うか一般市民のちょっと良い服な程度で手伝って貰う事等無い筈なのだけど。だからなのか、髪の毛を編んで良いですか?とヴェロニカさんに言われて許可を出したら、


「ふふふふふふふ…貴族のお嬢様と言う感じの、男受けの良い髪型にしましょう」


 と、妙な笑い声をパーシャさんが話し、普段と違う髪型が出来上がってしまう。

 鏡をみせて貰ったら、綺麗にまとめて結い編上げられた髪型。

 その髪型には花柄のバレッタで飾られており…いや、そのこのバレッタは?見た事無いぞ?


「お嬢様、そのバレッタは今朝モイスト家から届きました。お嬢様へのプレゼントだそうですよ」


 う、やっぱり。だってこの花って薔薇だよ、薔薇。

 どう考えてもニキ様でしょ~!


「そして此方を」


 そう言ってユイ様が私の目の前に箱を差し出して来ます。


「ジアス家(ケイン様)からの今回のお祝いだそうですよ。カードも預かっております」


 出された箱とカード。そのカードを見ると…





 レナちゃんへ。


 うーんレッティーナちゃんって呼んだ方が良いかな?

 あはは、ま~レナちゃんって今まで通りに呼ぶけど良いよね?

 不味かったら言って欲しいな。

 それとこの間からニキが猛アタックを仕掛けて居るね。僕、親友のニキに今迄は遠慮して居たけどもうそれは止めるよ。だから今度から正式に、いや今から正式に君に交際を申し込むよ。


「はい?今から?」


 キョトンとしていると…


「はい。後程正式に訪問なさるそうです」


 ―はい?
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